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【母関数マスター講座 第13回】確率の連立漸化式〜医学部頻出問題を一掃する〜
前回(第12回)は、フィボナッチ数列の漸化式を母関数で解く手順を学びました。
今回は、医学部入試で特に頻出の「確率の連立漸化式」に母関数を適用します。複数の状態を行き来する確率の問題は、漸化式を立てたあとの計算が煩雑になりがちですが、母関数なら同じパターンで処理できます。
母関数マスター講座の全体像、シラバスは以下の記事でご覧ください。
https://note.com/goukalize/n/ne5f45c351ab2
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1. 問題設定:2つの状態を行き来する粒子
次の問題を考えます。
【問題】
粒子が状態Aと状態Bのどちらかにいる。各ステップで、Aにいるなら確率 $${\frac{2}{3}}$$ でAに留まり確率 $${\frac{1}{3}}$$ でBに移動する。Bにいるなら確率 $${\frac{1}{2}}$$ でBに留まり確率 $${\frac{1}{2}}$$ でAに移動する。最初にAにいるとき、 $${n}$$ ステップ後にAにいる確率 $${a_n}$$ を求めよ。
2. 漸化式を立てる
$${n}$$ ステップ後にAにいる確率を $${a_n}$$ 、Bにいる確率を $${b_n}$$ とすると、 $${a_n + b_n = 1}$$ です。遷移ルールから漸化式が立ちます。
$$
\begin{aligned}
a_{n+1} = \frac{2}{3} a_n + \frac{1}{2} b_n \tag{①}
\end{aligned}
$$
$${b_n = 1 - a_n}$$ を①に代入して整理すると、
$$
\begin{aligned}
a_{n+1} &= \frac{2}{3} a_n + \frac{1}{2}(1 - a_n) \\
&= \frac{1}{6} a_n + \frac{1}{2} \tag{②}
\end{aligned}
$$
②は1つの変数だけの漸化式になりました。
3. 母関数で解く
$${A(x) = \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} a_n x^n}$$ と定義します。②の両辺に $${x^{n+1}}$$ を掛けて $${n = 0}$$ から $${n = \infty}$$ まで足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
\sum_{n=0}^{\infty} a_{n+1} x^{n+1} = \frac{1}{6} \sum_{n=0}^{\infty} a_n x^{n+1} + \frac{1}{2} \sum_{n=0}^{\infty} x^{n+1} \tag{③}
\end{aligned}
$$
③の左辺は $${A(x) - a_0}$$ 、右辺第1項は $${\frac{x}{6} A(x)}$$ 、右辺第2項は $${\frac{x}{2} \cdot \frac{1}{1-x} = \frac{x}{2(1-x)}}$$ です。 $${a_0 = 1}$$ (最初はA)を代入して整理すると、
$$
\begin{aligned}
A(x) - 1 &= \frac{x}{6} A(x) + \frac{x}{2(1-x)} \\
A(x) \left(1 - \frac{x}{6}\right) &= 1 + \frac{x}{2(1-x)} \\
A(x) &= \frac{1}{1 - \frac{x}{6}} + \frac{x}{2(1-x)\left(1 - \frac{x}{6}\right)} \tag{④}
\end{aligned}
$$
④をさらに整理して通分し、部分分数分解します。 $${1 - \frac{x}{6} = \frac{6-x}{6}}$$ なので、
$$
\begin{aligned}
A(x) &= \frac{6}{6-x} + \frac{3x}{(1-x)(6-x)} \tag{⑤}
\end{aligned}
$$
$${\frac{3x}{(1-x)(6-x)}}$$ を部分分数分解すると、 $${\frac{3x}{(1-x)(6-x)} = \frac{3}{5} \cdot \frac{1}{1-x} - \frac{18}{5} \cdot \frac{1}{6-x}}$$ 。
$${\frac{1}{6-x} = \frac{1}{6} \cdot \frac{1}{1 - \frac{x}{6}}}$$ を使ってまとめると、
$$
\begin{aligned}
A(x) = \frac{3}{5} \cdot \frac{1}{1-x} + \frac{2}{5} \cdot \frac{1}{1 - \frac{x}{6}} \tag{⑥}
\end{aligned}
$$
⑥を等比級数で展開すれば、 $${x^n}$$ の係数がそのまま $${a_n}$$ です。
$$
\begin{aligned}
a_n = \frac{3}{5} + \frac{2}{5} \cdot \left(\frac{1}{6}\right)^n \tag{⑦}
\end{aligned}
$$
4. 結果の読み方
⑦から、 $${n \to \infty}$$ のとき $${a_n \to \frac{3}{5}}$$ であることがわかります。これは「十分に時間が経つと、状態Aにいる確率は $${\frac{3}{5}}$$ に収束する」という定常分布を意味しています。
漸化式を立ててから一般項を求めるまでの流れは、第12回のフィボナッチ数列とまったく同じです。母関数を定義し、漸化式を翻訳し、閉じた形にして、部分分数分解で展開する。この統一的な手順があるからこそ、状態が3つ以上に増えても同じ発想で対処できます。
まとめ
確率の連立漸化式も、 $${b_n = 1 - a_n}$$ のような関係で変数を減らしてから母関数に翻訳すれば、第12回と同じ流れで一般項が出ます。医学部入試ではマルコフ連鎖的な問題が繰り返し出題されますが、母関数の手順を身につけていれば、漸化式を立てた瞬間に「あとは計算するだけ」という安心感が得られます。
次回、第14回ではカタラン数と最短経路の問題を母関数で攻略します。
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