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【期待値マスター講座02】標本空間と事象を1問で押さえる
この記事では、期待値の話に入る前提として、確率を考えるときに最初に決めるべき「標本空間」と、その部分集合としての「事象」の関係を、さいころの例で整理します。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
確率はいつも「何の試行か」から始まる
「確率 $${\frac{1}{2}}$$ で表が出る」と言うとき、私たちは無意識に「コインを1回投げる試行」を想定しています。けれど、もし「コインを2回投げて、少なくとも1回は表」と言われると、確率は $${\frac{1}{2}}$$ ではなくなります。
つまり、 確率は、何の試行を考えているかが決まって初めて意味を持つ わけです。この「考えている試行で起こりうる結果すべての集合」が標本空間です。
標本空間と事象
定義を整理します。
ある試行において、起こりうる結果すべての集合を、その試行の 標本空間 と呼び $${\Omega}$$ で表します。 $${\Omega}$$ の部分集合を 事象 と呼びます。事象 $${A}$$ が起こる確率を $${P(A)}$$ と書きます。
高校範囲では、 $${\Omega}$$ は有限集合であることがほとんどです。このシリーズでも、特に断らない限り標本空間は有限と考えます。
ここで大切なのは、「事象」はそれ自体が集合であって、 数や命題ではなく、結果の集まり だということです。「偶数の目が出る」というのは事象を言葉で書いたものですが、数学的にはその裏で必ず「 $${\Omega}$$ のどの部分集合のことを言っているのか」が決まっています。
例題:さいころ1回で確率を書き出す
簡単な例で確認します。
公正なさいころを1回振る試行を考える。「偶数の目が出る」「3以下の目が出る」「2以上5以下の目が出る」をそれぞれ事象として書き、確率を求めよ。
標本空間は
$$
\Omega = \{1,2,3,4,5,6\}
$$
です。これらの目はすべて等しい確率 $${\frac{1}{6}}$$ で起こると考えます。
各事象は次の部分集合になります。
- 「偶数」 $${A=\{2,4,6\}}$$
- 「3以下」 $${B=\{1,2,3\}}$$
- 「2以上5以下」 $${C=\{2,3,4,5\}}$$
それぞれの確率は、要素数を6で割って
$$
P(A) = \frac{3}{6} = \frac{1}{2},\quad P(B) = \frac{1}{2},\quad P(C) = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}.
$$
慣れてくると、「集合を書く」というステップを省きたくなりますが、 省かずに書くことができなければ、理解できているとは言えません 。
複雑な条件、複数のさいころ、非復元抽出など、頭の中だけで処理しようとすると条件の取り違えで失点しがちです。
「同様に確からしい」が前提
「要素数 $${\div}$$ 全要素数」で確率を出せるのは、 $${\Omega}$$ のそれぞれの結果が 同じ確率で起こる ときだけです。さいころの目は1〜6が等確率という前提があるからこそ、 $${P(A)=\frac{|A|}{|\Omega|}}$$ が使えます。
これが効くのは、「同時に取り出す」「ランダムに並べる」のように、全ての並び方や組合せが等確率で起こると見なしてよい場面です。一方、コインで裏が出やすい設計や、不均等なくじでは、要素数だけで割ってはいけません。
補足:有限とは限らない場合
無限の標本空間(連続的な値、無限回の試行)を扱う場合、事象を $${\Omega}$$ の部分集合の集まりとして可測性などに気を配る必要があります。これは大学の確率論の話で、入試では基本的に有限の標本空間しか出てきません。安心して有限の道具だけ使えます。
第IX部で扱う「コイン投げで初めて表が出るまでの回数」のように、結果の集合が無限になる問題もありますが、そのときも「現れる結果が高々可算」「期待値の和が収束する」など、入試の範囲では扱える形になっています。
練習問題
さいころを2回振る試行を考える。標本空間 $${\Omega}$$ を集合で書き、「2回の目の和が7」となる事象 $${A}$$ を書け。 $${P(A)}$$ を求めよ。
$${\Omega = \{1,\ldots,6\}\times\{1,\ldots,6\}}$$ で要素数は36。和が7になる目の組は $${(1,6),(2,5),(3,4),(4,3),(5,2),(6,1)}$$ の6通りなので
$$
A = \{(1,6),(2,5),(3,4),(4,3),(5,2),(6,1)\},\quad P(A) = \frac{6}{36} = \frac{1}{6}.
$$
ここで $${(1,6)}$$ と $${(6,1)}$$ を別の要素として数えるのは、 1回目と2回目が区別できる からです。同時に取り出して順序を問わない問題なら、組合せで数えます。順序を見るか見ないか、ここで初めて分岐点が現れます。
次に読む記事
次回は、標本空間の上で定義される「確率変数」の話に進みます。 $${X}$$ と書かれていて急に身構える受験生も多いですが、要するに「試行結果ごとに数を割り当てる関数」のことです。期待値の話はすべてこの確率変数を主役にして進みます。
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