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【期待値マスター講座34】さいころn回の最大値の期待値の"公式"を作る。tail-sumの威力を見よ!

    ゴウカライズ編集部
    5 June, 2026

    この記事では、さいころを ${n}$ 回振った最大値の期待値の一般形を、tail-sum と独立同分布の組合せで導きます。

    ${n}$ ごとの数値を見て、 ${n}$ が大きくなると6に近づく様子も確認します。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    公式の導出

    さいころを $${n}$$ 回独立に振り、出た目の最大値を $${M}$$ とします。前回の記事で、独立同分布の最大値について

    $$
    P(M\le k) = \Bigl(\frac{k}{6}\Bigr)^n,\quad P(M\ge k) = 1 - \Bigl(\frac{k-1}{6}\Bigr)^n
    $$

    を出しました。tail-sum から

    $$
    \begin{aligned}
    E(M)
    &= \sum_{k=1}^{6} P(M\ge k) \\
    &= \sum_{k=1}^{6}\left(1 - \Bigl(\frac{k-1}{6}\Bigr)^n\right) \\
    &= 6 - \frac{1}{6^n}\sum_{k=1}^{6}(k - 1)^n \\
    &= 6 - \frac{1}{6^n}\sum_{k=0}^{5} k^n.
    \end{aligned}
    $$

    これが一般形です。 $${n}$$ がどんな自然数でも、 $${0^n + 1^n + 2^n + \cdots + 5^n}$$ を計算して $${6^n}$$ で割り、 $${6}$$ から引けば答えが出ます。

    $${n}$$ ごとに数値を見る

    具体的に小さな $${n}$$ で計算します。

    $${n = 1}$$:$${E(M) = 6 - \frac{0 + 1 + 2 + 3 + 4 + 5}{6} = 6 - \frac{15}{6} = \frac{21}{6} = \frac{7}{2}}$$

    1回しか振らないので、最大値はその目そのもの。期待値はさいころの目の期待値 $${\frac{7}{2}}$$ と一致します。

    $${n = 2}$$:$${E(M) = 6 - \frac{0 + 1 + 4 + 9 + 16 + 25}{36} = 6 - \frac{55}{36} = \frac{216 - 55}{36} = \frac{161}{36}\approx 4.47}$$

    2回振った最大値は平均約4.47。1回の期待値 $${3.5}$$ より約 $${1}$$ 大きいです。

    $${n = 3}$$:$${E(M) = 6 - \frac{0 + 1 + 8 + 27 + 64 + 125}{216} = 6 - \frac{225}{216} = \frac{1296 - 225}{216} = \frac{1071}{216}\approx 4.96}$$

    3回振ると平均約4.96。 $${5}$$ に近づきました。

    $${n = 4}$$:$${\sum_{k=0}^{5} k^4 = 0 + 1 + 16 + 81 + 256 + 625 = 979}$$、$${E(M) = 6 - \frac{979}{6^4} = 6 - \frac{979}{1296}\approx 5.24}$$

    $${n = 6}$$:直接計算は省略しますが約 $${5.61}$$。

    $${n\to\infty}$$:$${\bigl(\frac{k-1}{6}\bigr)^n\to 0}$$( $${k\le 6}$$ で $${\frac{k-1}{6}\le \frac{5}{6} < 1}$$ )なので、すべての $${k}$$ について $${P(M\ge k)\to 1}$$。tail-sum の和は $${6}$$ に近づきます。 $${E(M)\to 6}$$。

    「たくさん振れば最大値は6に近づく」という直観どおりです。

    公式の構造を読む

    $${E(M) = 6 - \frac{1}{6^n}\sum_{k=0}^{5} k^n}$$ という形を眺めると、

    • $${6}$$ は「最大値の上限」
    • $${\frac{1}{6^n}\sum k^n}$$ は「最大値が $${k}$$ より下に留まる確率」をすべての $${k}$$ について足したもの

    「上限 $${-}$$ 下回る確率の和」が期待値、というのが tail-sum の見方です。最大値が6に近づくということは、 $${\bigl(\frac{k}{6}\bigr)^n}$$ が小さくなるということと表裏一体です。

    正攻法との比較

    参考までに、 $${P(M = k)}$$ から定義通り計算するルートも示します。

    $$
    P(M = k) = \Bigl(\frac{k}{6}\Bigr)^n - \Bigl(\frac{k-1}{6}\Bigr)^n
    $$

    から

    $$
    E(M) = \sum_{k=1}^{6} k\cdot \left[\Bigl(\frac{k}{6}\Bigr)^n - \Bigl(\frac{k-1}{6}\Bigr)^n\right].
    $$

    これも答えは同じ $${E(M) = 6 - \frac{1}{6^n}\sum_{k=0}^{5} k^n}$$ に到達します(部分和の Abel 変換で確認できますが、計算は tail-sum 経由のほうが早い)。

    「分布が出るか」と「 $${P(\ge k)}$$ がそのまま出るか」を見比べて、後者が早そうなら tail-sum 、という判断ができると入試で役立ちます。

    「全数値ではなく式を残す」答案

    入試で「 $${n}$$ を一般のままで答えを書け」と言われたとき、 $${\sum k^n}$$ を残しておくのが普通です。 $${n}$$ が具体的に与えられたら数値を計算しますが、 $${n}$$ が文字のままなら $${\sum_{k=0}^{5} k^n}$$ を式の中に残します。

    「式として書ければ満点」「数値計算で間違うと減点」というのが入試の採点傾向です。 計算を抑えるのも戦略 です。

    練習問題

    $${{1, 2, 3}}$$ から無作為に1つを選ぶ試行を $${n}$$ 回独立に繰り返し、選ばれた数の最大値を $${M}$$ とする。 $${E(M)}$$ を求めよ。

    各試行で $${X_i}$$ は $${1, 2, 3}$$ を等確率 $${\frac{1}{3}}$$ でとり、 $${P(X_i\le k) = \frac{k}{3}}$$。独立同分布なので

    $$
    P(M\le k) = \Bigl(\frac{k}{3}\Bigr)^n,\quad P(M\ge k) = 1 - \Bigl(\frac{k-1}{3}\Bigr)^n.
    $$

    tail-sum で

    $$
    E(M) = \sum_{k=1}^{3}\left(1 - \Bigl(\frac{k-1}{3}\Bigr)^n\right) = 3 - \frac{0 + 1 + 2^n}{3^n} = 3 - \frac{1 + 2^n}{3^n}.
    $$

    $${n = 1}$$ なら $${E(M) = 3 - \frac{3}{3} = 2}$$(1回引いた値の平均 $${\frac{1+2+3}{3} = 2}$$ と一致)。 $${n = 2}$$ なら $${E(M) = 3 - \frac{5}{9} = \frac{22}{9}\approx 2.44}$$。 $${n\to\infty}$$ では $${E(M)\to 3}$$。

    3択を $${n}$$ 回引いて最大を取ると、 $${n}$$ とともに3にじわじわ近づく、という結果です。

    次に読む記事

    次回は、最大値と最小値の差「範囲」 $${M - L}$$ の期待値を扱います。線形性から $${E(M - L) = E(M) - E(L)}$$ で個別に出せますが、計算結果のかたちがどうなるか、特に小さな $${n}$$ での値を丁寧に追います。順序統計量の話にもつながる総まとめの回です。

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