
Blog
大学受験ブログ

【期待値マスター講座13】期待値の線形性は万能ではない
この記事では、線形性という言葉を改めて定義しなおし、 「線形性が使える場面」と「そもそも線形性の話ではない場面」を区別する 視点を整えます。
${E(M^2)}$ や ${E(\max(X, Y))}$ を題材に、線形性の濫用がどこから起こるかを観察します。
公式LINEでテキスト配布中
公式LINE追加→ 期待値テキスト と送信
で120ページ超えのテキストを自動送信!
ㅤ
無料勉強相談も受付中
学習相談も受け付けています。
ゴウカライズは情報の少ない獣医学部や医学部受験にも精通しています。
一般入試はもちろん、総合型選抜や推薦など、なんでもお問い合わせください!

シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
線形性とは何だったか
期待値の線形性とは、
$$
E(aX + bY) = aE(X) + bE(Y)
$$
という、 確率変数の和(と定数倍)に関するステートメント です。任意の確率変数で、独立性を仮定せずに成立します。
ここで強調したいのは、 このステートメントは「和(線形結合)の形をした量」に対する主張 だということ。 $${aX + bY}$$ という線形結合があって初めて、 $${aE(X) + bE(Y)}$$ という同じ形に分配できる、というのが線形性の意味です。
したがって、もし「線形性が成り立たない」という言い方が出てきたら要注意。 線形性そのものはいつでも成り立つ定理 で、破れることはありません。問題は 「目の前の式が線形結合の形をしているか」 だけです。線形結合でない式に線形性を持ち込もうとすると、 そもそも線形性の射程の外 にいることになります。
線形性の射程の外にある量
次の量はいずれも、 線形結合の形をしていない ので、線形性をそのまま持ち込めません。
- $${E(XY)}$$ :積の期待値(独立性があれば $${E(X)E(Y)}$$ に等しい。より弱くは無相関で十分。第VII部)
- $${E(X^2)}$$ :二乗の期待値(分散の計算で必要、第VII部)
- $${E(\max(X, Y))}$$ :最大値の期待値(tail-sumや分布から、第VI部)
- $${E(\min(X, Y))}$$ :最小値の期待値(同上)
- $${E(|X|)}$$ :絶対値の期待値
- $${E(1/X)}$$ :逆数の期待値(Jensen不等式のお膝元)
これらは (そのままでは)線形性で扱える話ではありません。
何らかの方法で線形結合の形に書き直せれば(たとえば tail-sum で和に分解できれば)線形性が効きますが、書き直せない量は 別の道具 が要ります。
例題:最大値の二乗の期待値
$${{1, 2, 3, 4, 5}}$$ から無作為に2つの数を選び、大きい方を $${M}$$ とする。 $${E(M^2)}$$ を求めよ。
「線形性で $${E(M^2) = M\cdot E(M)}$$」のような誤った当てはめをしてはいけません。 $${M^2 = M\cdot M}$$ は積であって線形結合ではないので、線形性のステートメントが直接適用できる対象ではありません。 「線形性の濫用」の典型例 です。
正攻法で確率分布を出します。2数の選び方は $${\binom{5}{2} = 10}$$ 通り。 $${M = k}$$ となるのは「小さい方が $${1, \ldots, k-1}$$ のいずれか」で $${k-1}$$ 通り。したがって $${P(M = k) = \frac{k-1}{10}}$$( $${k = 2, 3, 4, 5}$$ )です。
定義通り
$$
\begin{aligned}
E(M^2)
&= \sum_{k=2}^{5} k^2 \cdot \frac{k-1}{10} \\
&= \frac{1\cdot 4 + 2\cdot 9 + 3\cdot 16 + 4\cdot 25}{10} \\
&= \frac{4 + 18 + 48 + 100}{10} = \frac{170}{10} = 17.
\end{aligned}
$$
$${E(M^2) = 17}$$。
ここでは、 $${M}$$ の確率分布を直接書き下す方が早いです。 $${M^2}$$ を「何かの和」に分解できる場面なら線形性で押せますが、この問題では分解する自然な経路がありません。
線形性が「使えない」のか「使い方が違う」のか
実は、 $${E(M)}$$ そのものは線形性 + 指示関数で計算できます(第V部・第VI部で扱います)。 $${M = \sum_k \mathbf{1}_{{M\ge k}}}$$ という分解(tail-sum)を経由すれば、
$$
E(M) = \sum_k P(M\ge k)
$$
と書けるからです。
ところが、 $${M^2}$$ にすると話が変わります。 $${M^2 = \bigl(\sum_k \mathbf{1}{{M\ge k}}\bigr)^2}$$ を展開すると、 $${\sum{k,l} \mathbf{1}{{M\ge k}}\mathbf{1}{{M\ge l}}}$$ となり、 $${\mathbf{1}{{M\ge k}}\mathbf{1}{{M\ge l}}}$$ という積の期待値(イコール共通事象の確率)を扱うことになります。これは「線形性だけ」では片付かず、 積の構造を意識した別の議論 が必要です。
第V部で扱うモンモール数の問題 $${E(X^2) = 2}$$ などが、その実例です。 $${X^2}$$ を $${\sum I_i I_j}$$ に分解し、 $${I_i I_j = I_{A_i\cap A_j}}$$ という関係を経由して計算する 道があります。これは線形性の発展形ですが、いまの段階では「二乗は別物」と理解しておけば十分です。
$${E(\max)}$$ と $${\max(E)}$$ は別物
線形性を「最大値」に適用しようとすると、別の誤りも出やすいです。
$$
E(\max(X, Y)) \ne \max(E(X), E(Y))
$$
これは恒等式ではありません。第VI部で詳しく扱いますが、ざっくり言うと、左辺の方が常に大きいか等しくなります(Jensen不等式の特別な場合)。 $${\max}$$ も線形結合ではないので、 線形性の話とは別の枠組み で扱う必要があります。
たとえば、さいころを2回振った目の最大値 $${M}$$ について
$$
\max(E(X_1), E(X_2)) = \max\Bigl(\frac{7}{2}, \frac{7}{2}\Bigr) = \frac{7}{2} = 3.5
$$
ですが、 $${E(M) = \frac{161}{36}\approx 4.47}$$ で、明らかに $${3.5}$$ より大きい。 最大値という確率変数の期待値 と 期待値の最大 は、まったく別の量です。
線形性が適用できる境界を整理する
ここまでをまとめます。
- 線形性が直接適用できる:線形結合 $${aX + bY}$$ の期待値、定数倍、定数の足し算、指示関数の和
- 線形性の射程の外(別の道具が必要):積、二乗、最大、最小、絶対値、非線形関数全般
問題を見て期待値を求めるときは、まず 「これは線形結合の形に書けるか」 を考えます。書ければ線形性で部品ごとに処理。書けなければ、確率分布を直接求めるか、tail-sumのような別の分解を試します。
「線形性 → 指示関数 → tail-sum」の3つが、本シリーズで身につける主要な分解の道具です。線形性は最も強力で射程が広いですが、 「いつでも何にでも使える」道具ではない 、ということを覚えておいてください。 「線形性が成り立たない」と言いそうになったら、それは「線形性で扱える話ではない」と言い換えるべき場面 です。
練習問題
さいころを2回振り、出た目を $${X_1, X_2}$$ とする。次の量のうち、線形性だけで求められるものはどれか。
(a)$${E(X_1 + X_2)}$$
(b)$${E(X_1 X_2)}$$
(c)$${E(\max(X_1, X_2))}$$
(d)$${E(X_1^2 + X_2^2)}$$
(a) は和の期待値そのもの。線形性で $${E(X_1) + E(X_2) = \frac{7}{2} + \frac{7}{2} = 7}$$。
(b) は積。 $${X_1, X_2}$$ が独立なので $${E(X_1 X_2) = E(X_1)E(X_2)}$$ で計算できますが、これは「独立な確率変数の積の公式」であって線形性ではありません。線形性だけでは出せません。
(c) は最大値。線形性だけでは出せません。tail-sumや確率分布が必要です。
(d) は二乗の和。 $${X_1^2 + X_2^2}$$ は和の形なので、線形性で $${E(X_1^2) + E(X_2^2)}$$ にできます。あとは $${E(X_1^2) = \frac{1^2 + 2^2 + \cdots + 6^2}{6} = \frac{91}{6}}$$ を計算すれば $${E(X_1^2 + X_2^2) = \frac{91}{3}}$$。 線形性は外側の和に効くが、 $${X^2}$$ そのものの計算は定義通りやる 、というのがこの問題の見どころです。
線形性で出せるのは (a) と (d) です。
次に読む記事
次回は、再び「線形性に独立性は不要」というメッセージに戻ります。具体的に、 $${Y = 7 - X}$$ という極端な従属関係を持つ確率変数のペアで、それでも $${E(X + Y) = E(X) + E(Y)}$$ が成立することを確かめます。証明では示しましたが、具体例で改めて手応えを掴むのが第II部の締めくくりです。
【無料相談受付中】学習マネジメントはゴウカライズにおまかせを!
「成績が伸び悩んでいるけどどうやって打破すればいいかわからない…」
「塾・予備校に行ってるけど、全体の成績が思ったように上がらない…」
そんな悩みをお持ちの受験生・保護者の皆様、ゴウカライズにご相談ください!
入試を突破するため、私たちはあなたの志望校や受験方式に必要なすべてをトータルサポートします。
【一般入試】完全オーダーメイドの学習計画 :
入試は、わずかな失点が合否を分けることもあります。
あなたの現状と志望校の出題傾向を分析し、合格ラインに到達するための最短ルートを設計。
日々の進捗管理で、学習の遅れも見逃しません。
【推薦・総合型選抜】面接・小論文もプロが対応 :
推薦入試や総合型選抜で必須となる「面接・小論文・志望理由書」の対策もお任せください。
医学部や獣医系特有のテーマ(動物倫理や獣医療時事など)に対応できるプロ講師が、合格レベルの答案作成と受け答えを指導します。
プロ講師・優秀学生講師の個別指導 :
学習管理だけでなく、経験豊富なプロ講師や、高倍率から選抜された優秀な学生講師による完全個別指導も提供。
苦手科目の克服や過去問解説など、あなたのニーズに合わせた1対1の指導が可能です。
【医学部・獣医学部対策】特殊な対策に完全対応 :
医学部入試、獣医学部入試は特殊な対策が必要です。
面接などがある入試形式の場合、面接対策も侮れません。
そんな入試に精通したプロがゴウカライズには多数在籍しています。
ゴウカライズ代表の大北も医学部・獣医学部受験の指導経験は15年を超える大ベテランです。
まずは無料相談で、あなたの合格までのロードマップを一緒に描きませんか?
無理な勧誘は一切ありません。
予備校選びに迷っているなどの相談でも、客観的にアドバイスを行います。
公式LINEでいつでも無料相談を受け付けています!
https://goukalize-official-line-harness.tiny-atlas.workers.dev/r/Expected-Value
#オンライン予備校 #大学受験 #数学 #期待値 #線形性
医学部受験生はこちらへ!
獣医学部受験生はこちらへ!
ゴウカライズ編集部
オンライン予備校ゴウカライズの編集部が、大学受験に役立つ情報を整理してお届けしています。
