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期待値と平均の違いとは?同じになるのはいつ?具体例と大学入試での使い方をやさしく解説

公開 更新

期待値は、確率分布から決まる平均です。この記事では、期待値と、実際に観測したデータの算術平均を比べます。どちらも「平均」と呼ばれることがあるので、何の平均かを区別することが大切です。

たとえばサイコロの目の期待値は、確率だけから 3.53.5 と決まります。一方、実際に10回投げた目の平均は、投げるたびに 3.93.9 や 3.23.2 のように変わります。

両者は無関係ではありません。試行の回数を増やすと、データの平均は期待値に近づきます(大数の法則)。 期待値は「無数に繰り返したときの平均の行き先」と考えると、違いと関係を一度に理解できます。

期待値と平均の違いを一覧表で比較

まず、違いを表で整理します。

比べる点

期待値

平均(標本平均)

何から決まるか

確率分布(理論)

実際のデータ(観測値)

いつ決まるか

試行する前に決まる

試行した後に計算する

値は変わるか

変わらない(1つに決まる)

データを取り直すと変わる

計算方法

値×確率を全部足す

データの合計÷データの個数

サイコロ1個の例

常に 3.53.5

10回投げた結果で 3.93.9 など

別の呼び方

理論値、分布の平均

実際値、実測値、標本平均

ここでいう「データの平均」は、観測した値の合計を個数で割ったものです。一方、期待値は確率を重みとして計算する、確率分布の平均です。

期待値とは?定義と公式

期待値の定義

確率変数とは、試行の結果によって値が決まる変数のことです。サイコロの出る目 XX は、11 から 66 のどれかに確率的に決まるので確率変数です。

確率変数 XX が値 x1,x2,…,xmx_1, x_2, \dots, x_m をとり、それぞれの確率が p1,p2,…,pmp_1, p_2, \dots, p_m であるとします。このとき、XX の期待値 E(X)E(X) は次の式で定めます。

E(X)=x1p1+x2p2+⋯+xmpm=∑i=1mxipiE(X) = x_1 p_1 + x_2 p_2 + \cdots + x_m p_m = \sum_{i=1}^{m} x_i p_i

ここで確率は p1+p2+⋯+pm=1p_1 + p_2 + \cdots + p_m = 1 を満たします。つまり期待値は、確率を重みにした「重み付き平均」です。

サイコロ1個の期待値

サイコロの目 XX の確率分布は次のとおりです。

XX

11

22

33

44

55

66

確率

16\frac{1}{6}

16\frac{1}{6}

16\frac{1}{6}

16\frac{1}{6}

16\frac{1}{6}

16\frac{1}{6}

E(X)=1⋅16+2⋅16+⋯+6⋅16=216=72=3.5E(X) = 1 \cdot \frac{1}{6} + 2 \cdot \frac{1}{6} + \cdots + 6 \cdot \frac{1}{6} = \frac{21}{6} = \frac{7}{2} = 3.5

この値は、サイコロを1回も投げなくても決まります。これが「理論から決まる」という意味です。

平均(標本平均)とは?定義と公式

データの平均の定義

実際に観測した nn 個のデータを a1,a2,…,ana_1, a_2, \dots, a_n とします。その平均 aˉ\bar{a} は次の式で計算します。

aˉ=a1+a2+⋯+ann=1n∑k=1nak\bar{a} = \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n} = \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} a_k

母集団から得られた標本のデータを平均したものを、統計では標本平均と呼びます。手元のデータをさらに一部だけ取り出すことが条件ではありません。

サイコロを10回投げた平均

サイコロを実際に10回投げ、次の目が出たとします(説明用の例です)。

3, 5, 1, 6, 6, 2, 4, 1, 5, 63,\ 5,\ 1,\ 6,\ 6,\ 2,\ 4,\ 1,\ 5,\ 6

合計は 3939 なので、平均は aˉ=3910=3.9\bar{a} = \frac{39}{10} = 3.9 です。

期待値 3.53.5 とは一致しません。もう一度10回投げれば、別の平均になります。平均はデータに依存し、期待値は依存しない。これが最も大事な違いです。

2つの式を並べて見る

2つの式は形が似ています。違いは「重み」の決まり方です。

式

重みの正体

期待値

∑xipi\sum x_i p_i

確率 pip_i(理論)

データの平均

∑xi⋅nin\sum x_i \cdot \frac{n_i}{n}

相対度数 nin\frac{n_i}{n}(実際)

データの平均は、値 xix_i が出た回数を nin_i とすると ∑xi⋅nin\sum x_i \cdot \frac{n_i}{n} と書き直せます。相対度数 nin\frac{n_i}{n} を確率 pip_i に置き換えたものが期待値です。

大数の法則:試行を増やすと平均は期待値に近づく

大数の法則とは

同じ試行を独立に nn 回繰り返し、結果の平均を Xˉn\bar{X}_n とします。期待値を μ=E(X)\mu = E(X) とすると、どんなに小さい正の数 ε\varepsilon をとっても次が成り立ちます。

lim⁡n→∞P(∣Xˉn−μ∣≥ε)=0\lim_{n \to \infty} P\left(\left|\bar{X}_n - \mu\right| \geq \varepsilon\right) = 0

言葉にすると「回数を増やすほど、平均が期待値から ε\varepsilon 以上ずれる確率は 00 に近づく」です。これを大数の法則といいます。

どれくらい近づくのか

サイコロの目の分散は V(X)=3512V(X) = \frac{35}{12} です。nn 回の平均 Xˉn\bar{X}_n の標準偏差は 3512n\sqrt{\frac{35}{12n}} になります。

投げる回数 nn

平均 Xˉn\bar{X}_n の標準偏差(概算)

1010

約 0.540.54

100100

約 0.170.17

1000010000

約 0.0170.017

回数を100倍にすると、ばらつきは 110\frac{1}{10} になります。10回の平均が 3.93.9 になるのは珍しくありませんが、1万回の平均が 3.93.9 になることはまずありません。

注意:「近づく」と「一致する」は別

大数の法則が保証するのは「近づく」ことです。有限回の平均が期待値にぴったり一致するとは限りません。たとえばサイコロを7回投げた平均は、合計を7で割った値です。合計は整数なので、平均が 3.53.5 ちょうどになることはありません。

期待値と平均が同じになるのはいつ?

「期待値と平均は同じ」と言われることがあります。これは、次の3つの場面が混ざっているためです。

ケース1:確率変数の「平均」という呼び方

数学Bの「統計的な推測」では、確率変数 XX の期待値 E(X)E(X) を「XX の平均」とも呼びます。この場合の平均は、データの平均ではなく確率分布の平均です。言葉が同じでも、中身は期待値そのものです。

ケース2:すべての値が同じ確率で起こるとき

取りうる値がすべて等確率なら、期待値は「取りうる値の単純平均」と一致します。

p1=p2=⋯=pm=1m のときE(X)=x1+x2+⋯+xmmp_1 = p_2 = \cdots = p_m = \frac{1}{m} \ \text{のとき} \quad E(X) = \frac{x_1 + x_2 + \cdots + x_m}{m}

サイコロの期待値 3.53.5 が 1+2+⋯+66\frac{1+2+\cdots+6}{6} と同じになるのはこのためです。確率が等しくない場合、単純平均と期待値が一致するとは限りません。 次のくじの例で確かめます。

ケース3:データ全体から1つを等確率で選ぶとき

クラス40人のテストの点数から、1人を無作為に選ぶとします。選ばれた人の点数 XX の期待値は、クラス全体の平均点(母平均)とちょうど一致します。各生徒が選ばれる確率が 140\frac{1}{40} で、E(X)=∑(点数)×140E(X) = \sum (\text{点数}) \times \frac{1}{40} がクラスの平均点の式そのものになるからです。

統計の言葉では「母集団から無作為に1つ取り出した値の期待値は、母平均に等しい」と言います。さらに、標本平均 Xˉ\bar{X} の期待値も母平均に等しくなります(E(Xˉ)=μE(\bar{X}) = \mu)。

同じにならないとき

場面

期待値と平均は同じか

確率変数の「平均」(呼び方の問題)

同じ(期待値そのもの)

すべての値が等確率

取りうる値の単純平均と同じ

データ全体から1つを等確率で選ぶ

データ全体の平均(母平均)と同じ

有限回の試行で得たデータの平均

一般には違う(回数を増やすと近づく)

確率が偏っているときの値の単純平均

違う

具体例で比べる:サイコロ・くじ・じゃんけん

くじの例:単純平均と期待値がずれる

100本のくじがあり、内容は次のとおりとします。

賞

賞金

本数

確率

1等

1000円

1本

1100\frac{1}{100}

2等

100円

10本

10100\frac{10}{100}

はずれ

0円

89本

89100\frac{89}{100}

1本引いたときの賞金 XX の期待値は次のとおりです。

E(X)=1000⋅1100+100⋅10100+0⋅89100=10+10+0=20 (円)E(X) = 1000 \cdot \frac{1}{100} + 100 \cdot \frac{10}{100} + 0 \cdot \frac{89}{100} = 10 + 10 + 0 = 20 \ (\text{円})

賞金の種類だけを単純平均すると 1000+100+03≒366.7\frac{1000 + 100 + 0}{3} \fallingdotseq 366.7 円になります。はずれが出やすいことを無視しているので、期待値 2020 円と大きくずれます。

このくじを1本 3030 円で買うなら、1本あたり平均で 30−20=1030 - 20 = 10 円の損が見込まれます。多くの人が繰り返し引くと、1本あたりの実際の平均賞金は 2020 円に近づきます。

じゃんけんの例:勝つ人数の期待値

3人が1回じゃんけんをします。各人はグー・チョキ・パーを等確率 13\frac{1}{3} で独立に出すとします。勝つ人数 XX の期待値を求めます。

手の出し方は全部で 33=273^3 = 27 通りです。

  • あいこ:3人とも同じ手(3通り)か、3人とも違う手(3!=63! = 6 通り)で、合計 99 通り。勝者は 00 人です。

  • 勝負がつく:使われた手が2種類のときで、27−9=1827 - 9 = 18 通りです。

    • 2種類の手の選び方は 33 通りです。

    • 3人への割り当ては、2種類とも使う 23−2=62^3 - 2 = 6 通りです。

    • 6通りのうち、勝つ手の人が1人のものが 33 通り、2人のものが 33 通りです。

よって確率分布は次のようになります。

勝つ人数 XX

00

11

22

場合の数

99

99

99

確率

13\frac{1}{3}

13\frac{1}{3}

13\frac{1}{3}

E(X)=0⋅13+1⋅13+2⋅13=1E(X) = 0 \cdot \frac{1}{3} + 1 \cdot \frac{1}{3} + 2 \cdot \frac{1}{3} = 1

勝つ人数の期待値は 11 人です。この問題は、後で紹介する線形性を使うと1行で解けます。

よくある誤解:期待値は「起こりやすい値」ではない

誤解1:期待値の値がいちばん出やすい

くじの例では、期待値は 2020 円でした。しかし実際に最も出やすいのは 00 円(確率 89100\frac{89}{100})です。2020 円が出ることは一度もありません。

サイコロでも、期待値 3.53.5 という目は存在しません。期待値は「1回で起こりやすい値」ではなく、「繰り返したときの1回あたりの平均の行き先」です。

誤解2:期待値・中央値・最頻値は同じ

代表値はほかにもあります。くじの例で比べると違いがはっきりします。

代表値

意味

くじの例

期待値

値×確率の和

2020 円

中央値

真ん中の順位の値

00 円

最頻値

最も出やすい値

00 円

正規分布では、期待値・中央値・最頻値は一致します。ただし、左右対称であるだけでは一致を保証できません。例えば、左右に二つの山がある分布では、最頻値が中央から離れることがあります。

誤解3:期待値どおりにならないのは計算ミス

10回の平均が期待値とずれても、計算の誤りではありません。期待値は1つに決まる理論値で、データの平均は毎回ばらつきます。ずれるのが普通です。

誤解4:期待値が大きいほうが必ず得

期待値が同じでも、ばらつきが違えば結果の出方は大きく違います。ばらつきの大きさは分散や標準偏差で測ります。期待値だけで損得を判断すると、失敗の危険を見落とします。

期待値の線形性とは?公式と証明

線形性の公式

期待値には次の性質があります。まとめて期待値の線形性と呼びます。a,ba, b は定数です。

E(aX+b)=aE(X)+bE(aX + b) = aE(X) + b
E(X+Y)=E(X)+E(Y)E(X + Y) = E(X) + E(Y)

2つ目は3つ以上でも成り立ちます。

E(X1+X2+⋯+Xn)=E(X1)+E(X2)+⋯+E(Xn)E(X_1 + X_2 + \cdots + X_n) = E(X_1) + E(X_2) + \cdots + E(X_n)

重要なのは、E(X+Y)=E(X)+E(Y)E(X+Y) = E(X) + E(Y) は XX と YY が独立でなくても成り立つことです。 独立性が十分条件となるのは、積の E(XY)=E(X)E(Y)E(XY) = E(X)E(Y) です。独立でなくてもこの等式が成立する場合はありますが、一般には保証されません。

証明1:E(aX+b)=aE(X)+bE(aX+b) = aE(X) + b

XX が値 xix_i を確率 pip_i でとるとき、aX+baX + b は値 axi+bax_i + b を確率 pip_i でとります。

E(aX+b)=∑i=1m(axi+b)pi=a∑i=1mxipi+b∑i=1mpi=aE(X)+bE(aX+b) = \sum_{i=1}^{m} (a x_i + b) p_i = a \sum_{i=1}^{m} x_i p_i + b \sum_{i=1}^{m} p_i = aE(X) + b

最後に ∑pi=1\sum p_i = 1 を使いました。

証明2:E(X+Y)=E(X)+E(Y)E(X+Y) = E(X) + E(Y)

XX が値 xix_i(i=1,…,mi = 1, \dots, m)、YY が値 yjy_j(j=1,…,lj = 1, \dots, l)をとるとします。同時確率を P(X=xi, Y=yj)=rijP(X = x_i,\ Y = y_j) = r_{ij} とおきます。

E(X+Y)=∑i=1m∑j=1l(xi+yj)rij=∑i=1mxi(∑j=1lrij)+∑j=1lyj(∑i=1mrij)E(X+Y) = \sum_{i=1}^{m} \sum_{j=1}^{l} (x_i + y_j) r_{ij} = \sum_{i=1}^{m} x_i \left(\sum_{j=1}^{l} r_{ij}\right) + \sum_{j=1}^{l} y_j \left(\sum_{i=1}^{m} r_{ij}\right)

ここで ∑jrij=P(X=xi)\sum_{j} r_{ij} = P(X = x_i)、∑irij=P(Y=yj)\sum_{i} r_{ij} = P(Y = y_j) です。よって右辺は E(X)+E(Y)E(X) + E(Y) になります。

証明のどこにも独立性を使っていません。これが「独立でなくても成り立つ」理由です。

簡単な確認:サイコロ2個の和

2個のサイコロの目の和 X1+X2X_1 + X_2 の期待値は、3636 通りを数えなくても求まります。

E(X1+X2)=E(X1)+E(X2)=72+72=7E(X_1 + X_2) = E(X_1) + E(X_2) = \frac{7}{2} + \frac{7}{2} = 7

nn 個なら 7n2\frac{7n}{2} です。

大学入試での使い方:線形性で複雑な期待値を分解する

線形性が入試で強いのは、確率分布を求めにくい量でも、期待値だけなら求められるからです。手順は次の3ステップです。

  1. 求めたい量 XX を、「起これば 11、起こらなければ 00」の変数の和に分ける。

  2. 各変数の期待値を求める。00 か 11 をとる変数の期待値は、「11 になる確率」に等しい。

  3. 線形性で足し合わせる。

00 か 11 をとる変数を指示変数(インジケーター)と呼びます。II が確率 pp で 11、確率 1−p1-p で 00 をとるとき、E(I)=1⋅p+0⋅(1−p)=pE(I) = 1 \cdot p + 0 \cdot (1-p) = p です。

線形性は数学Bで学ぶ性質です。答案で使うときは「和の期待値は期待値の和に等しい」と一言添えると、採点者に意図が伝わります。

例題1(基本):取り出した赤玉の個数

問題 赤玉3個、白玉2個が入った袋から、2個を同時に取り出す。取り出した赤玉の個数 XX の期待値を求めよ。

解答1(確率分布を求める) 取り出し方は (52)=10\binom{5}{2} = 10 通りです。

XX

00

11

22

場合の数

(22)=1\binom{2}{2} = 1

3×2=63 \times 2 = 6

(32)=3\binom{3}{2} = 3

確率

110\frac{1}{10}

610\frac{6}{10}

310\frac{3}{10}

E(X)=0⋅110+1⋅610+2⋅310=1210=65E(X) = 0 \cdot \frac{1}{10} + 1 \cdot \frac{6}{10} + 2 \cdot \frac{3}{10} = \frac{12}{10} = \frac{6}{5}

解答2(線形性) 2個を順に1個ずつ取り出すと考えます。kk 個目が赤なら 11、白なら 00 となる変数を IkI_k とすると、X=I1+I2X = I_1 + I_2 です。どちらの回でも赤である確率は 35\frac{3}{5} なので、

E(X)=E(I1)+E(I2)=35+35=65E(X) = E(I_1) + E(I_2) = \frac{3}{5} + \frac{3}{5} = \frac{6}{5}

I1I_1 と I2I_2 は独立ではありません。それでも線形性は使えます。

例題2(入試標準):出る目の種類の数

問題 サイコロを nn 回投げる。出た目の種類の数を YY とするとき、YY の期待値を求めよ。

方針 YY の確率分布を直接求めるのは大変です。目ごとに「出たかどうか」に分けます。

解答 k=1,2,…,6k = 1, 2, \dots, 6 に対して、目 kk が nn 回のうち少なくとも1回出れば 11、1回も出なければ 00 となる変数を JkJ_k とします。すると Y=J1+J2+⋯+J6Y = J_1 + J_2 + \cdots + J_6 です。

目 kk が1回も出ない確率は (56)n\left(\frac{5}{6}\right)^n なので、

E(Jk)=1−(56)nE(J_k) = 1 - \left(\frac{5}{6}\right)^n

線形性より、

E(Y)=∑k=16E(Jk)=6{1−(56)n}E(Y) = \sum_{k=1}^{6} E(J_k) = 6\left\{1 - \left(\frac{5}{6}\right)^n\right\}

検算 n=1n = 1 のとき 6×16=16 \times \frac{1}{6} = 1 で、目の種類は必ず1なので正しいです。n=2n = 2 のとき 6×1136=1166 \times \frac{11}{36} = \frac{11}{6} です。直接計算すると、同じ目(確率 16\frac{1}{6})なら 11 種類、違う目(確率 56\frac{5}{6})なら 22 種類で、16+106=116\frac{1}{6} + \frac{10}{6} = \frac{11}{6} となり一致します。

n→∞n \to \infty で E(Y)→6E(Y) \to 6 となることも、直感と合います。

例題3(入試発展):nn 人のじゃんけんで勝つ人数

問題 nn 人(n≥2n \geq 2)が1回じゃんけんをする。各人はグー・チョキ・パーを等確率で独立に出す。勝つ人数 WW の期待値を求めよ。

解答 kk 番目の人が勝てば 11、そうでなければ 00 となる変数を KkK_k とします。W=K1+K2+⋯+KnW = K_1 + K_2 + \cdots + K_n です。

1人目がグーを出したとします(チョキ・パーでも同様です)。1人目が勝つのは、残りの n−1n-1 人がグーかチョキを出し、少なくとも1人がチョキを出すときです。

  • 残り n−1n-1 人がグーかチョキ:2n−12^{n-1} 通り

  • そのうち全員グー(あいこ)を除く:2n−1−12^{n-1} - 1 通り

残り n−1n-1 人の手の出し方は全部で 3n−13^{n-1} 通りなので、

E(Kk)=P(k番目の人が勝つ)=2n−1−13n−1E(K_k) = P(k \text{番目の人が勝つ}) = \frac{2^{n-1} - 1}{3^{n-1}}

線形性より、

E(W)=n⋅2n−1−13n−1E(W) = n \cdot \frac{2^{n-1} - 1}{3^{n-1}}

検算

人数 nn

E(W)E(W)

22

2⋅13=232 \cdot \frac{1}{3} = \frac{2}{3}

33

3⋅39=13 \cdot \frac{3}{9} = 1

44

4⋅727=28274 \cdot \frac{7}{27} = \frac{28}{27}

55

5⋅1581=25275 \cdot \frac{15}{81} = \frac{25}{27}

n=2n = 2 のとき、勝負がつく確率は 23\frac{2}{3} で勝者は1人なので、期待値は 23\frac{2}{3} です。n=3n = 3 は、前の章で27通りを数えた結果の 11 と一致します。全通りを数えた方法と線形性の方法が同じ答えになることを確かめてください。

線形性を使うときの注意

  • 和の形に分解できるかをまず考えます。「個数」「回数」「種類の数」は分解しやすい量です。

  • 積には使えません。E(XY)=E(X)E(Y)E(XY) = E(X)E(Y) は、XX と YY が独立なら成り立ちます。独立でない場合には一般には成り立ちませんが、等式が成立する例もあります。

  • 分散には線形性がありません。V(aX+b)=a2V(X)V(aX + b) = a^2 V(X) で、bb は消えて aa は2乗になります。

よくある質問

Q. 期待値と平均値の違いを一言でいうと?

期待値は確率から決まる理論上の平均です。平均値は実際のデータから計算した値です。「理論値」と「実際値」の違いです。

Q. 期待値と平均が同じと言われるのはなぜ?

確率変数の期待値を「平均」とも呼ぶためです。また、すべての値が等確率のときや、データ全体から1つを等確率で選ぶときは、値そのものが一致します。有限回の試行で得たデータの平均は、一般には期待値と一致しません。

Q. 理論値と期待値の違いは?

期待値は理論値の一種です。確率分布をもとに計算した「1回あたりの平均の見込み」を期待値と呼びます。これに対し、実際に試して得た値が実際値(実測値)です。

Q. 期待値と実際の値がずれるのはおかしい?

おかしくありません。試行回数が少ないと、実際の平均は期待値から大きくずれることがあります。回数を増やすほど、ずれは小さくなる傾向があります(大数の法則)。

Q. 期待値の線形性は独立でなくても使える?

使えます。E(X+Y)=E(X)+E(Y)E(X+Y) = E(X) + E(Y) は、XX と YY が独立でなくても常に成り立ちます。独立性が十分条件となるのは E(XY)=E(X)E(Y)E(XY) = E(X)E(Y) です。

Q. 期待値は高校のどの科目で習う?

現行の学習指導要領(平成30年告示)では、期待値は数学A「場合の数と確率」で扱います。以前は数学Bの内容でした(文部科学省「平成30年改訂の高等学校学習指導要領に関するQ&A」)。確率変数の和の期待値や分散は、数学B「統計的な推測」で学びます。

まとめ

  • 期待値は確率分布から決まる理論上の値です。式は E(X)=∑xipiE(X) = \sum x_i p_i です。

  • 平均(標本平均)は実際のデータから計算する値です。式は aˉ=1n∑ak\bar{a} = \frac{1}{n}\sum a_k です。

  • 試行を増やすと、データの平均は期待値に近づきます(大数の法則)。

  • 両者が同じになるのは、確率変数の「平均」という呼び方の場合、等確率の場合、データ全体から1つを等確率で選ぶ場合です。

  • 期待値は「起こりやすい値」ではありません。くじの期待値 2020 円は、1回も出ない金額です。

  • 期待値の線形性 E(X+Y)=E(X)+E(Y)E(X+Y) = E(X) + E(Y) は独立でなくても成り立ちます。入試では、求めたい量を 00 と 11 の変数の和に分けると、複雑な期待値も短く求められます。

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