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【母関数マスター講座 第12回】漸化式を母関数で解き伏せる〜フィボナッチ数列の一般項〜
第3部(第8回〜第11回)では、等比級数・負の二項定理・微分という計算道具を揃えました。
今回からの第4部では、それらの道具を使って「漸化式」を母関数で解くテクニックに挑みます。題材は、フィボナッチ数列です。
母関数マスター講座の全体像、シラバスは以下の記事でご覧ください。
https://note.com/goukalize/n/ne5f45c351ab2
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1. フィボナッチ数列と母関数の出会い
フィボナッチ数列を次のように定義します。
$$
\begin{aligned}
f_0 = 0, \quad f_1 = 1, \quad f_n = f_{n-1} + f_{n-2} \quad (n \geq 2) \tag{①}
\end{aligned}
$$
最初のいくつかの項は $${0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, \dots}$$ です。この数列の一般項を求めたい。教科書的には特性方程式を使いますが、母関数なら漸化式をまるごと「代数の計算」に変換して解けます。
2. 母関数を定義して漸化式を翻訳する
フィボナッチ数列の母関数を次のように定義します。
$$
\begin{aligned}
F(x) = \sum_{n=0}^{\infty} f_n x^n = f_0 + f_1 x + f_2 x^2 + f_3 x^3 + \cdots \tag{②}
\end{aligned}
$$
漸化式 $${f_n = f_{n-1} + f_{n-2}}$$ を母関数の言葉に翻訳するために、 $${xF(x)}$$ と $${x^2 F(x)}$$ を作ります。
$${xF(x) = f_0 x + f_1 x^2 + f_2 x^3 + \cdots}$$ は、各 $${f_n}$$ の添字を「1つずらした」ものです。同様に $${x^2 F(x)}$$ は「2つずらした」ものになります。
漸化式 $${f_n = f_{n-1} + f_{n-2}}$$ の両辺に $${x^n}$$ を掛けて $${n = 2}$$ から $${n = \infty}$$ まで足し合わせると、
$$
\begin{aligned}
F(x) - f_0 - f_1 x = x(F(x) - f_0) + x^2 F(x) \tag{③}
\end{aligned}
$$
$${f_0 = 0, f_1 = 1}$$ を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
F(x) - x &= xF(x) + x^2 F(x) \\
F(x)(1 - x - x^2) &= x \\
F(x) &= \frac{x}{1 - x - x^2} \tag{④}
\end{aligned}
$$
④のように、漸化式が「 $${F(x)}$$ についての方程式」に変わり、母関数の閉じた形が求まりました。
3. 部分分数分解で一般項を読み取る
$${1 - x - x^2 = 0}$$ の解は $${x = \frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2}}$$ です。ここで $${\alpha = \frac{1+\sqrt{5}}{2}}$$ 、 $${\beta = \frac{1-\sqrt{5}}{2}}$$ と置くと、 $${1 - x - x^2 = -(x - \frac{1}{\alpha})(x - \frac{1}{\beta}) \cdot \alpha\beta}$$ と因数分解できます。 $${\alpha\beta = -1}$$ なので、
$$
\begin{aligned}
1 - x - x^2 = (1 - \alpha x)(1 - \beta x) \tag{⑤}
\end{aligned}
$$
したがって④は、
$$
\begin{aligned}
F(x) = \frac{x}{(1 - \alpha x)(1 - \beta x)} \tag{⑥}
\end{aligned}
$$
⑥を部分分数分解します。
$$
\begin{aligned}
F(x) = \frac{1}{\alpha - \beta} \left( \frac{1}{1 - \alpha x} - \frac{1}{1 - \beta x} \right) \tag{⑦}
\end{aligned}
$$
⑦の各分数は等比級数の公式(第8回)で展開できます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{1 - \alpha x} = \sum_{n=0}^{\infty} \alpha^n x^n, \quad \frac{1}{1 - \beta x} = \sum_{n=0}^{\infty} \beta^n x^n \tag{⑧}
\end{aligned}
$$
⑦⑧を組み合わせると、 $${x^n}$$ の係数が $${f_n}$$ ですから、
$$
\begin{aligned}
f_n = \frac{\alpha^n - \beta^n}{\alpha - \beta} = \frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^n - \left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^n \right\} \tag{⑨}
\end{aligned}
$$
⑨がフィボナッチ数列の一般項(ビネの公式)です。漸化式を母関数に翻訳し、分数式にして、部分分数分解で等比級数に戻す。この一連の流れが、母関数で漸化式を解く基本パターンです。
まとめ
母関数を使えば、漸化式は $${F(x)}$$ についての代数方程式に変わります。閉じた形を求め、部分分数分解し、等比級数で展開する。この手順は、3項間漸化式に限らず、さらに複雑な漸化式にも応用できます。
次回、第13回では医学部入試で頻出の「確率の連立漸化式」に母関数で挑みます。
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