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【期待値マスター講座19】袋のボール問題で 裏技"指示関数"の威力を実感せよ!
この記事では、袋から取り出した玉の中で「異色のペア」が何組できるかの期待値を扱います。
個別の玉ではなく、 ペアという組合せ的な対象 に指示関数を割り当てる、新しい使い方の最初の例です。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
何が新しいか
前回までは、 $${n}$$ 個の対象(カードや玉)それぞれに指示関数 $${I_k}$$ を割り当てて、 $${\sum I_k}$$ で「条件を満たす個数」を表していました。
今回は、 ペア $${(i, j)}$$ それぞれに指示関数を割り当てます。ペアの個数は $${rw}$$ のように積で増えますが、線形性は数が増えても同じように使えます。むしろ、 「組合せの個数の期待値」を扱う王道のパターン として、入試で頻出します。
例題:色のペアの個数
赤玉 $${r}$$ 個と白玉 $${w}$$ 個が入った袋から、無作為に $${m}$$ 個を取り出す( $${m\ge 2}$$ )。取り出した $${m}$$ 個の中で「異色のペア(赤と白の組)」の総数を $${T}$$ とする。 $${E(T)}$$ を求めよ。
「異色のペア」とは、取り出した玉の中に赤玉 $${i}$$ と白玉 $${j}$$ が両方あるとき、その $${(i, j)}$$ をひとつのペアとして数えるという意味です。
赤玉 $${i\in{1, \ldots, r}}$$ と白玉 $${j\in{1, \ldots, w}}$$ について
$$
J_{i, j} = \begin{cases} 1 & (\text{赤} i \text{ と白} j \text{ がともに取り出された}) \\ 0 & (\text{それ以外}) \end{cases}
$$
とおきます。 $${T}$$ は、赤 $${i}$$ と白 $${j}$$ がともに取り出されたペアの総数なので
$$
T = \sum_{i=1}^{r}\sum_{j=1}^{w} J_{i, j}.
$$
赤 $${r}$$ 個と白 $${w}$$ 個のペアの組合せは $${rw}$$ 個あります。
各ペアの確率を出す
$${P(J_{i,j} = 1)}$$ は、「特定の2玉(赤 $${i}$$ と白 $${j}$$ )が両方とも取り出される確率」です。
$${r + w}$$ 個から $${m}$$ 個を選ぶ全選び方は $${\binom{r+w}{m}}$$。赤 $${i}$$ と白 $${j}$$ の2玉を含む選び方は、残りの $${r+w-2}$$ 個から $${m-2}$$ 個を選ぶので $${\binom{r+w-2}{m-2}}$$。したがって
$$
P(J_{i,j} = 1) = \frac{\binom{r+w-2}{m-2}}{\binom{r+w}{m}}.
$$
この比は変形すると
$$
\frac{\binom{r+w-2}{m-2}}{\binom{r+w}{m}} = \frac{m(m-1)}{(r+w)(r+w-1)}
$$
になります。 $${m}$$ 個の中に特定の2個が入る確率、と読めば理解できます。 個別の玉が選ばれる確率が $${\frac{m}{r+w}}$$ だったのに対して、特定のペアが両方選ばれる確率は $${\frac{m(m-1)}{(r+w)(r+w-1)}}$$ 。1つ目が選ばれた条件下で2つ目が選ばれる確率を掛けた形になっています。
線形性で和を取る
線形性から
$$
E(T) = \sum_{i, j} E(J_{i,j}) = rw\cdot \frac{m(m-1)}{(r+w)(r+w-1)}.
$$
答えは
$$
E(T) = \frac{rwm(m-1)}{(r+w)(r+w-1)}.
$$
ペアの数え方
最終結果の構造を見ておきます。
- $${rw}$$ :考えうるペアの総数(赤と白の組合せの総数)
- $${\frac{m(m-1)}{(r+w)(r+w-1)}}$$ :特定のペアが両方取り出される確率
「ペアの総数 × そのペアが成立する確率」という、 個別の対象を「ペア」に置き換えただけの構造 になっています。前回の単色版が「個別の玉 × 個別の選ばれる確率」だったのと同じ枠組みです。
$${J_{i, j}}$$ たちは互いに独立ではありません。同じ赤玉 $${i}$$ を共有するペア $${(i, 1), (i, 2), \ldots}$$ は、 $${i}$$ が選ばれるかどうかで連動します。それでも線形性は使えるので、計算は通ります。
直接の確認(小さな例)
$${r = w = 2, m = 2}$$(赤2白2から2個取り出す)で確認します。
公式に入れて
$$
E(T) = \frac{2\cdot 2\cdot 2\cdot 1}{4\cdot 3} = \frac{8}{12} = \frac{2}{3}.
$$
直接見ます。2個の取り出し方は $${\binom{4}{2} = 6}$$ 通り、それぞれ確率 $${\frac{1}{6}}$$。
- 赤2個(赤1赤2):異色ペア0組
- 白2個(白1白2):異色ペア0組
- 赤1白1のいずれか:異色ペア1組
- 赤1白2、赤2白1、赤1白2、赤2白2(番号を付けて区別)の4通り
正確に書くと、4個の玉(赤1赤2白1白2)から2個を取る $${\binom{4}{2}=6}$$ 通りは
- $${{赤1,赤2}}$$:$${T=0}$$
- $${{白1,白2}}$$:$${T=0}$$
- $${{赤1,白1}}$$:$${T=1}$$
- $${{赤1,白2}}$$:$${T=1}$$
- $${{赤2,白1}}$$:$${T=1}$$
- $${{赤2,白2}}$$:$${T=1}$$
定義通り
$$
E(T) = \frac{0 + 0 + 1 + 1 + 1 + 1}{6} = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}.
$$
公式と一致しました。
練習問題
赤玉3個、白玉4個の入った袋から、無作為に3個を取り出す。取り出した3個の中で「異色のペアの組」の個数 $${T}$$ の期待値を求めよ。
公式に $${r = 3, w = 4, m = 3}$$ を入れて
$$
E(T) = \frac{3\cdot 4\cdot 3\cdot 2}{7\cdot 6} = \frac{72}{42} = \frac{12}{7}.
$$
直観的な確認として、3個取り出して赤と白が混ざる場合の組合せを思い浮かべると、赤1個白2個なら異色ペアは2組、赤2個白1個なら2組、3個とも同色なら0組。それらの確率で重みづけすると平均 $${\frac{12}{7}\approx 1.71}$$ 組というのは、なかなか自然な値です。
第III部のまとめ
第III部では線形性の応用として、典型問題を5本扱いました。
- くじ引きの公平性:「全体の和が確定値 $${r}$$ で、対称性で全 $${p_k}$$ が等しい」から $${p_k = \frac{r}{n}}$$
- 復元抽出と非復元抽出:和の期待値はどちらも $${\frac{m(n+1)}{2}}$$、線形性が独立性に依存しないことが実感できる
- 袋の中のボール(基本):個別の玉に指示関数を割り当て、 $${\frac{rm}{r+w}}$$
- 袋の中のボール(応用):ペアに指示関数を割り当て、 $${\frac{rwm(m-1)}{(r+w)(r+w-1)}}$$
共通している流れは「数えたい量を $${0/1}$$ の和に分解する → 各部品の確率を出す → 線形性で和を取る」の3段階です。これが第IV部「指示関数の基本」で本格的に扱うテーマの前哨戦になります。
次に読む記事
次回からは第IV部に入ります。これまで何度も使ってきた指示関数を、いったん腰を据えて定義し、性質を整理します。「種類数」や「個数」を $${0/1}$$ の和に分解するという見方を、定義から積み上げていきます。
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