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【期待値マスター講座04】確率分布の作り方をマスターする

    ゴウカライズ編集部
    29 May, 2026

    この記事では、確率変数の振る舞いをすべて記述する「確率分布」を、手を動かして書く練習をします。

    題材はカードの非復元抽出と、復元・非復元の比較です。

    期待値の計算は主に次回から扱いますが、まずは本記事で確率分布の理解を深めましょう!

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb

    確率分布とは

    確率変数 $${X}$$ が「どの値を、どのくらいの確率でとるか」を全部まとめたものを、 $${X}$$ の 確率分布 と呼びます。

    確率変数が有限個の値 $${x_1, x_2, \ldots, x_n}$$ をとるとき、確率分布は

    $$
    P(X=x_1)=p_1,\quad P(X=x_2)=p_2,\quad \ldots,\quad P(X=x_n)=p_n
    $$

    で、 $${p_1+p_2+\cdots+p_n = 1}$$ を満たすものです。

    イメージとしては、 $${X}$$ がとる値ごとに「どれだけの重み(確率)が乗っているか」を全部書いた表です。 値だけ書くのではなく、重みもセットで書く のがポイントになります。

    例題:非復元抽出での和の分布

    1から5までの番号が書かれたカードが各1枚ずつ、合計5枚入った袋から、無作為に2枚を同時に取り出す。取り出した2枚の番号の和を $${X}$$ とするとき、 $${X}$$ の確率分布を求めよ。

    2枚の選び方は $${\binom{5}{2}=10}$$ 通り。それぞれ確率 $${\frac{1}{10}}$$ で起こります。

    組合せごとの和を書き出します。

    • $${\{1,2\}\to 3}$$
    • $${\{1,3\}\to 4}$$
    • $${\{1,4\}\to 5}$$
    • $${\{1,5\}\to 6}$$
    • $${\{2,3\}\to 5}$$
    • $${\{2,4\}\to 6}$$
    • $${\{2,5\}\to 7}$$
    • $${\{3,4\}\to 7}$$
    • $${\{3,5\}\to 8}$$
    • $${\{4,5\}\to 9}$$

    これを和の値ごとにまとめると、 $${X}$$ の確率分布は

    • $${P(X=3)=\frac{1}{10}}$$
    • $${P(X=4)=\frac{1}{10}}$$
    • $${P(X=5)=\frac{2}{10}}$$
    • $${P(X=6)=\frac{2}{10}}$$
    • $${P(X=7)=\frac{2}{10}}$$
    • $${P(X=8)=\frac{1}{10}}$$
    • $${P(X=9)=\frac{1}{10}}$$

    総和は $${\frac{10}{10}=1}$$。確率分布として整っています。

    確率分布は「重複の数えあげ」が肝心

    上の例題で出てきた「組合せが10通り、それぞれの和を見て、同じ和の通り数を足す」という流れが、確率分布を作るときの定石です。組合せ全体が等確率なら、 値 $${k}$$ をとる場合の数を全体で割る だけで $${P(X=k)}$$ が出ます。

    ここで失点しやすいのは、 重複の取り扱い です。

    • 「同時に取り出す」なら、 $${\{1,2\}}$$ と $${\{2,1\}}$$ は同じ1通り。
    • 「順に取り出す」「区別できる試行」なら $${(1,2)}$$ と $${(2,1)}$$ は別の2通り。

    どちらの数え方をするにせよ、 分母と分子で同じ数え方 を使えば確率は同じになります。よくあるのは、分母を組合せで数え、分子を順列で数えてしまう取り違えです。

    復元と非復元で分布は変わる

    同じ袋から2枚引くにも、「戻して引く(復元抽出)」か「戻さずに引く(非復元抽出)」かで分布は変わります。

    復元抽出だと $${(1,1)}$$ のような「同じカードを2回」も起こります。和の分布も少しずつ広がります。たとえば、 $${\{1,2,3\}}$$ の3枚から復元で2回引いて和をとる場合、 $${X}$$ の分布は

    • $${P(X=2)=\frac{1}{9}}$$ ( $${(1,1)}$$ )
    • $${P(X=3)=\frac{2}{9}}$$ ( $${(1,2),(2,1)}$$ )
    • $${P(X=4)=\frac{3}{9}}$$ ( $${(1,3),(2,2),(3,1)}$$ )
    • $${P(X=5)=\frac{2}{9}}$$
    • $${P(X=6)=\frac{1}{9}}$$

    非復元では同じ枚を引かないので $${(1,1),(2,2),(3,3)}$$ は除外され、分母は6通りに変わります。 「戻すか戻さないか」で確率分布の形は変わる ことを必ず意識してください。

    なお、シリーズ第III部で扱いますが、 「和の期待値」だけ見ると、復元でも非復元でも同じ式になります 。これは期待値の線形性が独立性に依存しないという、本シリーズの中核的なメッセージにつながります。今は「分布の形は違うが期待値が同じ」という現象がありうるのだ、と頭の隅に置いておくくらいでよいです。

    確率分布から得られるもの

    確率分布が手元にあれば、次のものは表をなぞるだけで計算できます。

    • 期待値 $${E(X)=\sum_k x_k P(X=x_k)}$$
    • 分散 $${V(X)=E((X-E(X))^2)}$$
    • 「 $${X\ge k}$$ となる確率」 $${P(X\ge k)=\sum_{x_k\ge k}P(X=x_k)}$$
    • 中央値、最頻値

    「期待値だけ欲しいときに、確率分布をすべて書き下す必要はない」というのが、シリーズ後半の主題です。が、それは「そもそも分布を作る計算が大変だから、分布を作らずに済ませる」という発想であって、分布が書ける問題で書けないと困ります。

    練習問題

    1から3までの番号がついたカード各1枚を袋に入れ、1枚引いて戻すという操作を2回行う。取り出した2枚の番号の積を $${X}$$ とするとき、 $${X}$$ の確率分布を求めよ。

    復元抽出なので結果は $${(i,j),\ i,j\in\{1,2,3\}}$$ の9通り、それぞれ確率 $${\frac{1}{9}}$$。積を書き出すと

    • $${(1,1)\to 1}$$
    • $${(1,2),(2,1)\to 2}$$
    • $${(1,3),(3,1)\to 3}$$
    • $${(2,2)\to 4}$$
    • $${(2,3),(3,2)\to 6}$$
    • $${(3,3)\to 9}$$

    したがって

    • $${P(X=1)=\frac{1}{9}}$$
    • $${P(X=2)=\frac{2}{9}}$$
    • $${P(X=3)=\frac{2}{9}}$$
    • $${P(X=4)=\frac{1}{9}}$$
    • $${P(X=6)=\frac{2}{9}}$$
    • $${P(X=9)=\frac{1}{9}}$$

    総和は $${\frac{9}{9}=1}$$。 $${X=5,7,8}$$ が空欄になっている(その値はとらない)点に注意してください。

    次に読む記事

    次回は、「2つの確率変数(または2つの事象)が独立であるとはどういうことか」を、定義から押さえます。期待値の線形性に独立性は必要ないのですが、それと表裏一体で「いつ独立が効くか」を分けて理解しておくと、入試の問題文を読むときの精度が上がります。

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