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【母関数マスター講座 第7回】不等式の条件を方程式に変えるテクニック〜ダミー変数の導入〜
前回(第6回)は、 $${x = -1}$$ の代入で偶数次と奇数次の係数を完全に分離する手法を学びました。
今回は第2部の締めくくりとして、入試で頻出の「和が $${n}$$ 以下」という不等式条件を母関数で扱うための、シンプルかつ強力なテクニックを紹介します。
母関数マスター講座の全体像、シラバスは以下の記事でご覧ください。
https://note.com/goukalize/n/ne5f45c351ab2
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1. 不等式条件と母関数の相性
これまで扱ってきた問題は、すべて「和がぴったり $${k}$$ になる」という等式条件でした。母関数は「特定の次数の係数を読み取る」仕組みなので、ターゲットが1つの次数に定まる等式条件とは相性抜群です。不等式も、ひと工夫加えれば同じ枠組みで扱えます。
では、次のような問題はどうでしょうか。
【問題】
$${x + y + z \leq 10}$$ を満たす、負でない整数 $${(x, y, z)}$$ の組は何通りあるか?
不等式がある以上、「 $${t^k}$$ の係数を1つ読み取る」だけでは済みません。 $${k = 0}$$ から $${k = 10}$$ までのすべての係数を足し合わせる必要があり、これでは手間がかかります。
2. ダミー変数で不等式を等式に変換する
ここで登場するのが「ダミー変数」のアイデアです。新しい変数 $${w \geq 0}$$ を導入して、不等式を等式に書き換えます。
$$
\begin{aligned}
x + y + z + w = 10 \quad (x, y, z, w \geq 0) \tag{①}
\end{aligned}
$$
$${w}$$ は「 $${10}$$ から $${x+y+z}$$ を引いた余り」を吸収する変数です。 $${x + y + z}$$ が $${10}$$ 以下であるかぎり $${w}$$ は0以上の整数になるので、①の解と元の不等式の解は1対1に対応します。
3. 母関数に翻訳して一撃で求める
①は「4個の変数の和が10になる負でない整数解」ですから、第4回で学んだ重複組合せそのものです。
$$
\begin{aligned}
(1 + t + t^2 + \cdots)^4 \tag{②}
\end{aligned}
$$
②の $${t^{10}}$$ の係数を求めればよいので、重複組合せの公式により、
$$
\begin{aligned}
{}{4+10-1}\mathrm{C}{10} &= {}{13}\mathrm{C}{10} \\
&= {}_{13}\mathrm{C}_3 \\
&= \frac{13 \cdot 12 \cdot 11}{3 \cdot 2 \cdot 1} \\
&= 286 \tag{③}
\end{aligned}
$$
③より、答えは286通りです。不等式の問題が、ダミー変数を1つ追加するだけで、等式の問題に帰着しました。
4. 上限付きの不等式も同じ発想で処理できる
応用として、各変数に上限がある場合も見ておきましょう。
【問題】
$${x + y + z \leq 10}$$ 、ただし $${0 \leq x \leq 3, , 0 \leq y \leq 3, , 0 \leq z \leq 3}$$ を満たす整数の組は何通りか?
同様にダミー変数 $${w \geq 0}$$ を導入して $${x + y + z + w = 10}$$ とします。 $${x, y, z}$$ にはそれぞれ上限3があるので、母関数は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
f(t) = (1 + t + t^2 + t^3)^3 \cdot (1 + t + t^2 + \cdots) \tag{④}
\end{aligned}
$$
④の前半3つのカッコが $${x, y, z}$$ (上限あり)、最後のカッコが $${w}$$ (上限なし)を表しています。この式の $${t^{10}}$$ の係数を求めれば、それが答えです。
上限なしの変数と上限ありの変数が混在しても、母関数なら同じ枠組みの中で自然に処理できます。
まとめ
「和が $${n}$$ 以下」という不等式条件は、ダミー変数を1つ導入して「和がぴったり $${n}$$ 」の等式条件に変換するだけで、母関数の守備範囲に入ります。不等式を見たら「余りを吸収する変数を足す」。これを反射的にできるようになると、入試問題での対応力がぐんと上がります。
次回、第8回からは第3部に入ります。ここまで登場した冪級数を、等比級数の公式で「分数」に圧縮する計算テクニックを学びます。
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