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【期待値マスター講座05】 あなたは事象と確率変数の「独立」をわかっていますか?
この記事では、確率の話で頻出する「独立」という言葉を、事象の独立と確率変数の独立の2レベルで正確に押さえます。コイン2回と非復元抽出を題材に、独立かどうかの判定を実際にやってみます。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
「独立」は感覚で使われやすい
「独立」という言葉は、確率の問題文や解答の中で気軽に使われます。「2回の試行は独立だから」「独立な確率変数の和の分散は」のように。ところが、いざ「独立とは何か」と問われると、定義をすぐに言える受験生は意外と少ないです。
直観的なイメージは、 「片方が起きたという情報が、もう片方の起こりやすさに影響を与えない」 こと。これを式で書けるようにしておきます。
事象の独立
事象 $${A,B}$$ について
$$
P(A\cap B) = P(A)\cdot P(B)
$$
が成り立つとき、 $${A}$$ と $${B}$$ は 独立 であると言います。
「同時に起きる確率が、それぞれの確率の積になる」ことが独立の条件です。直観の言い換えだと「 $${A}$$ が起きたという情報を聞いても、 $${B}$$ の確率は変わらない」 $${P(B\mid A)=P(B)}$$ になりますが、定義は積の形で書くほうが対称的で扱いやすいです。
例題1:コイン2回は独立か
公正なコインを2回投げる試行で、「1回目が表」を $${A}$$、「2回目が表」を $${B}$$ とする。 $${A}$$ と $${B}$$ は独立か。
$${P(A)=\frac{1}{2}}$$、$${P(B)=\frac{1}{2}}$$。 $${A\cap B}$$ は「1回目も2回目も表」で確率 $${\frac{1}{4}}$$。
$$
P(A\cap B) = \frac{1}{4} = \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{2} = P(A)\cdot P(B).
$$
したがって独立。
「コインの2回が独立」は当たり前のように思えますが、いま定義に当てはめて確かめました。問題文に「公正なコインを独立に2回投げる」と書かれているとき、私たちは無意識にこの $${P(A\cap B)=P(A)P(B)}$$ を使っていることになります。
例題2:非復元抽出は独立でない
1から6までのカード6枚から1枚を引き、戻さずにもう1枚を引く。1枚目が1である事象を $${A}$$、2枚目が1である事象を $${B}$$ とする。 $${A}$$ と $${B}$$ は独立か。
$${P(A)=\frac{1}{6}}$$。 $${P(B)}$$ も対称性から $${\frac{1}{6}}$$(後の記事「くじ引きの公平性」で詳しく示します)。
ところが $${A\cap B}$$ は「1枚目も2枚目も1のカード」ですが、戻さないので2回続けて同じカードを引くことはできず、 $${P(A\cap B)=0}$$。
$$
P(A\cap B) = 0 \ne \frac{1}{36} = P(A)\cdot P(B).
$$
したがって独立でない。 非復元抽出では、各回の結果は影響し合う ということが、この計算で確かめられます。
確率変数の独立
確率変数 $${X,Y}$$ が、 すべての値 $${x,y}$$ に対して
$$
P(X=x,\ Y=y) = P(X=x)\cdot P(Y=y)
$$
を満たすとき、 $${X}$$ と $${Y}$$ は 独立 であると言います。
事象の独立を「 $${X=x}$$」「 $${Y=y}$$」のすべてのペアに拡張したものです。 1組でもこの等式が破れたら、 $${X}$$ と $${Y}$$ は独立ではありません 。
3個以上の確率変数 $${X_1,\ldots,X_n}$$ が独立であるとは、どの $${x_1,\ldots,x_n}$$ についても
$$
P(X_1=x_1,\ldots,X_n=x_n) = \prod_{i=1}^n P(X_i=x_i)
$$
が成り立つことです。これは「全部そろっての独立」と呼ばれ、 2つずつ独立であるだけでは導けません 。これは次回の記事のテーマです。
例題3:さいころ2回で和と差を見ると
さいころを2回独立に振り、1回目を $${X}$$、2回目を $${Y}$$ とする。 $${X}$$ と $${Y}$$ は独立か。 $${X+Y}$$ と $${X-Y}$$ はどうか。
$${X,Y}$$ が独立なのは、問題設定からそのまま従います。 $${P(X=i,Y=j)=\frac{1}{36}=\frac{1}{6}\cdot\frac{1}{6}=P(X=i)P(Y=j)}$$ がすべての $${i,j}$$ で成立します。
一方、 $${S=X+Y}$$ と $${D=X-Y}$$ は独立ではありません。たとえば $${P(S=2)=\frac{1}{36}}$$( $${(1,1)}$$ のみ)、 $${P(D=0)=\frac{6}{36}=\frac{1}{6}}$$(ゾロ目6通り)ですが、
$$
P(S=2,\ D=0) = P((X,Y)=(1,1)) = \frac{1}{36}
$$
である一方
$$
P(S=2)\cdot P(D=0) = \frac{1}{36}\cdot \frac{1}{6} = \frac{1}{216}
$$
なので両者は一致しません。 $${S}$$ の値が決まると、 $${D}$$ がとれる値の幅が制限されてしまうからです。
このように、 「独立な確率変数から作った別の確率変数たちが独立とは限らない」 という点は、慣れないうちは引っかかりやすいので注意してください。
補足:独立の言い換え
事象の独立 $${P(A\cap B)=P(A)P(B)}$$ は、 $${P(A)>0}$$ のとき
$$
P(B\mid A) = \frac{P(A\cap B)}{P(A)} = P(B)
$$
と同値です。 $${A}$$ が起きたという情報を加えても $${B}$$ の確率は変わらない、という直観的なイメージはこちらの形のほうが伝わりやすいです。
ただ、 $${P(A)=0}$$ のときも独立は定義したいので、定義としては積の形 $${P(A\cap B)=P(A)P(B)}$$ を採用します。 $${P(A)=0}$$ なら自動的に $${P(A\cap B)=0}$$ となり、積の等式は成立します。
練習問題
ジョーカーを除いたトランプ52枚から1枚を引く試行で、「ハート」を $${A}$$、「絵札 (J,Q,K)」を $${B}$$ とする。 $${A}$$ と $${B}$$ は独立か。
$${P(A)=\frac{13}{52}=\frac{1}{4}}$$、$${P(B)=\frac{12}{52}=\frac{3}{13}}$$。 $${A\cap B}$$ は「ハートの絵札」で3通り、 $${P(A\cap B)=\frac{3}{52}}$$。
$$
P(A)\cdot P(B) = \frac{1}{4}\cdot \frac{3}{13} = \frac{3}{52} = P(A\cap B).
$$
積の等式が成立したので、 $${A}$$ と $${B}$$ は 独立 です。
直観的に言うと、ハート13枚の中の絵札比率と、全52枚の中の絵札比率が一致しているから、「ハートだと知ったあとでも絵札である確率は変わらない」 $${P(B\mid A)=P(B)}$$ ということです。
次に読む記事
次回は、「3つの確率変数が2つずつ独立であっても、3つ全体では独立とは限らない」という、間違えやすいポイントを扱います。「pairwise(2つずつ)」と「mutually(全部そろっての)」の独立は、 別の概念 です。
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