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【東北医科薬科大学】2024年度 小論文:終末期医療と在宅ケア【模範解答あり】

    12 December, 2025

    こんにちは!オンライン学習塾 ゴウカライズです!
    今回は、東北医科薬科大学医学部で2024年度に出題された「終末期医療と在宅ケア」に関する問題を解説します。
    「多死社会」を迎える日本において、どこで最期を迎えるか(看取りの場所)は、医療だけでなく社会全体の大きな課題です。
    データから現状を把握し、地域包括ケアシステムの重要性を論じる力が求められます。
    合格答案の書き方を一緒に学びましょう!

    なお、他の年度の小論文の解説などはこちらの記事にまとめてあります!

    https://note.com/goukalize/n/n9d0b74b16df0

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    テーマ解説:多死社会と看取りの場所

    背景と現状

    かつての日本では「自宅」で亡くなるのが一般的でしたが、医療の高度化とともに「病院」での死亡が急増し、現在は約7割が病院で亡くなっています。

    しかし、高齢化の進展により、病院のベッド数は限界を迎えています。
    そこで国は、住み慣れた地域や自宅で最期を迎える「在宅医療」や「在宅看取り」を推進しています。

    厚生労働省「福祉・介護・高齢者:地域包括ケアシステム」トップページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html

    医療者としての視点

    患者へのアンケートでは、「自宅で最期を迎えたい」と希望する人が6割ほどになっています

    日本財団「人生の最期の迎え方に関する全国調査」プレスリリースhttps://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210329-55543.html

    しかし、実際には家族の介護負担や急変時の不安から、病院を選ばざるを得ない現状があります。
    医師には、単に治療するだけでなく、患者の「どう生きたいか(どう死にたいか)」という価値観を尊重し、それを実現するための環境調整(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)を行う役割が求められます。

    今後の展望と重要論点

    これからは、「治す医療」から「支える医療」への転換が加速します。
    特に重要なのが、「ACP(人生会議)」 の普及です。元気なうちから、もしもの時の医療・ケアについて家族や医療者と話し合っておくプロセスです。
    また、独居高齢者の増加に伴い、家族がいなくても地域で看取れる仕組みづくりも急務となっています。

    令和7年版 高齢社会白書「3 家族と世帯」(65歳以上の一人暮らしが増加)
    https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/html/zenbun/s1_1_3.html

    頻出キーワード

    【2024年度】出題された問題

    問題の内容

    問題は体験記などから問題を推測し、妥当と考えられる設定とともに完全な問題として復元したものです。(実際の問題は公開されていません)

    次の資料(死亡場所の推移グラフ、自宅で最期を迎えたいと希望する人の割合、在宅医療を受けている患者数の推移)から、日本の終末期医療の現状と課題を読み取り、あなたの考えを600字以内で述べなさい。

    出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」資料(死亡場所の年次推移に関する統計)をもとに作成。

    出典:内閣府「平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査」(最期を迎えたい場所に関する設問)をもとに作成。

    出典:厚生労働省「患者調査」(在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移)をもとに作成。

    OK回答例

     終末期医療において最も重視されるべきは、「患者の自己決定権」と「QOL(生活の質)の維持」であると考える。
     かつてのような「延命至上主義」は、必ずしも患者の幸福につながらないことが明らかになっている。チューブに繋がれてただ心臓を動かすだけの状態を、本人が望んでいるとは限らないからだ。重要なのは、死を敗北として遠ざけることではなく、限られた時間をその人らしく、穏やかに過ごせるように支えることである。
     そのために不可欠なのが、在宅ケアの充実と、元気なうちから最期の過ごし方を話し合う「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の普及である。住み慣れた自宅で、家族に見守られながら最期を迎えたいという願いを叶えるためには、医療・介護・福祉が一体となった地域包括ケアシステムの構築が急務だ。患者本人の意思が確認できない場合に備え、家族や代理人を含めた話し合いを繰り返し行うプロセスこそが、納得のいく最期を迎えるための鍵となる。
     終末期医療の目的は、単なる延命ではなく、その人らしい最期を支えることにある。死をタブー視せず、人生の集大成として安らかに迎えられるよう、医療、介護、地域社会が一体となって支えるシステムの構築こそが、我々に課せられた責務である。患者の「生き方」と「逝き方」の両方に深く寄り添い、最期の瞬間まで尊厳を守り抜く医療の実践が、超高齢社会において強く求められている。

    回答のポイント

    • 「理想と現実のギャップ」の指摘
      「自宅で死にたい(理想)」のに「病院で死んでいる(現実)」という矛盾を鋭く指摘しています。このギャップこそが問題の本質であり、ここを出発点に論を展開することで説得力が増します。小論文では、単にデータを羅列するのではなく、データ間の矛盾や乖離に注目し、そこから「なぜ?」という問いを立てる力が評価されます。
    • 具体的な解決策(制度と文化)
      「地域包括ケアシステム(制度)」と「ACP(文化・プロセス)」の両面から解決策を提示しています。特にACP(人生会議)は近年の最重要キーワードであり、これに触れるだけで「勉強しているな」という印象を与えられます。医療制度の知識だけでなく、それを実際の患者ケアにどう落とし込むかという実践的な視点を持っていることが重要です。
    • 価値観の転換(QODの視点)
      結論部分で、「死=敗北」という従来の医療観から、「死=人生の集大成」というQOD(死の質)重視の視点への転換を訴えています。主観的な決意表明ではなく、超高齢社会における医療のあるべき姿を倫理的かつ社会的な視点で論じている点が高く評価されます。

    NG回答例

     資料を見ると、多くの人が自宅での最期を望んでいるが、実際には病院で亡くなる人が多い。これは、在宅医療の体制が整っていないことが原因だ。
     しかし、私は無理に在宅死を進めるべきではないと考える。自宅では急変時に十分な対応ができず、家族の介護負担も大きいからだ。医療のプロである医師や看護師が24時間いる病院の方が、患者にとっても家族にとっても安心安全であることは間違いない。
     したがって、国は在宅医療よりも、ホスピスや緩和ケア病棟をもっと増やして、誰もが病院で安らかに最期を迎えられるようにすべきだ。それが一番現実的な解決策だと思う。(288文字)

    NGのポイント

    • 「安全至上主義」の罠
      「病院の方が安心安全」という主張は一見正論ですが、患者の「家で過ごしたい」という自己決定権やQOL(生活の質) を軽視しています。医療は単なる延命や安全管理だけでなく、患者の価値観を尊重することが重要です。
    • 社会背景(多死社会)の無視
      「病棟を増やせばいい」というのは、高齢者が激増し、医療財源も人材も不足している日本の現状(多死社会)を無視した非現実的な提案です。限られた資源の中でどう支えるかという視点が欠けています。
    • 在宅医療への理解不足
      「在宅では対応できない」と決めつけていますが、訪問診療や訪問看護による緩和ケアが可能であることを理解していません。現代の医療システムに対する知識不足が露呈しています。

    まとめ

    終末期医療は、すべての人がいずれ直面する、避けて通れないテーマです。
    どこで・誰と・どのように最期を迎えたいのか――これは医療だけでなく、人生そのものの問いでもあります。

    日本は多死社会を迎え、病院だけに頼る医療には限界が見え始めています。
    だからこそ、地域包括ケアシステムや在宅医療、ACP(人生会議)といった仕組みを通じて、「治す医療」から「支える医療」へと発想を転換していくことが求められています。

    小論文では、「自宅で死にたい人が多いのに、現実は病院死が多数」というギャップをふまえ、
    患者の自己決定権・QOL/QOD・家族や地域の負担・医療資源の限界など、複数の視点からバランスよく論じることが重要です。

    「死」をタブー視せず、「その人らしい生き切り方」をどう支えるかという観点から、
    これからの終末期医療と地域医療の在り方を、自分の言葉で考えていきましょう。


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