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【期待値マスター講座33】最大値と最小値の確率分布を積で一瞬に求める

    ゴウカライズ編集部
    5 June, 2026

    この記事では、独立同分布な確率変数 ${X_1, \ldots, X_n}$ の最大値・最小値の確率分布を、 ${P(\max\le k) = P(X_1\le k)^n}$ のような 積の形 に書く方法を整理します。

    ${E(\max)}$ や ${E(\min)}$ を計算する前提となる、最も基本的な道具です。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    最大値の分布

    定理:独立な確率変数 $${X_1, X_2, \ldots, X_n}$$ について

    $$
    P(\max(X_1, \ldots, X_n)\le k) = \prod_{i=1}^{n} P(X_i\le k).
    $$

    特に $${X_1, \ldots, X_n}$$ が同分布(iidと呼ぶ)なら

    $$
    P(\max\le k) = P(X_1\le k)^n,\quad P(\max\ge k) = 1 - P(X_1\le k - 1)^n.
    $$

    証明はあっさり終わります。 $${\max\le k}$$ は「すべての $${X_i}$$ が $${k}$$ 以下」と同値で、独立性から

    $$
    P(X_1\le k,\ \ldots,\ X_n\le k) = \prod_i P(X_i\le k).
    $$

    「最大が $${k}$$ 以下」を「全部が $${k}$$ 以下」に言い換えると独立性が使える、というのが鍵です。

    最小値の分布

    最小値も対称的に、 「全部が $${k}$$ より大きい」 を考えます。

    定理:独立同分布な $${X_1, \ldots, X_n}$$ について

    $$
    P(\min\ge k) = P(X_1\ge k)^n,\quad P(\min\le k) = 1 - P(X_1\ge k+1)^n.
    $$

    これも「最小が $${k}$$ 以上」 $${\iff}$$ 「全部が $${k}$$ 以上」から、独立性で積に分解できます。

    例題:さいころ$${n}$$回の最大値の分布

    さいころを $${n}$$ 回独立に振り、出た目の最大値を $${M}$$ とする。 $${P(M\le k)}$$ と $${P(M\ge k)}$$ を求めよ。

    各 $${X_i}$$ は $${1}$$ から $${6}$$ の値を等確率でとり、 $${P(X_i\le k) = \frac{k}{6}}$$( $${k = 1, \ldots, 6}$$ )。

    $$
    P(M\le k) = \Bigl(\frac{k}{6}\Bigr)^n,\quad P(M\ge k) = 1 - \Bigl(\frac{k-1}{6}\Bigr)^n.
    $$

    $${M\ge k}$$ は「少なくとも一方が $${k}$$ 以上」、すなわち余事象が「全部が $${k-1}$$ 以下」で確率 $${\bigl(\frac{k-1}{6}\bigr)^n}$$、それを1から引いた形です。

    例題:さいころ$${n}$$回の最小値の分布

    同じ設定で、最小値 $${L}$$ について

    $$
    P(L\ge k) = \Bigl(\frac{7-k}{6}\Bigr)^n,\quad P(L\le k) = 1 - \Bigl(\frac{6-k}{6}\Bigr)^n.
    $$

    $${L\ge k}$$ は「全部が $${k}$$ 以上」で $${P(X_1\ge k) = \frac{6 - (k - 1)}{6} = \frac{7-k}{6}}$$ を $${n}$$ 乗。最小値も対称的に処理できます。

    確率分布を作る

    $${P(M = m)}$$ や $${P(L = l)}$$ そのものは、累積確率から差分を取って

    $$
    P(M = m) = P(M\le m) - P(M\le m - 1) = \Bigl(\frac{m}{6}\Bigr)^n - \Bigl(\frac{m-1}{6}\Bigr)^n.
    $$

    $${n = 2}$$ なら $${P(M = m) = \frac{m^2 - (m-1)^2}{36} = \frac{2m - 1}{36}}$$ となり、第I部の練習問題で出した式と一致します。

    最小値も同様に

    $$
    P(L = l) = P(L\ge l) - P(L\ge l + 1) = \Bigl(\frac{7-l}{6}\Bigr)^n - \Bigl(\frac{6-l}{6}\Bigr)^n.
    $$

    独立性が効くポイント

    ここで強調しておきたいのは、 「最大が $${k}$$ 以下」を「全部が $${k}$$ 以下」に言い換えるところまでは独立性によらないが、その先で積に分解するところで独立性が決定的に効く という点です。

    仮に $${X_1, \ldots, X_n}$$ が独立でないとすると、 $${P(X_1\le k, \ldots, X_n\le k)}$$ は積にはなりません。同時分布の情報が別途必要になります。

    たとえば、非復元抽出のように $${X_1, X_2}$$ が従属している場合、 $${P(\max\le k)}$$ を出すには別の議論が必要で、ここで紹介した公式はそのままでは使えません。

    同分布でない場合

    $${X_1, \ldots, X_n}$$ が独立だが分布が違う場合は、

    $$
    P(\max\le k) = \prod_{i=1}^{n} P(X_i\le k)
    $$

    と、 個別の $${P(X_i\le k)}$$ を全部掛ける 必要があります。同分布なら $${P(X_1\le k)^n}$$ ですが、同分布でない場合は省略できません。

    入試では同分布な設定が多いので、 $${P(X_1\le k)^n}$$ の形を反射的に書けるようにしておくと早いです。

    練習問題

    1から $${n}$$ までの番号がついたカード各々1枚を袋に入れる。1枚引いて番号を見て戻す試行を $${m}$$ 回独立に繰り返す。引いた番号の最大値を $${M}$$ とする。 $${P(M\le k)}$$、 $${P(M = k)}$$、 $${E(M)}$$ を求めよ。

    各 $${X_i}$$ は $${1}$$ から $${n}$$ を等確率でとり、 $${P(X_i\le k) = \frac{k}{n}}$$。独立同分布なので

    $$
    P(M\le k) = \Bigl(\frac{k}{n}\Bigr)^m,\quad P(M\ge k) = 1 - \Bigl(\frac{k-1}{n}\Bigr)^m.
    $$

    差分から

    $$
    P(M = k) = \Bigl(\frac{k}{n}\Bigr)^m - \Bigl(\frac{k-1}{n}\Bigr)^m = \frac{k^m - (k-1)^m}{n^m}.
    $$

    tail-sum を使うと

    $$
    E(M) = \sum_{k=1}^{n}\left(1 - \Bigl(\frac{k-1}{n}\Bigr)^m\right) = n - \frac{1}{n^m}\sum_{k=0}^{n-1}k^m.
    $$

    $${m = 1}$$ なら $${E(M) = n - \frac{0 + 1 + \cdots + (n-1)}{n} = n - \frac{n - 1}{2} = \frac{n + 1}{2}}$$(1回引いた値の平均、当然)。 $${m\to\infty}$$ では $${E(M)\to n}$$(たくさん引けば最大値は $${n}$$ に近づく)。

    次に読む記事

    次回は、tail-sum と最大値の組合せを使って、さいころを $${n}$$ 回振った最大値の期待値の一般形を、計算量を抑えて出します。 $${E(M) = 6 - \frac{1}{6^n}\sum k^n}$$ という公式の意味と、 $${n}$$ ごとの数値を見ます。

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