オンライン大学受験予備校ゴウカライズのロゴ
オンライン大学受験予備校ゴウカライズ
LINEで相談!

自治医科大学医学部 完全ガイド【2027年度】学費無料の仕組み・義務年限・入試・全寮制

公開 更新

自治医科大学(自治医大)医学部は、学費を大学が全額貸与し、卒業後に出身都道府県で一定期間働けば返還が免除される医学部です。その期間を「義務年限」といい、6年で卒業した場合は9年間です。都道府県を単位とする選抜が基本ですが、2027年度一般選抜の一部には複数県を一つのグループとする選抜があります。在学中の6年間は全寮制です。

この記事では、2027年度(令和9年度)の募集要項をもとに、学費無料の仕組み、義務年限の中身、都道府県別の入試の流れ、寮生活、卒業後のキャリアまでを1本にまとめました。「やめとけ」「後悔する」と言われる理由にも、公平に答えます。

結論:自治医科大学医学部の要点

項目 内容(出典・年度)
設立 1972年、全国の都道府県が共同で設立(2027年度募集要項)
募集人員 100名。臨時定員増23名(栃木県地域枠3名を含む)を申請中(2027年度募集要項)
選抜の単位 都道府県ごとに2名または3名(同上)
学費 6年間で計2,300万円を全員に貸与(学生納付金2,260万円+入学時学業準備費40万円)(同上)
返還免除 貸与期間の1.5倍の期間、出身都道府県の指定する公立病院等に勤務。うち半分はへき地等(同上)
義務年限 6年で卒業した場合は9年(大学公式サイト)
一般選抜 1次:各都道府県で学力(マークシート)+面接。2次:大学で学力(記述)+面接(同上)
共通テスト 一般選抜では使いません(2027年度募集要項・河合塾Kei-Net)
河合塾ボーダー 偏差値67.5(河合塾2027年度入試・一般選抜)
生活 6年間全寮制・全室個室。寮費は月8,500円(大学公式サイト)

出典は記事末尾にまとめています。数値はすべて2026年9月27日に確認しました。

自治医科大学とは:設立の目的

自治医科大学は、へき地などの医療を確保するために、全国の都道府県が共同で1972年(昭和47年)に設立した私立の医科大学です。所在地は栃木県下野市で、JR宇都宮線「自治医大」駅が最寄りです(2027年度募集要項)。

使命として掲げる言葉は「医療の谷間に灯をともす」です。ここでいう「医療の谷間」は、山間へき地や離島だけではありません。大学は、高齢化が進む都市部の医療不足なども含めて広く捉えています(大学公式サイト「1分で分かる医学部」)。

ふつうの医学部は、卒業後の進路を本人が自由に選びます。自治医大は、入学の時点で「卒業後にどこで働くか」がほぼ決まる点が根本的に違います。この仕組みを理解することが、受験を考える第一歩です。

学費が無料になる仕組み:修学資金の貸与と返還免除

「無料」ではなく「全額貸与+条件付きで返還免除」

「自治医大は学費無料」とよく言われます。正確には、入学者全員に学費相当額を「修学資金」として貸与し、条件を満たすと返還が免除される仕組みです(2027年度募集要項)。

貸与は入学手続きのときに「修学資金貸与契約書」を提出して結びます。保証人の連署が必要です。学費は現金でやり取りせず、書面上で貸与と納付が処理されます(同上)。

貸与される金額(2027年度)

費目 1年次 2〜6年次(各学年) 6年間合計
入学料 1,000,000円 - 1,000,000円
授業料 1,800,000円 1,800,000円 10,800,000円
実験実習費 500,000円 500,000円 3,000,000円
施設設備費 1,300,000円 1,300,000円 7,800,000円
学生納付金 計 4,600,000円 3,600,000円 22,600,000円
入学時学業準備費 400,000円 - 400,000円
合計 5,000,000円 3,600,000円 23,000,000円

出典:2027年度(令和9年度)自治医科大学医学部入学者募集要項

入学時学業準備費の40万円は、教科書などの購入を助けるためのお金です。これだけは入学後に本人の口座へ振り込まれます(同上)。

返還が免除される条件

返還免除の条件は、募集要項に次のように定められています。

  • 大学を卒業後、ただちに、出願した都道府県の知事の意見を聴いて指定される公立病院等に医師として勤務する
  • 勤務期間が、修学資金の貸与を受けた期間の2分の3(1.5倍)に達する
  • その勤務期間のうち2分の1は、知事が指定するへき地等の病院等で勤務する

6年間で卒業すれば、6年×1.5=9年です。これが「義務年限は9年」と言われる理由です。

条件を満たせなかった場合

条件を満たさなかった場合は、貸与金に所定の利率を掛けた額を加えて一括で返還します(2027年度募集要項)。栃木県と長崎県の大学制度案内は、年10%と説明しています。

一方、大学の公開案内と2027年度募集要項の表現は「所定の利率」です。本記事では県の案内による例として年10%を示し、全員の契約条件を確定したものとは扱いません。入学時の貸与契約書で、利率、計算の起算日、免除・猶予条件を必ず確認してください(2026年9月27日確認)。

途中で離れた場合、返還額は数千万円規模になります。一括返還をめぐって卒業生が訴訟を起こした事例も報じられています(弁護士JPニュース、2026年6月9日)。訴訟は係争中と報じられており、編集部は当否を判断しません。軽い気持ちで選ぶ制度ではない、という点は押さえておきましょう。

なぜ学費を貸与できるのか

自治医大は、都道府県が共同で設立した大学です。大学は、医学生の教育など大学部門の毎年度の運営費を、全都道府県からの負担金を中心に賄っていると説明しています。学生への修学資金貸与と、卒業後の地域医療への従事を組み合わせた制度です。

出典:自治医科大学「大学運営への支援」(2026年9月27日確認)。これは大学部門の運営を支える仕組みの説明で、附属病院を含む法人全体の収入が都道府県負担金だけで賄われるという意味ではありません。

生活費は自己負担。ただし奨学資金もある

貸与されるのは学費です。生活費は自分で負担します。大学は、寮費・食費・光熱費などで月5〜6万円程度と案内しています(大学公式「よくある質問」)。

生活費の支えとして、大学独自の奨学資金貸与制度があります。申請すれば無条件で月額5万円、家計や成績を考慮した選考で最高月額15万円まで、無利息で借りられます。こちらは返還が必要で、卒業後9年以内に分割で返します(大学公式「修学資金・奨学資金」)。大学は高等教育の修学支援新制度の対象機関でもあります(2027年度募集要項)。

義務年限とは:卒業後9年間の中身

義務年限の基本

義務年限とは、修学資金の返還免除を受けるために、出身都道府県で医師として働く期間のことです。正式な呼び方は大学の資料によって「一定期間」「地域医療従事期間」などと書かれます。6年で卒業した場合は9年間です。

勤務先は、出願した都道府県の計画に従い、知事が指定します。都道府県立・市町村立の病院、日赤や済生会の病院、診療所、保健所などが勤務先になります。義務年限中は自由に県外の勤務先を選べるわけではありませんが、承認を受けた県外研修等の例外があります。大学の卒後研修の案内では、卒後5年目以降に母校等で後期研修を行う仕組みも示されています。具体的な条件は出身都道府県へ確認してください。

9年間のモデルケース

大学が示す基本パターンは次のとおりです(大学公式「修学の流れと卒業後の勤務」)。

卒後年数 内容
1〜2年目 臨床研修(初期研修)。都道府県が指定する病院で行い、研修医マッチングは不要
3〜5年目 へき地等の病院・診療所に勤務
6〜7年目 後期研修。高度な専門性を身につける
8〜9年目 再び出身都道府県の地域医療に従事

大学は「基本パターンであり、都道府県ごとに異なる」と明記しています。実際の配置は、各都道府県のキャリア形成プログラムで決まります。キャリア形成プログラムとは、都道府県が医師不足地域での勤務と専門医取得の両立を図るために作る勤務計画です。募集要項には、全都道府県のプログラム問い合わせ先の一覧が載っています。

たとえば栃木県は、卒後6年目以降に少なくとも1年間はへき地診療所などで勤務することを基本とし、内科・小児科・外科・整形外科・産婦人科・麻酔科・救急科・総合診療科の8科を推奨しています(栃木県「自治医科大学(栃木県枠)について」)。志望する都道府県のプログラムを、出願前に必ず読んでください。

都道府県別の入試:2027年度の仕組み

出願できる都道府県は1つだけ

自治医大の入試は都道府県単位で選抜します。出願できるのは1つの都道府県だけで、その都道府県が卒業後の勤務先になります。複数の都道府県に出願すると、その年度の受験資格を失います(2027年度募集要項)。

選べる都道府県は、原則として次のいずれかです。

  • 出身高校の所在地
  • 本人の現住所地(2024年4月1日以前から同じ都道府県に住んでいる場合)
  • 父母等の現住所地(同上)

高卒認定の合格者は本人の現住所地、海外の高校の修了者は日本の現住所地(なければ本籍地)が出願地です。浪人生・再受験生・社会人も出願できます(同上)。

出願資格で必ず確認したい2点

出願資格には、次の2つが含まれています(2027年度募集要項)。

  • 合格したら入学すると確約できること。ただし他大学との併願は可能で、併願しても合否に影響しないと明記されています
  • 卒業後、出願した都道府県のキャリア形成プログラムに基づいて勤務すると確約できること

募集人員と都道府県ごとの定員

2027年度募集要項に記載された募集人員は100名です。すべての都道府県で2名または3名を選抜します。医学部の臨時定員増として、栃木県地域枠3名を含む23名の増員は、同要項の公表時点では申請中とされています。2026年度の合格者は、一般選抜115名、総合型選抜7名、学校推薦型選抜1名の計123名でした(大学公式「入試データ」)。

試験区分 実施する都道府県 募集人員(2027年度)
学校推薦型選抜 富山県 1名
総合型選抜 栃木県・山梨県・山口県・佐賀県 各2名
総合型選抜 富山県 1名
一般選抜 全都道府県 年内入試と合わせて各2名または3名

出典:2027年度(令和9年度)自治医科大学医学部入学者募集要項

栃木県は、地域枠が認可された場合、地域枠3名を含めて5名または6名になります(同上)。総合型選抜は2026年度に富山・山梨・山口・佐賀の4県で始まり、2027年度は栃木県が加わりました(大学公式「よくある質問」、2027年度募集要項)。

2027年度募集要項では、各県の2名・3名の割当ては医師不足等を考慮して決まり、毎年変わるとしています。県別の確定人数をこの要項から算出することはできません。また、23名の増員を認可済みの数字として加算していません。出願時の募集人員は大学が公表する最新の要項・変更通知で確認してください。

一般選抜の流れと日程(2027年度)

一般選抜は、1次試験を各都道府県で、2次試験を大学で行います。

段階 日程 会場 内容
出願 2027年1月4日〜1月20日(17:00必着) 出願する都道府県庁の入試担当課 書留速達郵便で提出
1次・学力 1月25日(月) 都道府県が指定する会場 数学・理科2科目・英語(マークシート)
1次・面接 1月26日(火) 同上 学力試験の及第者だけが受験
1次合格発表 1月29日(金)13:00 都道府県が指定する場所 -
2次試験 2月3日(水) 自治医科大学 数学・英語(記述)、集団面接・個人面接
2次合格発表 2月12日(金)17:00 大学ホームページ 補欠者も同時に発表
入学手続 2月25日(木)と3月12日(金)の両日 出願した都道府県庁 本人が出向く

出典:2027年度(令和9年度)自治医科大学医学部入学者募集要項

入学検定料は20,000円です(同上)。1次の学力試験の及第者は、翌朝9時までに発表されます。面接に進めるのは及第者だけです。

試験科目と配点(一般選抜)

段階 教科 形式 配点 時間
1次 数学(数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B〈数列〉・C〈ベクトル、平面上の曲線と複素数平面〉) マークシート 25点 80分
1次 理科(物理・化学・生物から2科目) マークシート 50点(1科目25点) 80分
1次 英語 マークシート 25点 60分
1次 面接 個人面接 - -
2次 数学 記述 12.5点 30分
2次 英語 記述 12.5点 30分
2次 面接 集団面接(約20分)・個人面接(約10〜15分) - -

出典:2027年度(令和9年度)自治医科大学医学部入学者募集要項

配点から分かるとおり、1次の学力試験(100点)の比重が大きく、2次の学力試験は計25点です。2次は面接の結果と調査書などを合わせて総合的に判断します。面接の配点は公表されていません。

学校推薦型選抜・総合型選抜(年内入試)

年内入試は、書類選考のあと、大学で基礎学力検査(数学・英語の記述式、各100点・各60分)と個人面接を行います(2027年度募集要項)。

  • 出願要件:調査書の全体の学習成績の状況(評定平均)が4.0以上
  • 学校推薦型選抜:2026年3月〜2027年3月に卒業(見込み)の人。1校から1名
  • 総合型選抜:卒業年の制限はありません
  • 出願期間:総合型は2026年10月14日〜20日、学校推薦型は11月1日〜7日
  • 試験日:11月18日(水)。合格発表:12月1日(火)

推薦型と総合型は、どちらか一方にしか出願できません。年内入試の結果を受けて一般選抜に出る場合は、同じ都道府県からのみ出願できます(同上)。

共通テストは使うのか

一般選抜では大学入学共通テストを使いません。 河合塾Kei-Netの2027年度ボーダーでも、医学部の共通テスト得点率は設定されていません。自治医大は独自試験だけで合否が決まります。一般選抜の2次試験は2月3日で、2月12日に合格発表があります。

偏差値と倍率

河合塾の2027年度入試のボーダー偏差値は、医学部 一般選抜で67.5です(河合塾Kei-Net)。ボーダーとは、合格の可能性が50%になると河合塾が予想するラインです。

一般選抜の志願者・受験者・合格者は次のとおりです(大学公式「入試データ」)。

年度 志願者 受験者 合格者 実質倍率(受験者÷合格者)
2026年度 1,799名 1,731名 115名 約15.1倍
2025年度 1,903名 1,818名 123名 約14.8倍
2024年度 2,026名 1,944名 123名 約15.8倍

実質倍率は編集部が大学公表値から計算しました。

都道府県別の志願者数(2026年度)

2027年度は、一般選抜のみを行う都道府県では2名または3名を選抜します。一方、学校推薦型選抜・総合型選抜を実施した都道府県の一般選抜は、それらの都道府県を一つのグループとして、成績等を総合的に判断して選抜します。合格者数は医師不足等の状況を考慮して決まり、毎年変動します(2027年度募集要項・2ページ)。

参考として、2026年度の都道府県別志願者数(全選抜の合計)を示します。2027年度一般選抜の競争相手の数を、そのまま表すものではありません(大学公式「入試データ」の地図から編集部が転記)。

地域 都道府県(志願者数)
北海道・東北 北海道30、青森29、岩手20、宮城39、秋田23、山形23、福島31
関東 茨城50、栃木100、群馬64、埼玉90、千葉51、東京74、神奈川53
中部 新潟69、富山20、石川25、福井44、山梨38、長野64、岐阜35、静岡35、愛知35
近畿 三重45、滋賀36、京都32、大阪45、兵庫43、奈良27、和歌山34
中国・四国 鳥取21、島根12、岡山29、広島38、山口33、徳島32、香川40、愛媛44、高知25
九州・沖縄 福岡41、佐賀33、長崎30、熊本29、大分32、宮崎38、鹿児島40、沖縄35

合計は1,856名で、一般選抜1,799名・総合型選抜55名・学校推薦型選抜2名の合計と一致します。

志願者数だけを見ると、都道府県によって差があります。ただし定員が2名か3名かは公表されていないため、都道府県別の倍率は計算できません。また、出願地は住所や出身高校で決まるので、倍率が低い県を自由に選ぶことはできません。

面接で見られる点

自治医大は、1次・2次の両方で面接があります。2次では集団面接と個人面接を、都道府県単位で行います。アドミッション・ポリシーには、地域医療に進んで取り組む気概、コミュニケーション能力、高い倫理観などが挙げられています(2027年度募集要項)。

このため、面接では次のような点を具体的に話せる準備が必要だと考えられます。

  • なぜ一般の医学部ではなく自治医大なのか
  • 出願する都道府県の医療の課題を、どう理解しているか
  • 9年間の義務年限と、へき地勤務をどう受け止めているか
  • 義務年限のあと、どんな医師になりたいか

「学費がかからないから」だけが志望理由だと、面接官には伝わってしまうはずです。志望する都道府県のキャリア形成プログラムや地域医療計画を読み、自分の言葉で語れるようにしておきましょう。

学力試験の対策

1次は、数学・理科・英語をマークシートで幅広く問います。医学部の中では標準〜やや難レベルの問題を、時間内に正確に解く力が求められます。大学は過去3年分の入試問題と解答を公開しています(大学公式「入試データ」)。まずは過去問で時間配分を確かめるのが近道です。

2次の記述は各30分と短時間です。配点は小さいものの、1次合格者どうしの差がつきやすい部分です。記述の答案を短時間でまとめる練習をしておくと安心です。

全寮制の生活

6年間、キャンパス内の寮で暮らす

医学部生は6年間、キャンパス内の学生寮で生活します(大学公式「よくある質問」)。大学は、共同生活を通じて規律・責任感・協調性・自律の精神を養うことを全寮制の理由に挙げています。病気などやむを得ない理由がある場合は、所定の手続きを経て退寮が認められることがあります(同上)。

寮の設備と費用

項目 内容
建物 2009年完成。2020年に増築棟完成。男子棟・女子棟に分かれ、入口はオートロック
居室 全室個室・約19.5㎡(バルコニー含む)。机・椅子・ベッド・クローゼット・エアコン・IHミニキッチン・洋式トイレ付き
風呂 個室にはなし。大浴場(16:00〜23:00)とシャワー室を共用
インターネット 大学のLANを各個室で無料で利用可能
寮費 月8,500円(部屋代4,300円・共益費4,200円)。電気代等は実費
洗濯 洗濯機・乾燥機が月600円で使い放題
学習 1〜5年生は予約制の自習室。6年生は国家試験用の専用勉強室(5〜6名で1室)
その他 大ラウンジ、和室、音楽室。管理人が交代で終日勤務し、女子棟には女性の管理人

出典:大学公式サイト「学生寮紹介」「よくある質問」「修学の流れと卒業後の勤務」

寮の和室は、県人会の集まりにも使われています(大学公式「学生寮紹介」)。同じ都道府県出身の先輩・後輩が縦につながるのは、都道府県単位で入学する自治医大ならではです。卒業後に同じ県で働く仲間になるため、在学中から人間関係が長く続きます。

寮生活の向き不向き

個室があるため、「プライバシーがまったくない」という生活ではありません。一方で、6年間同じ場所で同級生と暮らすため、人間関係の距離が近くなります。一人の時間を強く求める人には、負担に感じる場面もあるでしょう。オープンキャンパスや大学公式サイトの360°カメラで、事前に雰囲気を確かめるのがおすすめです。

卒業後の勤務と専門医取得・キャリアの実際

国家試験の合格率

大学によると、1978年〜2026年の49年間で、医師国家試験の合格率が全国トップになったのは23回、合格率100%は11回です。2026年は合格率100%で全国1位でした(大学公式「1分で分かる医学部」)。6年生の専用勉強室など、寮と一体になった学習環境が特徴です。

義務年限中に専門医は取れるのか

「自治医大だと専門医が取れない」という声があります。大学の説明は次のとおりです(大学公式「卒業生の専門医取得について」)。

  • 2018年度に始まった新専門医制度は、初期研修のあと、原則3年間かけて基本19領域の専門医を目指す仕組み
  • 大学が各方面に協力を求めた結果、すべての都道府県で、総合診療専門医をはじめ、義務年限中に何らかの専門医資格を取得できる見通しが立っている
  • 地域医療に従事する専攻医は、プログラム制ではなくカリキュラム制(単位制)を選べる
  • 内科専門医のモデルでは、卒後8年目で受験が可能(最短6年目)

つまり「取れない」は言い過ぎです。ただし、希望する診療科・時期で取れるかは都道府県によって差があります。専門医を取るまでの期間が、一般の医学部卒業生より長くなる場合もあります。外科・小児科など分野ごとの案内も大学が出しているので、志望科が決まっている人は確認しておきましょう。

卒業生はどこで働いているか

2024年7月1日時点で、卒業生4,978名のうち、病院勤務が2,412名、診療所勤務が523名、大学が435名、行政が113名、開業が538名などです(大学概要2025-2026)。開学以来、5,100名を超える卒業生が医師になっています(同上)。

義務年限を終えた後の進路は、出身都道府県に残る、行政医として医療政策に関わる、大学病院で研究する、開業する、留学するなど多様です(大学公式「1分で分かる医学部」)。義務年限後は、出身以外の都道府県で働くことも可能です(大学公式「よくある質問」)。

「やめとけ」「後悔」と言われる理由への公平な回答

インターネットでは「自治医科大学はやめとけ」という声も見かけます。よく挙がる理由を、事実と照らして整理します。

よく言われる理由 事実 編集部の見方
9年間、勤務先を選べない 知事の指定する病院等で勤務。県外での研修等には承認や条件がある 事実です。勤務地・時期の自由度は一般の医学部より明確に低いです
へき地勤務がある 義務年限の半分はへき地等の病院等 事実です。ただし大学・都道府県の研修支援もあります
途中でやめると数千万円 貸与金に所定の利率を加えて一括返還 事実です。入学前に家族と十分に話し合うべき点です
専門医が取れない 全都道府県で義務年限中に何らかの専門医を取れる見通し(大学公式) 「取れない」は誤りです。診療科・時期の選択肢が狭い場合はあります
全寮制がきつい 6年間全寮制。ただし全室個室 人によります。共同生活を楽しめるかがポイントです
研修先を選べない 初期研修は都道府県が指定。マッチング不要 就職活動が不要という利点の裏返しでもあります

後悔しやすいのはどんなケースか

後悔の多くは、「学費がかからない」ことだけを理由に選んだ場合に起こりやすいと考えられます。入学時には18歳前後でも、義務年限が終わるのは30代前半です。その間に結婚・出産・家族の介護などの生活の変化が起きることもあります。大学は女性医師への子育て支援の情報提供も行っていますが、勤務地の制約があることは変わりません。

逆に、地域医療に関心があり、総合的に診られる医師になりたい人にとっては、若いうちから裁量の大きい現場を経験できる環境です。「やめとけ」かどうかは、制度の中身と自分の希望が合うかどうかで決まります。

地域枠との違い(比較表)

自治医大は「地域枠の一種」と誤解されがちですが、仕組みは別物です。主な違いだけを示します。

項目 自治医科大学 一般的な地域枠
大学 自治医科大学のみ 各地の国公立・私立医学部
選抜 都道府県ごとに2〜3名 大学ごとに設定された枠
学費の支援 学費全額を大学が貸与 都道府県等の修学資金(ない枠もある)
勤務期間 貸与期間の1.5倍(一般に9年) 都道府県・枠ごとに異なる
生活 6年間全寮制 大学による

地域枠の条件は、都道府県や大学によって大きく異なります。詳しくは、志望する都道府県の医師確保の担当課の案内を確認してください。

自治医科大学に向いている人

次のような人は、自治医大の制度と相性が良いと考えられます。

  • 出身地・地元の医療に貢献したい気持ちがはっきりしている
  • 特定の臓器だけでなく、患者を幅広く診る医師に魅力を感じる
  • 20代のうちから、へき地などで責任ある立場を経験したい
  • 共同生活や、先輩・後輩との密な関係を楽しめる
  • 9年間のキャリアの制約を、家族を含めて納得できている

反対に、都市部の大病院で特定の専門分野を早く極めたい人や、勤務地を自由に選びたい人は、一般の医学部の方が合っている可能性が高いです。

よくある質問

自治医科大学は本当に学費無料ですか?

学費は全額が「修学資金」として貸与されます。卒業後、出身都道府県の指定する病院等で貸与期間の1.5倍(一般に9年)勤務すると、返還が免除されます。条件を満たさないと、利息を加えて一括返還が必要です。生活費(月5〜6万円程度)は自己負担です。

義務年限は何年ですか? 留年したらどうなりますか?

返還免除に必要な勤務期間は、大学の公開案内では貸与を受けた期間の1.5倍です。6年間貸与を受けた場合が9年間です。在学年数そのものと貸与期間を同じとみなして計算しないでください。

大学の制度案内は、留年時の追加貸与・停止や期間の数え方までは示していません。そのため、この記事の2,300万円・9年間という説明は6年間で卒業し6年間貸与を受ける標準例に限ります。留年・休学時の扱いは、入学時の修学資金貸与規程と契約書を大学に確認してください。

自治医科大学に地域枠はありますか?

自治医大の入試そのものが都道府県ごとの選抜です。そのうえで、栃木県は通常の定員とは別に「栃木県地域枠」3名を設けています。2027年度募集要項の公表時点では、この地域枠を含む臨時定員増は申請中と記載されています。出願時には認可後の募集内容を確認してください。

寮には必ず入らなければいけませんか?

原則として全員が入寮します。病気などやむを得ない理由がある場合、所定の手続きを経て医学部長が退寮を許可することがあります(大学公式「よくある質問」)。

浪人生や社会人は不利ですか?

大学は「その様なことはありません」と回答しています(大学公式「よくある質問」)。出願資格にも、他大学の在籍者・卒業者や社会経験のある人が含まれています。

他の医学部と併願できますか?

できます。募集要項に「併願していても合否判定に影響はありません」と明記されています。ただし、合格したら入学することを確約する必要があります。

共通テストは必要ですか?

一般選抜では使いません。1次・2次とも大学独自の試験です。

出願する都道府県は選べますか?

出身高校の所在地、本人の現住所地、父母等の現住所地のいずれかから選びます。現住所地を使う場合は、2024年4月1日以前から同じ都道府県に住んでいることが条件です。出願できるのは1つだけです。

まとめ

  • 自治医大は、全国の都道府県が共同で設立した、地域医療を担う医師を育てる大学です
  • 学費2,300万円は全額貸与され、出身都道府県で貸与期間の1.5倍(一般に9年)勤務すると返還が免除されます
  • 2027年度の入試は都道府県ごとに2〜3名を選抜します。一般選抜は1次(各都道府県)と2次(大学)で、共通テストは使いません
  • 河合塾の2027年度ボーダー偏差値は67.5、一般選抜の実質倍率は約15倍です
  • 6年間全寮制ですが、全室個室で寮費は月8,500円です
  • 義務年限中にも専門医を目指せますが、選択肢は都道府県のキャリア形成プログラムで変わります

自治医大を目指すかどうかは、学費の条件だけでなく、9年間の働き方を自分が納得できるかで決めてください。

医学部受験の相談はゴウカライズへ

ゴウカライズは完全オンラインの予備校です。医学部専門のMEDICALコースで、自治医大を含む医学部受験をサポートしています。公式LINEでは、学習や受験の無料相談を受け付けています。コースの詳細はMEDICALコースの紹介ページをご覧ください。

出典(2026年9月27日確認)

志望校対策はオンラインで始められる。無料受験相談。今すぐLINEで相談!

受験の記事をもっと見る →

問題を探す

または