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【母関数マスター講座 第21回】いざ東大へ!〜2026年理系第6問・約数の余りの個数への完全解答〜
前回(第20回)までに、母関数の全ツールが揃いました。
今回は、その集大成として2026年東京大学理系数学第6問に完全解答します。本講座で学んできた「3の剰余フィルター」「指標関数の乗法性」「素因数ごとの局所分解」のすべてが合流する、まさにクライマックスの1問です。
母関数マスター講座の全体像、シラバスは以下の記事でご覧ください。
https://note.com/goukalize/n/ne5f45c351ab2
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問題
$${n}$$ を正の整数とする。 $${n}$$ の正の約数のうち、3で割って1余るものの個数を $${f(n)}$$ 、3で割って2余るものの個数を $${g(n)}$$ とする。
- $${f(2800)}$$ 、 $${g(2800)}$$ を求めよ。
- $${f(n) \geq g(n)}$$ を示せ。
- $${g(n) = 15}$$ であるとき、 $${f(n)}$$ がとりうる値を求めよ。
(1) の解答
$${2800 = 2^4 \times 5^2 \times 7}$$ です。約数 $${d = 2^a \times 5^b \times 7^c}$$ ( $${0 \leq a \leq 4, \, 0 \leq b \leq 2, \, 0 \leq c \leq 1}$$ )の3での余りを、各素因数の余りから追跡します。
第19回で学んだ指標関数の乗法性に従い、各素数のべき乗の3での余りを確認すると、
- $${2 \equiv -1 \pmod{3}}$$ なので $${2^a \equiv (-1)^a \pmod{3}}$$
- $${5 \equiv -1 \pmod{3}}$$ なので $${5^b \equiv (-1)^b \pmod{3}}$$
- $${7 \equiv 1 \pmod{3}}$$ なので $${7^c \equiv 1 \pmod{3}}$$
余りの掛け算(mod 3)から、 $${d \equiv (-1)^{a+b} \pmod{3}}$$ です。
- $${d \equiv 1 \pmod{3}}$$ ⟺ $${a + b}$$ が偶数
- $${d \equiv 2 \pmod{3}}$$ ⟺ $${a + b}$$ が奇数
(2800は3の倍数でないので、 $${d \equiv 0 \pmod{3}}$$ となる約数は存在しません。)
$${a + b}$$ が偶数になる場合の数を数えます。
- $${a}$$ が偶数(0, 2, 4の3通り)かつ $${b}$$ が偶数(0, 2の2通り):$${3 \times 2 = 6}$$
- $${a}$$ が奇数(1, 3の2通り)かつ $${b}$$ が奇数(1の1通り):$${2 \times 1 = 2}$$
合計 $${8}$$ 通り。 $${c}$$ の選び方は2通りなので、
$$
\begin{aligned}
f(2800) = 8 \times 2 = 16 \tag{①}
\end{aligned}
$$
同様に、 $${a + b}$$ が奇数になる場合は $${3 \times 1 + 2 \times 2 = 7}$$ 通り。
$$
\begin{aligned}
g(2800) = 7 \times 2 = 14 \tag{②}
\end{aligned}
$$
検算:$${f + g = 30 = 5 \times 3 \times 2 = d(2800)}$$ で、約数の総数と一致します。
(2) の解答
$${f(n) - g(n) \geq 0}$$ を示します。ここで第17回の「3の剰余フィルター」と「乗法性」を使います。
指標関数の導入
各約数 $${d}$$ に対して次の関数 $${\chi(d)}$$ を定義します。
- $${d \equiv 1 \pmod{3}}$$ のとき $${\chi(d) = 1}$$
- $${d \equiv 2 \pmod{3}}$$ のとき $${\chi(d) = -1}$$
- $${d \equiv 0 \pmod{3}}$$ のとき $${\chi(d) = 0}$$
すると、
$$
\begin{aligned}
f(n) - g(n) = \sum_{d \mid n} \chi(d) \tag{③}
\end{aligned}
$$
乗法性による分解
$${\chi}$$ は完全乗法的( $${\chi(ab) = \chi(a)\chi(b)}$$ )なので、 $${\displaystyle \sum_{d \mid n} \chi(d)}$$ は $${n}$$ の素因数分解に対して乗法的に分解できます。
$${n = p_1^{a_1} p_2^{a_2} \cdots p_r^{a_r}}$$ のとき、
$$
\begin{aligned}
f(n) - g(n) = \prod_{i=1}^{r} \left( \sum_{j=0}^{a_i} \chi(p_i^j) \right) = \prod_{i=1}^{r} \left( \sum_{j=0}^{a_i} \chi(p_i)^j \right) \tag{④}
\end{aligned}
$$
④の各因子を、素数 $${p}$$ の3での余りによって場合分けします。
$${p = 3}$$ のとき:
$${\chi(3) = 0}$$ なので $${\displaystyle \sum_{j=0}^{a} \chi(3)^j = 1}$$ ( $${j = 0}$$ の項のみ生き残る)
$${p \equiv 1 \pmod{3}}$$ のとき:
$${\chi(p) = 1}$$ なので $${\displaystyle \sum_{j=0}^{a} 1^j = a + 1 \geq 1}$$
$${p \equiv 2 \pmod{3}}$$ のとき:
$${\chi(p) = -1}$$ なので $${\displaystyle \sum_{j=0}^{a} (-1)^j}$$
$${a}$$ が偶数なら $${1}$$ 、 $${a}$$ が奇数なら $${0}$$
結論
④の各因子はすべて $${0}$$ 以上です(それぞれ $${1}$$ 、 $${a+1}$$ 、 $${0}$$ または $${1}$$ )。したがって、
$$
\begin{aligned}
f(n) - g(n) \geq 0 \tag{⑤}
\end{aligned}
$$
すなわち $${f(n) \geq g(n)}$$ が示されました。
(3) の解答
$${g(n) = 15}$$ のとき、 $${f(n)}$$ がとりうる値を求めます。
準備
$${n}$$ の素因数分解を3での余りで分類します。
- $${p = 3}$$ の指数を $${c}$$ ( $${c = 0}$$ も許す)
- $${p \equiv 1 \pmod{3}}$$ である素数の指数の集合を $${a_1, a_2, \dots}$$
- $${p \equiv 2 \pmod{3}}$$ である素数の指数の集合を $${b_1, b_2, \dots}$$
$${3}$$ の倍数である約数は $${f(n)}$$ にも $${g(n)}$$ にも寄与しないので、 $${f(n)}$$ と $${g(n)}$$ の値は $${c}$$ に依存しません。3と互いに素な部分 $${m = \prod p_i^{a_i} \prod q_j^{b_j}}$$ だけで決まります。
$${\Delta = f(n) - g(n)}$$ と $${D = f(n) + g(n)}$$ ( $${= }$$ 3と互いに素な約数の個数)を使うと、
$$
\begin{aligned}
f(n) = \frac{D + \Delta}{2}, \quad g(n) = \frac{D - \Delta}{2} \tag{⑥}
\end{aligned}
$$
④の分析から、
$$
\begin{aligned}
D &= \prod (a_i + 1) \cdot \prod (b_j + 1) = A \cdot B \tag{⑦}
\end{aligned}
$$
また、
$$
\begin{aligned}
\Delta = \prod (a_i + 1) \cdot \prod (\text{$b_j$ ごとの寄与}) \tag{⑧}
\end{aligned}
$$
$${A = \prod(a_i + 1)}$$ 、 $${B = \prod(b_j + 1)}$$ と置きます。
場合1:ある b_j が奇数のとき
⑧の対応する因子が $${0}$$ になるので $${\Delta = 0}$$ 、すなわち $${f(n) = g(n)}$$ です。
$${g(n) = 15}$$ なら $${f(n) = 15}$$ です。
場合2:すべての b_j が偶数のとき
すべての $${b_j}$$ は偶数なので $${b_j + 1}$$ はすべて奇数で3以上です。 $${B}$$ は奇数になります。
⑧の各因子は $${1}$$ なので $${\Delta = A}$$ です。 $${g(n) = \frac{AB - A}{2} = \frac{A(B-1)}{2} = 15}$$ より、
$$
\begin{aligned}
A(B - 1) = 30 \tag{⑨}
\end{aligned}
$$
$${B - 1}$$ は偶数( $${B}$$ が奇数なので)で、 $${B \geq 3}$$ (素数 $${q \equiv 2 \pmod 3}$$ が少なくとも1つ存在し、偶数乗なので $${b_j \geq 2}$$ 、 $${b_j + 1 \geq 3}$$ )です。
$${B = 1}$$ の場合( $${q \equiv 2}$$ なる素因数が存在しない)は $${B - 1 = 0}$$ となり⑨を満たしません。
⑨を満たす $${(A, B)}$$ の組を探します。 $${B}$$ は3以上の奇数の積として実現可能でなければなりません。
- $${A = 1, B - 1 = 30, B = 31}$$ :$${B = 31}$$ は奇数で実現可能(例えば $${2^{30}}$$ の約数を考える)→ $${f = \frac{31+1}{2} = 16}$$
- $${A = 3, B - 1 = 10, B = 11}$$ :奇数で実現可能 → $${f = \frac{33+3}{2} = 18}$$
- $${A = 5, B - 1 = 6, B = 7}$$ :奇数で実現可能 → $${f = \frac{35+5}{2} = 20}$$
- $${A = 15, B - 1 = 2, B = 3}$$ :奇数で実現可能 → $${f = \frac{45+15}{2} = 30}$$
( $${B}$$ が偶数になる組 $${(A, B) = (2, 16), (6, 6), (10, 4), (30, 2)}$$ は、 $${B}$$ が奇数という条件に反するため不適。)
答え
場合1と場合2を合わせて、 $${f(n)}$$ がとりうる値は、
$$
\begin{aligned}
f(n) \in \{15, \, 16, \, 18, \, 20, \, 30\} \tag{⑩}
\end{aligned}
$$
各値が実際に実現されることを確認しておきます(いずれも $${g(n) = 15}$$ になることは公式から追跡できます)。
- $${f = 15}$$ :場合1の例。 $${n = 2^{29}}$$ では $${b_1 = 29}$$ (奇数)なので $${\Delta = 0}$$ 、 $${D = 30}$$ 、 $${f = g = 15}$$ 。
- $${f = 16}$$ :場合2の例。 $${n = 2^{30}}$$ では $${A = 1, B = 31}$$ (指数30が偶数)、 $${D = 31, \Delta = 1}$$ 、 $${f = 16, g = 15}$$ 。
- $${f = 18}$$ :場合2の例。 $${n = 7^2 \cdot 2^{10}}$$ では $${A = 3, B = 11}$$ 、 $${D = 33, \Delta = 3}$$ 、 $${f = 18, g = 15}$$ 。
- $${f = 20}$$ :場合2の例。 $${n = 7^4 \cdot 2^6}$$ では $${A = 5, B = 7}$$ 、 $${D = 35, \Delta = 5}$$ 、 $${f = 20, g = 15}$$ 。
- $${f = 30}$$ :場合2の例。 $${n = 7^{14} \cdot 2^2}$$ では $${A = 15, B = 3}$$ 、 $${D = 45, \Delta = 15}$$ 、 $${f = 30, g = 15}$$ 。
まとめ
本講座で積み上げてきた道具のほぼすべてがこの1問に集約されています。約数を余りで分類する指標関数の乗法性(第19回)、素因数ごとの局所因子への分解(第17回〜第18回の応用)、そして閉じた式に落とし込む代数的処理。「母関数を学んだ人」と「そうでない人」で、この問題への見通しは天と地ほど違います。
次回、最終回となる第22回では、母関数を試験会場で使いこなすための実戦戦略を伝えます。
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