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【期待値マスター講座18】「袋のボール問題」で超幾何分布の基礎を理解!

    ゴウカライズ編集部
    1 June, 2026

    この記事では、入試の確率で頻出する「袋の中のボール問題」を線形性で扱います。

    赤玉と白玉が混ざった袋から ${m}$ 個を取り出したときの赤玉の個数の期待値を、超幾何分布の形を経由せずに一発で出します。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    なぜ典型題なのか

    赤玉と白玉が入った袋から複数個を取り出して、特定の色の個数を考える──このパターンは大学入試で繰り返し出ます。

    確率分布を直接書くと 超幾何分布 という重い式が登場しますが、期待値だけが欲しいなら、指示関数で分解するほうがはるかに楽です。
    (指示関数については19以降の記事や、テキストで詳しく解説します)

    仕組みを完全に理解しておくと、玉の色が増えても、似た設定の類題が出ても、機械的に解けるようになります。

    例題:2色のボールから取り出す個数

    赤玉 $${r}$$ 個と白玉 $${w}$$ 個が入った袋から、同時に $${m}$$ 個を無作為に取り出す( $${1\le m\le r+w}$$ )。取り出された玉の中の赤玉の個数を $${R}$$ とする。 $${E(R)}$$ を求めよ。

    赤玉に $${1, 2, \ldots, r}$$ と番号をつけて区別します。 $${i\in{1, \ldots, r}}$$ について

    $$
    I_i = \begin{cases} 1 & (i \text{ 番の赤玉が取り出された}) \\ 0 & (\text{それ以外}) \end{cases}
    $$

    とおきます。 $${R}$$ は「取り出された赤玉の個数」なので

    $$
    R = \sum_{i=1}^{r} I_i.
    $$

    ここまでは前回の非復元抽出と同じ流れです。

    各指示関数の期待値

    $${i}$$ 番の赤玉が取り出される確率は、前回確認した「特定の1個が取り出される確率」と同じで

    $$
    P(I_i = 1) = \frac{m}{r + w}.
    $$

    全 $${r+w}$$ 個から $${m}$$ 個を取り出すとき、特定の1個が選ばれる確率です。赤か白かには依らず、 個別の玉から見れば「自分が $${m}$$ 個の中に入る確率」 はすべて $${\frac{m}{r+w}}$$ になります。

    したがって

    $$
    E(R) = \sum_{i=1}^{r} E(I_i) = \sum_{i=1}^{r} \frac{m}{r+w} = \frac{rm}{r+w}.
    $$

    答えは $${E(R) = \frac{rm}{r+w}}$$。

    直観的な意味

    $${E(R) = \frac{rm}{r+w}}$$ は次のように読めます。

    $$
    E(R) = m\cdot \frac{r}{r+w}.
    $$

    つまり「取り出した個数 $${m}$$ × 全体の中の赤の割合 $${\frac{r}{r+w}}$$」です。 全体に占める赤の割合が、取り出した $${m}$$ 個の中にもそのまま反映される 、というのが直観的な意味になります。

    これは「割合は標本の中でも保たれる」という、統計の素朴な感覚と一致します。実際には個別の試行では割合がずれることもありますが、 期待値で見ればちょうど割合通り になる、というのが線形性の結論です。

    超幾何分布を経由する正攻法

    参考までに、 $${R}$$ の確率分布を直接書くとどうなるかも見ておきます。

    $${R = k}$$ となるのは「取り出した $${m}$$ 個の中に赤が $${k}$$ 個、白が $${m-k}$$ 個」のときで、組合せで数えると

    $$
    P(R = k) = \frac{\binom{r}{k}\binom{w}{m-k}}{\binom{r+w}{m}}.
    $$

    これは超幾何分布の確率関数です。期待値を直接計算すると

    $$
    E(R) = \sum_{k} k\cdot \frac{\binom{r}{k}\binom{w}{m-k}}{\binom{r+w}{m}}
    $$

    となり、これを綺麗に変形するには二項係数の恒等式が必要になります。最終的に $${\frac{rm}{r+w}}$$ に到達しますが、 指示関数を使った今回の議論は2行で同じ答えを出します

    期待値だけ欲しいときは、分布まで求めずに済ませるのが定石です。

    練習問題(3色版)

    赤玉4個、白玉5個、青玉6個の入った袋から、同時に4個を取り出す。取り出した玉のうち赤玉の個数を $${R}$$、白玉の個数を $${W}$$ とするとき、 $${E(R)}$$、 $${E(W)}$$、 $${E(R + W)}$$ を求めよ。

    全体は $${4 + 5 + 6 = 15}$$ 個から4個を取り出すので、どの玉も取り出される確率は $${\frac{4}{15}}$$。

    $${E(R)}$$:赤4個についてそれぞれ $${\frac{4}{15}}$$ なので

    $$
    E(R) = 4\cdot \frac{4}{15} = \frac{16}{15}.
    $$

    $${E(W)}$$:白5個について

    $$
    E(W) = 5\cdot \frac{4}{15} = \frac{20}{15} = \frac{4}{3}.
    $$

    $${E(R + W)}$$:線形性から

    $$
    E(R + W) = E(R) + E(W) = \frac{16}{15} + \frac{20}{15} = \frac{36}{15} = \frac{12}{5}.
    $$

    別解として、「青以外の個数 $${R + W = 4 - B}$$」と考えても確かめられます。青玉の期待値 $${E(B) = 6\cdot \frac{4}{15} = \frac{24}{15} = \frac{8}{5}}$$ から $${E(R+W) = 4 - \frac{8}{5} = \frac{12}{5}}$$。同じ値です。

    色の数が増えても、 個別の玉に指示関数を割り当てて、線形性で和を取る という流れがそのまま通用するのが、この道具の強みです。

    公式として覚えるべきか

    「全 $${N}$$ 個から $${m}$$ 個を取り出すとき、特定の色 $${r}$$ 個のうち取り出される期待値は $${\frac{rm}{N}}$$」という形を公式として覚えておくと、入試で見たことのある形式の問題は一瞬で処理できます。

    ただ、公式だけ覚えても、設定が少し変わると応用が効きません。たとえば次回扱う「異色のペアの個数」は、 個別の玉ではなくペアに指示関数を割り当てる ことで初めて解けるようになります。 公式を覚えるより、指示関数で分解する見方そのものを身につける のが、長期的には強いです。

    次に読む記事

    次回は、袋の中のボール問題の応用編として「異色のペアの個数」の期待値を扱います。「赤と白の組」というペアごとに指示関数を立てる、という新しい使い方が登場します。組合せ的な対象に指示関数を割り当てるという発想は、第V部の指示関数の利用編でも繰り返し出てきます。

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