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【期待値マスター講座35】「最大ー最小 の期待値」を求めよ! (大学入試数学)

    ゴウカライズ編集部
    5 June, 2026

    この記事では、第VI部の締めくくりとして、さいころを ${n}$ 回振った最大値 ${M}$ と最小値 ${L}$ の差 ${M - L}$ の期待値を扱います。

    線形性で ${E(M - L) = E(M) - E(L)}$ と分けて計算し、 ${n=2}$ の具体値も丁寧に出します。最後に順序統計量の一般公式まで見渡します。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    範囲の期待値

    さいころを $${n}$$ 回独立に振り、出た目の最大値を $${M}$$、最小値を $${L}$$ とする。 $${E(M - L)}$$ を求めよ。

    線形性から $${E(M - L) = E(M) - E(L)}$$。 $${M}$$ と $${L}$$ は同じ試行から作られた確率変数なので独立ではありませんが、 線形性は独立性に依存しない ので問題ありません。

    $${E(M)}$$ と $${E(L)}$$ を個別に

    前の記事で出した

    $$
    E(M) = 6 - \frac{1}{6^n}\sum_{k=0}^{5} k^n.
    $$

    最小値については、最小値の tail-sum $${E(L) = \sum_k P(L\ge k)}$$ から

    $$
    P(L\ge k) = \Bigl(\frac{7-k}{6}\Bigr)^n.
    $$

    なぜなら「最小が $${k}$$ 以上」は「全部が $${k}$$ 以上」、その確率は1回あたり $${\frac{7-k}{6}}$$ の $${n}$$ 乗です。tail-sum で

    $$
    E(L) = \sum_{k=1}^{6} P(L\ge k) = \frac{1}{6^n}\sum_{k=1}^{6}(7-k)^n = \frac{1}{6^n}\sum_{j=1}^{6} j^n.
    $$

    ここで変数変換 $${j = 7 - k}$$ を使いました。

    $${E(M - L)}$$ をまとめる

    両者の差を取ります。

    $$
    \begin{aligned}
    E(M - L)
    &= E(M) - E(L) \\
    &= 6 - \frac{1}{6^n}\sum_{k=0}^{5} k^n - \frac{1}{6^n}\sum_{k=1}^{6} k^n \\
    &= 6 - \frac{1}{6^n}\left(\sum_{k=0}^{5} k^n + \sum_{k=1}^{6} k^n\right).
    \end{aligned}
    $$

    これが範囲の期待値の一般形です。

    $${n = 2}$$ の具体値

    $${n = 2}$$ で計算します。

    • $${\sum_{k=0}^{5} k^2 = 0 + 1 + 4 + 9 + 16 + 25 = 55}$$
    • $${\sum_{k=1}^{6} k^2 = 1 + 4 + 9 + 16 + 25 + 36 = 91}$$

    足すと $${55 + 91 = 146}$$ で、 $${6^2 = 36}$$ で割って

    $$
    E(M - L) = 6 - \frac{146}{36} = \frac{216 - 146}{36} = \frac{70}{36} = \frac{35}{18}\approx 1.94.
    $$

    「2回さいころを振ったときの最大と最小の差は、平均約2」という直観的にも自然な値です。

    $${n}$$ が大きいとき

    $${n\to\infty}$$ では、 $${\frac{k}{6}}$$ が $${1}$$ より小さい項( $${k\le 5}$$ )は0に近づくので

    $$
    \frac{1}{6^n}\sum_{k=0}^{5} k^n\to 0,\quad \frac{1}{6^n}\sum_{k=1}^{6} k^n\to 1
    $$

    (最後の項 $${6^n/6^n = 1}$$ が支配的)。したがって $${E(M - L)\to 6 - 0 - 1 = 5}$$。

    「たくさん振ると、最大は6、最小は1に近づくので、範囲は5」というのも、自然な結論です。

    順序統計量の一般公式

    最大値・最小値だけでなく、 「 $${k}$$ 番目に小さい値」 を順序統計量と呼びます。 $${n}$$ 個から $${k}$$ 個を取り出すと考えるのではなく、 $${n}$$ 個並べたものを小さい順に並べたときの $${r}$$ 番目( $${1\le r\le n}$$ )の期待値です。

    連続一様分布(後の話)や、 $${{1, 2, \ldots, n}}$$ から $${k}$$ 個を非復元で取り出した順序統計量について、

    $${{1, 2, \ldots, n}}$$ から無作為に $${k}$$ 個を取り出して小さい順に並べたとき、 $${r}$$ 番目に小さい数の期待値は

    $$
    E(X_{(r)}) = \frac{r(n+1)}{k+1}.
    $$

    この公式は、 $${r = k}$$(最大値)なら $${\frac{k(n+1)}{k+1}}$$(第V部の記事28で出した式)、 $${r = 1}$$(最小値)なら $${\frac{n+1}{k+1}}$$、と特別な場合がきれいに出ます。

    たとえば $${k = 3}$$ なら、最小・中央・最大が $${\frac{n+1}{4}, \frac{2(n+1)}{4}, \frac{3(n+1)}{4}}$$ となり、 全体を4等分した位置に均等に並ぶ という、 $${n+1}$$ 個の境界を $${k+1}$$ 等分するイメージが見えます。

    範囲も順序統計量で

    順序統計量の言葉で書くと、 「最大 $${-}$$ 最小」 $${= X_{(k)} - X_{(1)}}$$ で、上の公式から

    $$
    E(X_{(k)} - X_{(1)}) = \frac{k(n+1)}{k+1} - \frac{n+1}{k+1} = \frac{(k-1)(n+1)}{k+1}.
    $$

    $${k = 3}$$ なら $${\frac{2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{2}}$$。 $${k = 2}$$ なら $${\frac{n+1}{3}}$$。 「全体長さを $${k+1}$$ 等分したときに、 $${k-1}$$ 個分の幅が範囲の期待値」 という構造です。

    練習問題

    1から $${n}$$ までの番号がついたカード各々1枚を袋に入れ、無作為に3枚を同時に取り出す。取り出された数の最大値を $${M}$$、中央値を $${K}$$、最小値を $${L}$$ とする。 $${E(M)}$$、 $${E(K)}$$、 $${E(L)}$$、 $${E(M - L)}$$、 $${E(M - K)}$$ を $${n}$$ で表せ。ただし $${n\ge 3}$$ とする。

    順序統計量の公式 $${E(X_{(r)}) = \frac{r(n+1)}{k+1}}$$ に $${k = 3}$$ を入れて

    $$
    E(L) = E(X_{(1)}) = \frac{n+1}{4},\quad E(K) = E(X_{(2)}) = \frac{2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{2},\quad E(M) = E(X_{(3)}) = \frac{3(n+1)}{4}.
    $$

    差は

    $$
    E(M - L) = \frac{3(n+1)}{4} - \frac{n+1}{4} = \frac{2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{2}.
    $$

    $$
    E(M - K) = \frac{3(n+1)}{4} - \frac{n+1}{2} = \frac{n+1}{4}.
    $$

    3個取り出すと、最小・中央・最大が「全体を4等分した位置」 $${\frac{n+1}{4}, \frac{2(n+1)}{4}, \frac{3(n+1)}{4}}$$ に並ぶ、というのが順序統計量の言葉での解釈です。

    第VI部のまとめ

    第VI部では、最大値・最小値の期待値を4本にわたって扱いました。

    • $${E(\max)\ne \max(E)}$$ の典型的な誤答を避ける
    • 最大値・最小値の分布は、独立同分布なら積で書ける
    • tail-sum を使うと、最大値の期待値が一般形 $${6 - \frac{1}{6^n}\sum k^n}$$ で出る
    • 範囲 $${M - L}$$ は線形性で $${E(M) - E(L)}$$ に分解、順序統計量の公式で見渡すと等分位置の関係が見える

    最大値・最小値の問題は、 「分布が積で出るか」「tail-sum に乗せられるか」 という判断ができれば、機械的に処理できます。

    次の第VII部では、線形性とは対照的に 独立性が前提として効いてくる 性質を扱います。積の期待値、分散の加法性、共分散、そしてJensen不等式の話に進みます。

    次に読む記事

    次回から第VII部「成り立たない性質編」です。線形性に独立性は不要でしたが、それと表裏の関係にある「独立性が前提のもとで成り立つ性質」を扱います。最初の回は、分散の定義と、独立な確率変数の積の期待値の公式 $${E(XY) = E(X)E(Y)}$$ から始めます。

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