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麻布大学学校推薦型選抜 小論文対策⑤ 2019を題材に

4 November, 2025

麻布大学獣医学部を目指す受験生の皆さん、こんにちは!

今回でこのシリーズも一旦の区切りとなります。最後に取り上げるのは、獣医師という職業の根幹に関わる、非常に哲学的で深い思考を要する問題です。

2019年度に出題されたのは、「動物の尊厳」という、まさしく獣医師がそのキャリアを通じて向き合い続けることになる重いテーマです。この記事を通して、生命倫理という難問に対し、自分自身の言葉で誠実に向き合う力をどう示せばよいのか、そのアプローチを学んでいきましょう。



2019年度 獣医学科 小論文問題


それでは、実際の入試問題です。


問 次の記事を読んで設問に答えなさい。

人間に命を絶たれることが前提となっている動物には大きく2種類ある。科学の研究に不可欠である実験動物と、肉などの食物となる家畜だ。人間として、同じ命を持つ彼らに何ができるだろうか。近年は「動物倫理」や「動物福祉」といった領域で議論が進んでいる。


「人間と動物を分ける理屈を見いだすのは難しい」。動物倫理を研究する京都大文学研究科の伊勢田哲治准教授(49)は指摘する。(中略)現代社会では人間の命はほかの動物より大事という前提が存在する。安全性が不透明な中で人間対象の実験はできない。伊勢田准教授は「現実的な対応として、実験動物の苦痛と使用数の削減、代替法の検討をした上で実験が認められるべきという動物福祉の考え方が広まった」と説明する。こうした理念は、2005年の改正で動物愛護法に盛り込まれた。(中略)


近年は、欧州を中心に家畜の快適な飼育環境を重視する動きが広まっている。国内でも家畜の福祉向上が模索されている。動物行動学が専門の岐阜大の二宮茂准教授(39)は畜産農家と協力して、適切な飼育環境の研究をしている。だが「動物の心の中身を科学的に分析するのは難しい」と率直に語る。(中略)二宮准教授は「科学的な知見に基づいて、適切な飼育環境を提案するのが仕事」と解説する。畜産農家も、以前から動物の飼育環境には気を配ってきた。科学的知見と組み合わせて、健康に育てて生産性を上げることにつなげたいという。(以下省略)


(2017年12月26日付け 京都新聞より一部修正して引用)



設問 私たちが生きていく上で、実験動物や家畜は利用せざるを得ない。彼らの尊厳を考える意味についてあなたの考えを800字以内で述べなさい。




問題のポイント解説


この問題は、単に「動物を大切にしよう」という話ではありません。「利用せざるを得ない」という厳しい現実を前提とした上で、**「なぜ、それでも彼らの尊厳を考えることに“意味”があるのか」**を問う、非常に深い倫理的な問いです。

  • ポイント1:「利用せざるを得ない」という前提を受け入れる まず大前提として、動物利用の是非を問う問題ではないことを理解しましょう。「動物実験は廃止すべきだ」というような、前提を覆す主張は問いから外れてしまいます。「利用する」という現実から目をそらさず、その上で思考を深める姿勢が求められています。
  • ポイント2:「尊厳を考える意味」を多角的に論じる なぜ、彼らの尊厳を考えることが、私たち人間にとって「意味のある」行為なのでしょうか?この「意味」を、複数の視点から探ることが高評価の鍵です。
    • 人間自身の「倫理性」のため:動物の尊厳を無視することは、私たち自身の人間性や道徳観を損なうことにならないか?
    • 科学や産業の「発展」のため:課題文にもヒントがあります。家畜の福祉向上は「生産性を上げることにつなげたい」という意図があり 、実験動物の福祉向上(3Rの理念 )は、科学的データの信頼性を高めることに繋がります。動物の尊厳を考えることが、結果的に人間の利益になるという視点です。
    • 社会の「成熟」のため:声なき存在にどう向き合うかは、その社会の成熟度を測るバロメーターと言えます。動物の尊厳を考えることは、より思慮深く、成熟した社会を築くことに繋がるのではないか。
  • ポイント3:課題文のキーワードを活用する 課題文には、「動物倫理」「動物福祉」 、「苦痛と使用数の削減、代替法(3R)」 、「快適な飼育環境」「生産性」 といった重要なキーワードが散りばめられています。これらを的確に使いながら自分の考えを述べることで、文章に説得力が生まれます。


それでは、これらのポイントを踏まえた答案例を見ていきましょう。


ダメな答案例(どこがダメか考えながら読んでみよう!)


実験動物や家畜が人間のために犠牲になっているのは、とても悲しいことだと思います。彼らにも命があり、尊厳があるのは当然です。私たちは彼らの命を奪って生きているのだから、感謝の気持ちを忘れてはいけません。彼らの尊厳を考える意味は、命の大切さを知るためです。動物の命も人間の命も同じように尊いものです。だから、むやみに苦しめるようなことは絶対にしてはいけません。私は獣医師になったら、動物たちがなるべく苦しまないように、優しい医療をしてあげたいです。動物の尊厳を守ることは、人間として当たり前の義務だと思います。

【ダメなポイント】

  • 問いに答えていない:「なぜ尊厳を考えることに意味があるのか」という問いに対し、「当たり前だ」「義務だ」と答えるだけで、その「意味」を具体的に説明できていません。
  • 感情論に終始:「悲しい」「命は大切」といった感情的な表現が中心で、論理的な考察が不足しています。
  • 課題文を無視:課題文にある「動物福祉」や「生産性」といった重要な視点が全く反映されておらず、文章を読まなくても書ける内容になっています。


良い答案例(多角的な視点と論理性に注目!)


我々の社会が実験動物や家畜の犠牲の上に成り立っているという事実は、重い倫理的問いを投げかける。この避けられない現実の中で、あえて彼らの尊厳を考えることの意味は、単に動物への配慮に留まらず、我々人間自身のあり方を問い直し、社会を発展させるために極めて重要だと考える。第一に、彼らの尊厳を考えることは、我々自身の人間性を保つための礎となる。もし我々が、利用する動物の苦痛や生に無頓着になったとすれば、それは生命そのものに対する感覚の麻痺に繋がるだろう。動物の尊厳を軽んじる行為は、回り回って人間社会における弱者への眼差しをも鈍らせる危険を孕む。彼らの尊厳を慮ることは、我々が守るべき倫理の最低ラインを確認する作業なのだ。第二に、彼らの尊厳、すなわち「動物福祉」への配慮は、科学や産業の持続的な発展に不可欠である。課題文が示唆するように、家畜の快適な飼育環境はストレスを軽減し、健康な発育を促し、結果として安全で質の高い食肉や畜産物の生産性向上に繋がる 。また、実験動物の分野においても、「3R」の原則 に基づき苦痛を削減することは、ストレス要因によるデータのブレをなくし、科学的実験の精度と信頼性を高める。彼らの尊厳を守ることは、人間の利益と決して矛盾するものではなく、むしろ合理的ですらある。

【良いポイント】

  • 問いへの明確な応答:「人間性の維持」「科学・産業の発展」「社会の成熟」という3つの視点から、「尊厳を考える意味」を明確に論じています。
  • 課題文の活用:「動物福祉」「生産性」「3R」といった課題文のキーワードを的確に引用・活用し、自らの主張の根拠としています 。
  • 論理的な構成:序論で問題提起し、本論で3つの意味を述べ、結論で獣医師としての自己の役割に結びつけるという、一貫性のある構成です。
  • 当事者意識:最終段落で、この難問に立ち向かうことが獣医師としての使命であるという強い当事者意識と覚悟が示されており、好印象を与えます。


まとめ


2019年度の問題は、獣医学を学ぶ上で避けては通れない、生命倫理の核心に迫るものでした。この問いに正解はありません。大切なのは、目を背けたくなるような難しい現実から逃げずに、自分自身の頭で考え、その思考のプロセスを誠実に、そして論理的に示すことです。

麻布大学が、技術や知識だけでなく、命に対する深い洞察力と倫理観を持った学生を求めていることの表れと言えるでしょう。

これまでの過去問解説が、皆さんの思考を深める一助となれば幸いです。頑張ってください!

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