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【期待値マスター講座07】"独立"と"無相関"は別物だということを理解していますか?
この記事では、入試の確率・期待値で混同しやすい「独立」と「無相関」の違いを定義から押さえます。
「独立なら無相関」は正しいですが、その逆は一般には成り立たないことを、 ${Y=X^2}$ の反例で確認します。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
似ているけれど別の言葉
確率変数の話で「独立」とよく似た位置に登場するのが「無相関」という言葉です。両者は似ているようで、 強さがまったく違う 概念です。
- 独立:分布のレベルでの条件(同時分布が周辺分布の積に分解できる)
- 無相関: $${E(XY)=E(X)E(Y)}$$ という、 平均レベル での条件
「独立 $${\Rightarrow}$$ 無相関」は無条件で成り立ちますが、 「無相関 $${\Rightarrow}$$ 独立」は一般に成り立ちません 。これを反例で押さえます。
無相関の定義
確率変数 $${X,Y}$$ が
$$
E(XY) = E(X)\cdot E(Y)
$$
を満たすとき、 $${X,Y}$$ は 無相関 であると言います。
ここで $${E(XY)-E(X)E(Y)}$$ を $${X,Y}$$ の 共分散 $${\mathrm{Cov}(X,Y)}$$ と呼びます。共分散が0であることが、無相関の定義です。
「独立 $${\Rightarrow}$$ 無相関」の証明
定理:$${X,Y}$$ が独立ならば、 $${X,Y}$$ は無相関である。
証明します。 $${X,Y}$$ をそれぞれ値 $${x_1,\ldots,x_m}$$、$${y_1,\ldots,y_n}$$ をとる確率変数として、独立であれば $${P(X=x_i,Y=y_j)=P(X=x_i)P(Y=y_j)}$$ です。期待値の定義から
$$
\begin{aligned}
E(XY)
&= \sum_{i,j} x_i y_j , P(X=x_i, Y=y_j) \\
&= \sum_{i,j} x_i y_j , P(X=x_i) P(Y=y_j) \\
&= \Bigl(\sum_i x_i P(X=x_i)\Bigr)\Bigl(\sum_j y_j P(Y=y_j)\Bigr) \\
&= E(X)\cdot E(Y).
\end{aligned}
$$
したがって独立なら無相関です。 独立性の証明にあたっては、同時分布が積に分解できる ことを最後の和の分離で使っていることに注目してください。
例題:無相関でも独立とは限らない
$${X}$$ を $${\{-1, 0, 1\}}$$ をそれぞれ確率 $${\frac{1}{3}}$$ でとる確率変数とし、 $${Y=X^2}$$ とおく。 $${X,Y}$$ が無相関であるが独立ではないことを示せ。
まず $${Y=X^2}$$ の振る舞いを書きます。 $${X=-1}$$ なら $${Y=1}$$、$${X=0}$$ なら $${Y=0}$$、$${X=1}$$ なら $${Y=1}$$。 $${Y}$$ は $${X}$$ で完全に決まる関数なので、 $${X,Y}$$ が独立でないことは明らかです(極端な従属関係)。
たとえば $${P(X=0)=\frac{1}{3}}$$、$${P(Y=0)=\frac{1}{3}}$$ ですが
$$
P(X=0, Y=0) = P(X=0) = \frac{1}{3} \ne \frac{1}{3}\cdot \frac{1}{3} = P(X=0)P(Y=0)
$$
なので独立の定義式が破れています。
次に無相関であることを確認します。
$$
E(X) = (-1)\cdot \frac{1}{3} + 0\cdot \frac{1}{3} + 1\cdot \frac{1}{3} = 0.
$$
$${XY = X\cdot X^2 = X^3}$$ で、 $${X=-1,0,1}$$ に対する $${X^3}$$ も $${-1,0,1}$$ なので
$$
E(XY) = E(X^3) = (-1)\cdot \frac{1}{3} + 0\cdot \frac{1}{3} + 1\cdot \frac{1}{3} = 0.
$$
したがって
$$
E(XY) = 0 = 0\cdot E(Y) = E(X)\cdot E(Y).
$$
無相関の定義式を満たします。
つまり、 $${X,Y}$$ は 無相関でありながら独立ではない 。両者が一致しない反例として、入試レベルでも記憶しておきたい構図です。
なぜズレが生じるか
直観的な説明を入れておきます。
無相関は、 $${X}$$ と $${Y}$$ の「線形な関係」を測る量です。 $${\mathrm{Cov}(X,Y)=0}$$ は「直線的な傾向がない」ということしか言いません。
ところが独立は、 $${X}$$ と $${Y}$$ のあいだに どんな関係もない ことを要求します。線形な関係だけでなく、 $${Y=X^2}$$ のような曲線的な関係も排除しなければなりません。
$${Y=X^2}$$ の例では、 $${X}$$ が原点対称( $${X}$$ と $${-X}$$ が同分布)なので、 $${X}$$ の線形効果が打ち消されて共分散はゼロになります。ところが $${Y}$$ は $${X}$$ で完全に決まっているため、独立ではありません。 直線的な関係はなくても、曲線的な関係は残っている わけです。
補足:正規分布では同値
例外的に、 $${X,Y}$$ が 同時に正規分布に従う 場合は、無相関と独立が同値になります。これは正規分布が「平均と共分散ですべての性質が決まる」特殊な分布だからです。
逆に言えば、 正規分布以外では「無相関だから独立」という議論は必ずしもできない と覚えておくと安全です。
入試での実用
入試の答案で、「独立だから $${E(XY)=E(X)E(Y)}$$」と書くのは正しいです。ところが、 $${E(XY)=E(X)E(Y)}$$ が成り立ったからといって「したがって独立」と書くと、間違いです。逆向きの推論は使えません。
「独立 $${\Rightarrow}$$ 無相関」は片方向の含意で、逆は別の議論を要します。シリーズ第VII部の「成り立たない性質」で、この区別がもっと露わになる場面を扱います。
練習問題
コインを2回独立に投げて、 $${X}$$ を「1回目が表なら $${+1}$$、裏なら $${-1}$$」、 $${Y}$$ を「2回目が表なら $${+1}$$、裏なら $${-1}$$」、 $${Z=XY}$$ とおく。 $${X,Z}$$ は無相関か。独立か。
各値とその確率を書き出します。 $${(X,Y)\in\{(+1,+1),(+1,-1),(-1,+1),(-1,-1)\}}$$ で、それぞれ確率 $${\frac{1}{4}}$$。
$${Z=XY}$$ は $${(+1,+1),(-1,-1)}$$ で $${+1}$$、$${(+1,-1),(-1,+1)}$$ で $${-1}$$。 $${P(Z=+1)=P(Z=-1)=\frac{1}{2}}$$。
$${E(X)=0}$$、$${E(Z)=0}$$、$${E(XZ)=E(X\cdot XY)=E(X^2 Y)=E(Y)=0}$$(最後は $${X^2=1}$$ より)。
$$
E(XZ) = 0 = E(X)E(Z).
$$
無相関です。一方、 $${P(X=+1)=\frac{1}{2}}$$、 $${P(Z=+1)=\frac{1}{2}}$$ ですが
$$
P(X=+1, Z=+1) = P((X,Y)=(+1,+1)) = \frac{1}{4} = \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{2}
$$
となり、 $${X=+1, Z=+1}$$ のペアでは独立の式が満たされます。他のペアも同様に確認できて、 このケースでは独立 であることも示せます。
ところがもう少し非対称な設計に変えると、無相関なのに独立ではない例が作れます。練習として、 $${X}$$ が $${\{-2,-1,0,1,2\}}$$ を等確率でとり $${Y=|X|}$$ とおくと、 $${E(X)=0,\ E(XY)=E(X|X|)=0=E(X)E(Y)}$$ で無相関、しかし $${X}$$ の符号と $${Y=|X|}$$ が無関係なはずがなく、 $${P(X=0,Y=0)=\frac{1}{5}\ne P(X=0)P(Y=0)=\frac{1}{25}}$$ で独立でない、ということが確かめられます。
次に読む記事
次回から、いよいよ期待値そのものに入ります。 $${E(X)=\sum_k x_k P(X=x_k)}$$ という定義通りの計算を、1から3カードの復元抽出で手を動かして確認します。
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