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【東北医科薬科大学】2017年度 小論文:科学技術と幸福【模範解答あり】

    13 December, 2025

    こんにちは!オンライン学習塾 ゴウカライズです!
    今回は、東北医科薬科大学医学部で2017年度に出題された「科学技術と幸福」に関する問題を解説します。
    AIや遺伝子操作など、科学技術は急速に進歩していますが、それは本当に私たちを幸せにしているのでしょうか?
    技術の進歩と生命倫理、そして人間の幸福について哲学的に考察する力が求められます。
    合格答案の書き方を一緒に学びましょう!

    なお、他の年度の小論文の解説などはこちらの記事にまとめてあります!

    https://note.com/goukalize/n/n9d0b74b16df0

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    テーマ解説:技術の進歩は人を幸せにするか?

    背景と現状

    産業革命以降、科学技術は飛躍的に進歩し、多くの国々で生活は以前よりも便利で豊かになってきました。ただし、その恩恵には国や地域、社会階層による格差があることも忘れてはならないと思います。世界全体の平均寿命は、1900年頃には約32年だったのに対し、2021年には約71年と、2倍以上に伸びたと報告されています(Our World in Data「Life Expectancy」より)。

    https://ourworldindata.org/life-expectancy

    医療分野では、ワクチンや抗生物質、外科手術、がん治療などの発展により、かつては不治と考えられていた感染症や疾患の一部が治療可能になりました。世界保健機関(WHO)も、2000年から2019年のあいだに世界の平均寿命が約6年延びたことを報告しており、医療と公衆衛生の進歩が人々の寿命を押し上げていることが示されています。

    https://www.who.int/data/gho/data/themes/mortality-and-global-health-estimates/ghe-life-expectancy-and-healthy-life-expectancy

    しかし一方で、科学技術の応用は、核兵器の開発や地球環境の悪化といった深刻な問題も生み出してきました。核兵器については、国連や国際赤十字が、人道上および環境上の壊滅的な結果をもたらしうるとして、廃絶と規制の必要性を繰り返し訴えています。

    また、人工呼吸器や胃ろうなどの生命維持治療が長期化するなかで、患者さんやご家族が「これ以上の延命を望まない」と感じる状況が生じることもあります。日本や海外の終末期医療・緩和ケアの文献では、そのようなケースを「医療的無益性」「QOL(生活の質)の著しい低下」といった観点から議論しており、一律に延命を目指すのではなく、患者さんの価値観や尊厳を尊重する医療が重視されています。

    例:Rogers SN. “Quality of life perspectives in head and neck cancer.” British Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 2010.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19815421/


    医療者としての視点

    医療は科学技術の最先端ですが、単に「技術的に可能だからやる」ことが正しいとは限りません。
    例えば、出生前診断で胎児の障害を知ることは幸福なのか?胃ろうを作ってまで延命することは本人の望みなのか?
    医師は、技術を行使する前に「それは患者の幸福(QOL)につながるのか」を常に問い続ける倫理観を持たなければなりません。

    今後の展望と重要論点

    今後は、AI(人工知能)やゲノム編集技術が、医療や創薬などさまざまな分野でさらに発展していくと予想されています。すでに医療画像診断の分野では、AI が画像を解析して放射線科医の診断を支援するシステムが研究・導入されてきており、診断の効率化や見落としの減少が期待されています(例えば、Lawrence R. “Artificial intelligence for diagnostics in radiology practice.” eClinicalMedicine, 2025)。

    https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(25)00160-9/fulltext

    ゲノム編集についても、CRISPR-Cas9 などの技術が基礎研究や治療法の開発に広く用いられていますが、人間の受精卵や生殖細胞に対する応用には倫理的・法的な制約が大きく、国際的な議論が続いています(Greely HT. “CRISPR’d babies: human germline genome editing in the ‘He Jiankui affair’.” Journal of Law and the Biosciences, 2019 など)。

    https://academic.oup.com/jlb/article/6/1/111/5549624

    「デザイナーベビー(遺伝子操作された子供)」や「AIによる診断」など、SFの世界だったことが現実になりつつあります。

    「デザイナーベビー(特定の形質を選択・操作した子ども)」という概念自体は以前から議論されてきましたが、2018年には、中国の科学者・賀建奎氏がヒト受精卵に対してゲノム編集を行い、双子が出生したと主張した事例が報じられました。このいわゆる「CRISPR ベビー」事件は、世界中の研究者や国際機関から強い批判を受け、現在も Nature 誌などで詳細が検証されています。

    https://www.nature.com/articles/d41586-018-07545-0

    https://www.nature.com/articles/d41586-019-00673-1

    https://www.nature.com/articles/d41586-022-00987-7

    ただし、このような試みは研究倫理に反するものとされており、現時点で「親が自由に望む形質を選べるデザイナーベビー」が社会的に認められているわけではありません。

    一方、「AIによる診断支援」はすでに現実になりつつあります。特に放射線診断の領域では、CT や MRI 画像を AI が解析し、医師の診断を補助するシステムが研究・導入されています。最近の総説では、AI が診断のスピード向上やワークフローの効率化に寄与している一方で、最終的な判断は人間の専門医が担うべきだと指摘されています(例えば Ogut E. “Challenges Across Diagnostic Imaging, Clinical Decision Support Systems and Pathology.” Pharmacy, 2025)。

    https://www.mdpi.com/2039-7283/15/9/169

    技術の暴走を防ぎ、人間の尊厳を守るために、「生命倫理(バイオエシックス)」 の議論がますます重要になります。

    頻出キーワード

    • QOL (Quality of Life): 生活の質を意味し、単に寿命の長さや病気の有無だけではなく、「自分の人生をどのように感じているか」を含む、より主観的で広い概念です。世界保健機関(WHO)は QOL を、「自分が生きている文化や価値観のなかで、自分の目標や期待、基準、関心との関係において、自分の生活の状況をどのように認識しているか」という個人の主観的な評価だと定義しています(WHOQOL プロジェクト)。
      https://www.who.int/tools/whoqol
      https://www.who.int/tools/whoqol/whoqol-bref
      医療現場では、身体的な健康状態だけでなく、心理面や社会的関係、生活環境なども含めて総合的に QOL を考えることが重視されています。
    • 生命倫理(バイオエシックス): 医療や生命科学、バイオテクノロジーの進歩に伴って生じる倫理的・法的・社会的な問題を扱う学問分野です。ユネスコは 2005 年に「生命倫理と人権に関する世界宣言(Universal Declaration on Bioethics and Human Rights)」を採択し、人間の尊厳・人権・自律などを尊重しながら、科学技術を利用すべきだという国際的な原則を示しました。
      医療者は、このような国際的な枠組みも踏まえながら、「技術的に可能かどうか」だけでなく、「その医療行為が患者さんの尊厳や QOL を守っているか」という観点から診療を考えていくことが求められます。
    • 技術的特異点(シンギュラリティ): AIが人間の知能を超える転換点。
    • パターナリズム: 強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意思によらずに介入すること(温情主義)。

    【2017年度】実際に出題された問題

    問題の内容

    科学技術の進歩が人々と幸福につながると思うかどうか、あなたの考えを600字以内で述べなさい。

    OK回答例

     科学技術の進歩は、我々の生活を飛躍的に豊かにしたが、それが直ちに人間の幸福に結びつくとは限らないと考える。
     確かに、医療技術の進歩により多くの命が救われ、インターネットにより世界中の情報に瞬時にアクセスできるようになった恩恵は計り知れない。物質的な豊かさや生活の利便性は、間違いなく向上したと言えるだろう。
     しかし、技術はあくまで「手段」に過ぎず、使い手である人間の倫理観が欠如していれば、それは容易に凶器へと変貌する。例えば、核兵器の開発や、過度な延命治療による尊厳の喪失、SNSによる誹謗中傷などは、技術が幸福に直結しない典型的な実例である。便利さの裏で、人間関係の希薄化や、情報過多による精神的なストレスが増大している側面も否定できない。
     重要なのは、技術の進歩を盲目的に受け入れるのではなく、「何のための技術か」を常に問い直す姿勢だ。医療においても、単に病気を治すだけでなく、その治療が患者のQOL(生活の質)を高め、その人らしい人生を支えるものでなければ意味がない。持続可能な社会を実現するためには、効率性や利便性だけでなく、精神的な豊かさや環境との調和を重視する新たな価値観への転換が求められる。
     科学技術は、人間の幸福という目的のために、高い倫理観を持ってコントロールされて初めて、その真価を発揮するのである。技術に使われるのではなく、技術を使いこなす叡智こそが、現代社会には不可欠である。

    回答のポイント

    • 「手段」と「目的」の区別
      科学技術を「手段」、人間の幸福を「目的」と明確に区別しています。技術そのものを善悪で語るのではなく、「使い手(人間)の問題」 として捉えることで、議論に深みが出ます。この視点は、高度な医療技術を扱う医師にとって必須の倫理観です。
    • 具体例の対比(光と影)
      「医療の恩恵(光)」と「核兵器や誹謗中傷(影)」を対比させることで、科学技術の両義性を浮き彫りにしています。物事の一面だけでなく、多面的な側面を見ることができるバランス感覚は、小論文において高く評価されます。
    • QOL(生活の質)への言及
      結論部分で、医療の目的を「治癒」だけでなく「QOLの向上」に置いています。これは現代医療の核心的なテーマであり、「患者中心の医療」 を理解していることの証明になります。技術至上主義に陥らず、人間中心の視点を持っていることが伝わります。

    なお、この問題は図の読み取りではありませんが、図の読み取りの練習として以下のような図も参考になると思います。


    NG回答例

     科学技術の進歩は、間違いなく人々を幸福にすると考える。歴史を見れば明らかで、医療の発達により平均寿命は延び、インターネットにより生活は便利になった。これらは全て科学の恩恵である。
     不幸な出来事もあるが、それは技術が未熟だからだ。AIやロボット技術がさらに進化すれば、労働から解放され、病気も克服できる未来が来るはずだ。
     したがって、我々はリスクを恐れずに技術開発を進めるべきだ。全ての苦痛を科学で取り除くことこそが、人類の最終的な幸福につながると信じている。(275文字)

    NGのポイント

    • 短絡的な技術信仰(科学万能主義)
      「技術が進めば全て解決する」という考えは、原発事故や環境問題などの「技術が生んだ新たな課題」を無視しています。科学の限界や負の側面を直視できない姿勢は、リスク管理能力に欠けると判断されます。
    • 幸福の定義の浅さ
      「苦痛がない=幸福」という単純な図式で捉えていますが、人間にとっての幸福はもっと複雑です(例:困難を乗り越える達成感、人との絆など)。QOL(生活の質)の概念を深く理解できていないことが露呈しています。
    • 倫理観の欠如
      「リスクを恐れずに」という主張は、生命倫理や安全性を軽視する危険な思想につながりかねません。医師には、技術の暴走を止める「ブレーキ役」としての倫理観が求められます。

    まとめ

    科学技術そのものは善でも悪でもなく、あくまで「道具」にすぎません。核兵器開発や環境破壊のように、人間の手によって大きな危険を生み出すこともあれば、医療技術の進歩によって世界の平均寿命を大きく延ばしてきたという側面もあります(平均寿命の推移については、Our World in Data などで確認できます)。

    https://ourworldindata.org/life-expectancy

    大切なのは、「何が技術的に可能か」だけを見るのではなく、「それを行うことで誰のどのような幸福につながるのか」を問い続ける姿勢です。世界保健機関(WHO)は QOL(quality of life)を、「自分の目標や期待、価値観のなかで、自分の生活をどう感じているか」という主観的な評価だと定義しており、単に長生きすることと、満足して生きることは別問題であると示しています。

    https://www.who.int/tools/whoqol

    また、ユネスコが採択した「生命倫理と人権に関する世界宣言」は、医学や生命科学の発展が人間の尊厳や人権を損なってはならないという原則を国際的に共有する試みです。ここには、自律(自己決定)や人格の尊重、弱い立場の人々の保護など、医療者が大切にすべき価値が整理されています。

    https://www.unesco.org/en/ethics-science-technology/bioethics-and-human-rights

    医療を志す私たちは、科学技術に「振り回される側」ではなく、倫理観と専門性をもって技術を「使いこなす側」になることが求められます。技術的にできること(possible)と、倫理的にすべきこと(ought)を区別しながら、患者さん一人ひとりの QOL と尊厳を中心に据えて考える――そのような態度こそが、科学技術の進歩を本当の意味で人間の幸福につなげていく鍵になるのだと思います。


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