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【期待値マスター講座27】対称性でじゃんけんの勝者数の期待値を一瞬で出す!

    ゴウカライズ編集部
    3 June, 2026

    この記事では、 ${n}$ 人が一斉にじゃんけんをしたときの勝者数の期待値を扱います。

    「あいこ」や「複数人が勝つ」など場合分けが必要そうに見えますが、 個別の人が勝つ事象だけを見れば対称性で一気に処理 できます。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    問題設定

    $${n}$$ 人( $${n\ge 2}$$ )が一斉に1回じゃんけんをする。それぞれ独立に、グー・チョキ・パーを各 $${\frac{1}{3}}$$ の確率で出す。じゃんけんに勝った人の数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。

    ただし「勝った人」とは、自分の出した手と異なるただ1種類の手だけが残りの全員から出ていて、かつ自分の手がそれに勝つ手だった場合を指す。

    「勝者数」 $${X}$$ がとる値は $${0, 1, 2, \ldots, n}$$ のいずれか。 $${X = 0}$$ は「あいこ」(3種類の手すべてが出る、または全員同じ手)、 $${X = n}$$ は「全員勝つ」(…のだけど、実際には起こらない)など。

    直接 $${P(X = k)}$$ の確率分布を書こうとすると、「2種類の手だけが出て、片方が勝つ」場合の数を細かく数える必要があり、ややこしいです。

    指示関数で分解

    別ルートを使います。 $${i\in{1, 2, \ldots, n}}$$ について「人 $${i}$$ が勝つ」事象を $${A_i}$$ とおき、 $${X = \sum_{i=1}^{n} I_{A_i}}$$。

    $${P(A_i)}$$ を求めます。対称性から、3種類の手のうちどれを出しても同じ確率なので、まず「人 $${i}$$ がグーを出した」場合だけ考えて、最後に3倍します。

    人 $${i}$$ がグーを出したとき(確率 $${\frac{1}{3}}$$)、人 $${i}$$ が勝つには、残り $${n-1}$$ 人全員がチョキを出さなければなりません。これは確率 $${\bigl(\frac{1}{3}\bigr)^{n-1}}$$(各人が独立に確率 $${\frac{1}{3}}$$ でチョキ)。

    チョキ・パーを出した場合も対称的に同じ確率なので、3つを足して

    $$
    P(A_i) = 3\cdot \frac{1}{3}\cdot \Bigl(\frac{1}{3}\Bigr)^{n-1} = \Bigl(\frac{1}{3}\Bigr)^{n-1}.
    $$

    線形性で

    $$
    E(X) = n\cdot \Bigl(\frac{1}{3}\Bigr)^{n-1} = \frac{n}{3^{n-1}}.
    $$

    答えは $${E(X) = \frac{n}{3^{n-1}}}$$。

    数値を見る

    具体的に小さな $${n}$$ で計算すると

    • $${n = 2}$$ : $${E(X) = \frac{2}{3}\approx 0.67}$$
    • $${n = 3}$$ : $${E(X) = \frac{3}{9} = \frac{1}{3}\approx 0.33}$$
    • $${n = 4}$$ : $${E(X) = \frac{4}{27}\approx 0.15}$$
    • $${n = 5}$$ : $${E(X) = \frac{5}{81}\approx 0.06}$$

    人数が増えるほど、勝者の期待人数は急速に減ります。 人数が増えるほどあいこが起こりやすくなる という、直観的な感覚と整合します。 $${n = 5}$$ ですでに6%程度なので、 5人以上のじゃんけんは事実上「あいこ確定」 と思っていいくらいです。

    なぜ指示関数で扱えるか

    ここで効いているのは、 「人 $${i}$$ が勝つ」事象だけを見ると、対称性で確率がすぐに出る という構造です。

    正攻法(確率分布を直接書く)では、「あいこ」の場合分けや「2種類の手の組合せ」を全部数える必要があります。一方、 個別の人に注目すると、自分の手を固定したときの残りの $${n-1}$$ 人の確率 だけ考えれば済みます。

    $${A_i}$$ どうしは独立ではありません(人 $${i}$$ が勝つ条件と人 $${j}$$ が勝つ条件は、お互いに影響します)。それでも線形性は使えるので、和の期待値は問題なく出ます。

    補足:「勝者数の期待値」と「勝つ確率」

    人 $${i}$$ が勝つ確率は $${\bigl(\frac{1}{3}\bigr)^{n-1}}$$。これは「自分が勝者の一人になる確率」で、 $${n}$$ が大きいほど小さくなります。

    勝者数の期待値 $${\frac{n}{3^{n-1}}}$$ は、すべての人の「勝つ確率」を足したもの。 人数を増やしても、合計(期待勝者数)はむしろ減る 、というのが直観に反するかもしれません。

    これは、人数増加による「勝つ確率の急減」(指数オーダー)が「人数の増加」(線形オーダー)を上回るからです。「皆で集まってじゃんけんすると、なかなか決まらない」のは、こういう数学的な理由があります。

    練習問題

    3人がじゃんけんを1回行う。「あいこ」になる確率と、ちょうど1人だけ勝つ確率、ちょうど2人勝つ確率をそれぞれ求めよ。

    3人で考えうる手の組合せは $${3^3 = 27}$$ 通り、それぞれ確率 $${\frac{1}{27}}$$。

    「あいこ」は3種類の手すべてが出るか、全員同じ手の場合。

    • 全員同じ:3通り(グーグーグー、チョキチョキチョキ、パーパーパー)
    • 3種類すべて:人の並び方を考えて $${3! = 6}$$ 通り

    合計9通りで、 $${P(\text{あいこ}) = \frac{9}{27} = \frac{1}{3}}$$。

    ちょうど1人だけ勝つ:2人が同じ手で1人がそれに勝つ手。3人のうち勝つ人の選び方が3通り、その人の手が3通り(残り2人は決まる)で9通り。 $${P(X = 1) = \frac{9}{27} = \frac{1}{3}}$$。

    ちょうど2人勝つ:1人が「負ける手」、残り2人がそれに勝つ手。負ける人の選び方が3通り、その人の手が3通り(残り2人の手は決まる)で9通り。 $${P(X = 2) = \frac{9}{27} = \frac{1}{3}}$$。

    確率の総和 $${\frac{1}{3} + \frac{1}{3} + \frac{1}{3} = 1}$$。

    期待値を直接計算すると

    $$
    E(X) = 0\cdot \frac{1}{3} + 1\cdot \frac{1}{3} + 2\cdot \frac{1}{3} = 1,
    $$

    公式 $${\frac{3}{3^{3-1}} = \frac{3}{9} = \frac{1}{3}}$$ と合いません。

    確認すると、人数が3の場合の「あいこ」(3種類全部出る)と「全員同じ」もここで明確に出てきます。 $${E(X) = \frac{1}{3}}$$ なのに上の場合分けで $${E(X) = 1}$$ になるのは、 本問の「勝者」の定義が違うため です。「あいこ」を $${X = 0}$$ と数えるか、別扱いにするかで答えが変わります。

    例題の条件「自分の出した手と異なるただ1種類の手だけが残りの全員から出ていて、かつ自分の手がそれに勝つ手」は、3種類すべての手が出るときは1人も勝者にならないと定義しています。練習問題の「ちょうど2人勝つ」9通りはこの定義に含まれず、 $${P(X = 2) = 0}$$ で、 $${P(X = 0) = \frac{2}{3}}$$、$${P(X = 1) = \frac{3\cdot 3}{27} = \frac{1}{3}}$$ で

    $$
    E(X) = 0\cdot \frac{2}{3} + 1\cdot \frac{1}{3} = \frac{1}{3} = \frac{3}{3^{3-1}}.
    $$

    公式と整合します。 「勝つ」の定義を1問ごとに確認するのが大事 、という教訓も含めて押さえてください。

    次に読む記事

    次回は、tail-sum formula の典型応用として、 さいころを2回振ったときの最大値の期待値 を扱います。第IV部の終わりに公式を整理しましたが、ここで実例として手を動かします。

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