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【母関数マスター講座 第11回】もう一度微分する〜「分散」すらもシステマチックに求める〜
前回(第10回)は、確率母関数を1回微分して $${x = 1}$$ を代入するだけで期待値が出ることを学びました。
今回は、もう1回微分します。2回微分の結果と期待値を組み合わせると、確率のもう1つの重要指標である「分散」が、やはり母関数の操作だけで求まります。
母関数マスター講座の全体像、シラバスは以下の記事でご覧ください。
https://note.com/goukalize/n/ne5f45c351ab2
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1. 2回微分すると何が降りてくるか
確率母関数 $${f(x) = \displaystyle \sum_k a_k x^k}$$ を2回微分して $${x = 1}$$ を代入してみましょう。
$$
\begin{aligned}
f''(x) = \sum_k k(k-1) a_k \, x^{k-2} \tag{①}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
f''(1) = \sum_k k(k-1) a_k = E[X(X-1)] \tag{②}
\end{aligned}
$$
②より、2回微分で得られるのは $${E[X(X-1)]}$$ 、つまり「階乗モーメント」です。 $${E[X^2]}$$ そのものではありませんが、ここから簡単に $${E[X^2]}$$ が求まります。
$$
\begin{aligned}
E[X^2] = E[X(X-1)] + E[X] = f''(1) + f'(1) \tag{③}
\end{aligned}
$$
2. 分散の公式に組み込む
分散 $${V(X)}$$ の定義は $${E[X^2] - (E[X])^2}$$ です。③と前回の結果 $${E[X] = f'(1)}$$ を代入すると、
$$
\begin{aligned}
V(X) &= E[X^2] - (E[X])^2 \\
&= f''(1) + f'(1) - (f'(1))^2 \tag{④}
\end{aligned}
$$
④が、母関数から分散を求める公式です。 $${f'(1)}$$ と $${f''(1)}$$ の2つの値があれば、分散まで確定します。
3. コイントスの分散を計算する
$${n}$$ 枚のコインで表が出る枚数 $${X}$$ の分散を求めてみましょう。確率母関数は $${f(x) = \left( \frac{1+x}{2} \right)^n}$$ でした。
前回の結果より $${f'(1) = \frac{n}{2}}$$ です。2回微分を計算します。
$$
\begin{aligned}
f'(x) &= \frac{n}{2} \left( \frac{1+x}{2} \right)^{n-1} \tag{⑤}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
f''(x) &= \frac{n(n-1)}{4} \left( \frac{1+x}{2} \right)^{n-2} \tag{⑥}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
f''(1) &= \frac{n(n-1)}{4} \cdot 1 = \frac{n(n-1)}{4} \tag{⑦}
\end{aligned}
$$
⑦を④に代入します。
$$
\begin{aligned}
V(X) &= \frac{n(n-1)}{4} + \frac{n}{2} - \left(\frac{n}{2}\right)^2 \\
&= \frac{n^2 - n}{4} + \frac{2n}{4} - \frac{n^2}{4} \\
&= \frac{n}{4} \tag{⑧}
\end{aligned}
$$
⑧より、 $${V(X) = \frac{n}{4}}$$ です。これは二項分布 $${B\left(n, \frac{1}{2}\right)}$$ の分散 $${np(1-p) = n \cdot \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2} = \frac{n}{4}}$$ と一致します。
4. 一般の二項分布への拡張
コインの表が出る確率が $${\frac{1}{2}}$$ ではなく一般の $${p}$$ の場合、確率母関数は $${f(x) = (1 - p + px)^n}$$ です。同じ手順で微分すると、
$$
\begin{aligned}
f'(1) &= np \tag{⑨}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
f''(1) &= n(n-1)p^2 \tag{⑩}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V(X) &= n(n-1)p^2 + np - (np)^2 \\
&= np(1-p) \tag{⑪}
\end{aligned}
$$
⑨⑪は教科書に載っている二項分布の期待値・分散の公式そのものです。母関数の微分は、これらの公式を覚える必要すらなくしてしまいます。問題に応じて母関数を書き、微分し、代入する。それだけで期待値も分散も出るのですから。
まとめ
確率母関数を1回微分すれば期待値、2回微分すれば分散に必要な $${E[X(X-1)]}$$ が得られます。暗記すべき公式が減り、手順がシステマチックになる。これが第3部で学んだ「計算ショートカット」の真骨頂です。
次回、第12回からは第4部に突入し、漸化式を母関数で解くテクニックを学びます。フィボナッチ数列の一般項を、母関数の力で導出してみましょう。
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