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【期待値マスター講座26】"クーポンコレクター問題"も指示関数で攻略!!

    ゴウカライズ編集部
    3 June, 2026

    この記事では、確率の古典的な題材「クーポンコレクター問題」の前半を扱います。

    ${n}$ 種類のクーポンがあり、独立に ${m}$ 回引いたとき集まる種類数の期待値を、指示関数で出します。第IV部の「6種類のカード」の問題を、 ${n}$ 種類に一般化したものです。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    問題設定

    $${n}$$ 種類のクーポンがあり、1回の試行で各クーポンが等確率 $${\frac{1}{n}}$$ で得られる。独立に $${m}$$ 回試行したとき、集まったクーポンの種類数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。

    「種類数」と言われたら、指示関数の出番です。第IV部の記事20で「6種類のカードを $${n}$$ 回引く」場合を扱いましたが、それを「 $${n}$$ 種類のクーポンを $${m}$$ 回引く」に書き換えただけです。

    指示関数で分解

    クーポン $${k\in{1, 2, \ldots, n}}$$ について

    $$
    I_k = \begin{cases} 1 & (m \text{ 回中に少なくとも1回 } k \text{ が出た}) \\ 0 & (\text{それ以外}) \end{cases}
    $$

    とおきます。 $${X}$$ は

    $$
    X = \sum_{k=1}^{n} I_k.
    $$

    $${k}$$ が1回も出ない確率は、毎回 $${k}$$ 以外の $${n-1}$$ 通りが出る確率を $${m}$$ 回独立に掛けて $${\bigl(1 - \frac{1}{n}\bigr)^m}$$ なので

    $$
    P(I_k = 1) = 1 - \Bigl(1 - \frac{1}{n}\Bigr)^m.
    $$

    線形性により

    $$
    E(X) = n\left(1 - \Bigl(1 - \frac{1}{n}\Bigr)^m\right).
    $$

    これがクーポンコレクター問題の前半(集まる種類数の期待値)の答えです。

    $${m}$$ と $${n}$$ の関係を読む

    公式を眺めると、 $${m}$$ が大きいほど $${\bigl(1 - \frac{1}{n}\bigr)^m}$$ が小さくなり、 $${E(X)}$$ が $${n}$$ に近づきます。直観的に「たくさん引けば、全種類が揃いやすい」のと一致します。

    数値で見ると、 $${n = 6}$$ の場合(さいころ)

    • $${m = 6}$$ : $${E(X) = 6\bigl(1 - (\frac{5}{6})^6\bigr) = 6\cdot 0.665 \approx 3.99}$$
    • $${m = 12}$$ : $${E(X) = 6\bigl(1 - (\frac{5}{6})^{12}\bigr) \approx 4.66}$$
    • $${m = 24}$$ : $${E(X) \approx 5.42}$$
    • $${m = 60}$$ : $${E(X) \approx 5.94}$$

    「6種類全部集めるには、6回引いても平均4種類くらい」「12回でやっと5種類弱」「全部揃うまではかなり時間がかかる」ことが見えます。

    クーポンコレクター問題の後半(予告)

    「逆向き」の問題、つまり

    全 $${n}$$ 種類を集めるのに必要な試行回数の期待値はいくつか

    を求めるのが、クーポンコレクター問題の後半です。答えは

    $$
    n\Bigl(1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \cdots + \frac{1}{n}\Bigr) = n H_n
    $$

    ここで $${H_n}$$ は $${n}$$ 番目の調和数。 $${n = 6}$$ なら $${6\cdot(1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \frac{1}{5} + \frac{1}{6}) = 6\cdot 2.45 \approx 14.7}$$ 回が平均、という結果になります。

    詳しい導出は第IX部の漸化式編で扱います。 「すでに $${k}$$ 種類集まっているとき、次の新種が出るまでの平均試行回数」が幾何分布の期待値で出る のを使います。

    包除原理を経由する正攻法

    別ルートとして、 $${P(X = k)}$$ を直接書き下す方法もあります。 $${X = k}$$ となる確率は

    $$
    P(X = k) = \binom{n}{k}\sum_{j=0}^{k}(-1)^j\binom{k}{j}\Bigl(\frac{k - j}{n}\Bigr)^m
    $$

    で、包除原理を経由した式になります。これに $${k}$$ を掛けて和を取れば期待値は出ますが、 指示関数の発想を使うと2行で同じ答えに到達する ところが大きな利点です。

    包除原理の式は「ちょうど $${k}$$ 種類」を直接数えるためのものなので、 $${P(X = k)}$$ の分布まで欲しい場合は便利です。期待値だけ欲しいなら、 「種類ごとに『出たか?』を見る」だけで十分 、というのが今回のメッセージです。

    練習問題

    1から100までの番号が書かれたカードが各1枚、合計100枚入った袋がある。1枚引いて番号を見て戻すという試行を200回繰り返したとき、出た番号の種類数 $${X}$$ の期待値を求めよ。

    公式に $${n = 100, m = 200}$$ を入れて

    $$
    E(X) = 100\left(1 - \Bigl(\frac{99}{100}\Bigr)^{200}\right).
    $$

    $${\bigl(\frac{99}{100}\bigr)^{200} = \bigl(1 - \frac{1}{100}\bigr)^{200}\approx e^{-2}\approx 0.135}$$ なので

    $$
    E(X)\approx 100\cdot (1 - 0.135) \approx 86.5.
    $$

    200回も引けば100種類中86種類くらいは集まる、という見立てです。逆に言うと、 100種類全部集めるには200回でも足りない 、というのがクーポンコレクター問題の感覚的な厳しさです。後半で扱う「全種類集めるまでの試行回数」 $${100\cdot H_{100}\approx 519}$$ 回、というのが平均像です。

    補足:$${n}$$ が大きいときの近似

    $${n}$$ が大きく $${m = cn}$$( $${c}$$ は定数)とすると

    $$
    E(X) = n\left(1 - \Bigl(1 - \frac{1}{n}\Bigr)^{cn}\right)\approx n(1 - e^{-c}).
    $$

    「 $${cn}$$ 回引いたら、約 $${1 - e^{-c}}$$ の割合の種類が集まる」というスケーリング則です。 $${c = 1}$$ なら約 $${63}$$ %、 $${c = 2}$$ なら約 $${86}$$ %、 $${c = 3}$$ なら約 $${95}$$ %、…という具合に、 試行回数を $${n}$$ の倍数で増やしても収穫逓減 していくのが見えます。

    入試レベルでは近似式までは出ませんが、公式の振る舞いを直観的に掴むときに役立ちます。

    次に読む記事

    次回は、別のタイプの応用として「じゃんけんの勝者数」を扱います。 $${n}$$ 人が一斉にじゃんけんをして、勝者の人数の期待値を出す問題です。場合分けで処理すると面倒ですが、 「人 $${i}$$ が勝つ事象」を指示関数で見れば対称性で一気に処理 できます。

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