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【期待値マスター講座40】「期待値の高い側が必ず"勝つ"わけではない!?」 ハイリスク戦略で期待値と勝率が逆転する理由

    ゴウカライズ編集部
    6 June, 2026

    この記事では、第VIII部の導入として「期待値の高い側が必ず勝つわけではない」という事実を、シンプルな2択ゲームで確認します。

    期待値と勝率は別の量、というのを、感覚的にも数値的にも掴んでおきます。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    「期待値が高ければ有利」は本当か

    ギャンブルや確率ゲームの場面で「期待値が高い方が有利」とよく言われます。長期で繰り返すならその通りですが、 1回ごとの勝負では、期待値が高くても勝つ確率は低い ことが普通に起こります。

    これは「期待値は長期平均」「勝率は1回試行の確率」という、別物どうしの混同から来る誤解です。例題で確かめます。

    例題:ゲームAとゲームBの比較

    次の2つのゲームを考える。
    ・ゲームA:確率 $${1}$$ で $${100}$$ 円もらえる。
    ・ゲームB:確率 $${\frac{1}{10}}$$ で $${1100}$$ 円もらえる。それ以外は $${0}$$ 円。

    (1) 両ゲームの「得る金額」の期待値をそれぞれ求めよ。
    (2) ゲームAとゲームBを各1回プレイしたとき、ゲームBの獲得額がゲームAより大きくなる確率を求めよ。

    (1) ゲームAの獲得額 $${X_A = 100}$$(確定)なので $${E(X_A) = 100}$$。

    ゲームBの獲得額 $${X_B}$$ は $${1100}$$ を確率 $${\frac{1}{10}}$$、 $${0}$$ を確率 $${\frac{9}{10}}$$ でとる。

    $$
    E(X_B) = 1100\cdot \frac{1}{10} + 0\cdot \frac{9}{10} = 110.
    $$

    期待値だけ見ると、 ゲームBの方が10円分有利 に見えます。

    (2) ゲームBの獲得額がAより大きいのは、ゲームBで $${1100}$$ 円が出た場合のみ(Aは確定で $${100}$$ 円)。その確率は $${\frac{1}{10}}$$ です。

    つまり、 1回プレイすると、ゲームBがゲームAを上回る確率はたった $${\frac{1}{10}}$$ 。9割の確率では、ゲームBの結果(0円)はゲームAの100円より低くなります。

    何が起こっているか

    期待値は「平均的にいくら得るか」を表しますが、その平均は分布の偏り次第で大きく姿が変わります。

    ゲームBの分布:

    • $${1100}$$ 円が確率 $${\frac{1}{10}}$$ で出る(大きな当たり)
    • $${0}$$ 円が確率 $${\frac{9}{10}}$$ で出る(外れ)

    これを長期にプレイすれば、 $${1100\cdot \frac{1}{10} = 110}$$ 円が1回あたりの平均、つまり10回プレイすれば $${1100}$$ 円が1回出て他の9回は0円で、合計1100円。1回あたり110円という期待値が実現します。

    ところが 1回だけのプレイ では、その「平均」は実現せず、9割の確率で0円、1割の確率で1100円のどちらかしか起こりません。ゲームAの100円より上回るのは、ゲームBで当たりが出たときだけです。

    期待値と勝率の混同を避ける

    ギャンブルやスポーツのアナログで「期待リターンが高い戦略」を選ぶときは、 「1試合あたりの勝率」「長期的な期待値」 を分けて考える必要があります。両者は連動しません。

    • 期待値が高くても、ばらつきが大きいと1回ごとには勝ちにくい(ハイリスク・ハイリターン)
    • 期待値が低くても、ばらつきが小さいと勝ちやすい(ローリスク・ローリターン)

    期待値だけで「有利」「不利」を判断すると、リスクの高い側を「一発逆転」で選んだ気になり、現実には9割の場面で負ける、ということが起こります。

    ハイリスク・ハイリターンの一般構造

    ゲームBは「確率 $${p}$$ で $${\frac{C}{p}}$$ 円もらえる」(残りは0円)という形でした。期待値は $${C}$$ で一定ですが、

    • $${p}$$ が小さいほど、当たりの確率は減るが当たりの額は大きくなる
    • $${p}$$ が大きいほど、当たりの確率は上がるが当たりの額は小さくなる

    ゲームBが $${p = \frac{1}{10}}$$、ゲームAが $${p = 1}$$ の極端なケース。期待値はそれぞれ100と110で近いものの、分布の形は大きく違います。

    この構造は、入試の確率問題よりも実生活(投資、起業、進路選択)でこそ大事な考え方です。 「平均的なリターン」だけでなく「分布の形」を見る 習慣をつけてください。

    例題:もう少し複雑な比較

    ゲームC:確率 $${\frac{1}{2}}$$ で $${200}$$ 円もらえる。それ以外は $${0}$$ 円。
    ゲームD:確率 $${\frac{1}{3}}$$ で $${300}$$ 円もらえる。それ以外は $${0}$$ 円。

    期待値とともに、両ゲームを1回ずつプレイしたときに $${\text{C}}$$ の獲得額が $${\text{D}}$$ より大きい確率も求めよ。

    $${E(X_C) = 200\cdot \frac{1}{2} = 100}$$、 $${E(X_D) = 300\cdot \frac{1}{3} = 100}$$。期待値は同じ100。

    $${X_C > X_D}$$ となるのは、「Cで $${200}$$ が出て、Dで $${0}$$ が出る」場合:

    $$
    P(X_C = 200, X_D = 0) = \frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3} = \frac{1}{3}.
    $$

    $${X_C < X_D}$$ となるのは、「Cで $${0}$$ が出て、Dで $${300}$$ が出る」場合:

    $$
    P(X_C = 0, X_D = 300) = \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{3} = \frac{1}{6}.
    $$

    $${X_C = X_D}$$(両方0、または両方ともに該当する組はない)の確率は

    $$
    P(X_C = 0, X_D = 0) = \frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3} = \frac{1}{3}.
    $$

    確認 :$${\frac{1}{3} + \frac{1}{6} + \frac{1}{3} + (X_C=200, X_D=300の確率 \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{3} = \frac{1}{6})= \frac{2}{6} + \frac{1}{6} + \frac{2}{6} + \frac{1}{6} = 1}$$。

    $${P(X_C > X_D) = \frac{1}{3}}$$、 $${P(X_C < X_D) = \frac{1}{6}}$$。 期待値は同じなのに、Cが勝つ確率はDの2倍 という偏りが出ます。

    「期待値が同じでも勝ちやすさが異なる」、 ローリスクの側が1回勝負では有利になりがち 、という現象が見えます。

    練習問題

    5000円を出資できる投資が2つある。
    ・投資X:確率 $${0.8}$$ で $${7000}$$ 円戻る(利益 $${+2000}$$ 円)。 $${0.2}$$ で $${0}$$ 円(損失 $${-5000}$$ 円)。
    ・投資Y:確率 $${0.5}$$ で $${12000}$$ 円戻る(利益 $${+7000}$$ 円)。 $${0.5}$$ で $${0}$$ 円(損失 $${-5000}$$ 円)。

    (a) 各投資のリターン(戻る金額 $${-}$$ 5000円)の期待値を求めよ。
    (b) どちらが利益を出す確率が高いか。

    (a) $${E(\text{投資X}) = 0.8\cdot 2000 + 0.2\cdot (-5000) = 1600 - 1000 = 600}$$ 円。

    $${E(\text{投資Y}) = 0.5\cdot 7000 + 0.5\cdot (-5000) = 3500 - 2500 = 1000}$$ 円。

    期待値はYの方が大きい(1000 vs 600)。

    (b) 利益を出す確率は、

    • 投資X:$${0.8}$$
    • 投資Y:$${0.5}$$

    利益を出す確率はXの方が高いです。

    期待値が高いのはY、勝率が高いのはX。 どちらを選ぶかは、判断する側がどちらを優先するか次第 で、機械的に「期待値が高い方」とは決まりません。

    入試の確率問題では「期待値を求めよ」と「勝つ確率を求めよ」が並列に問われることがあり、 両方の答えが食い違うことが普通に起こる ことを意識して読み解いてください。次回の京大1997年は、まさにこのテーマを正面から扱った名問題です。

    次に読む記事

    次回は京都大学1997年度(前期)理系の名問題を扱います。「 $${E_A > E_B}$$ なのに $${P_A < P_B}$$」という、期待値と勝率の不一致を具体的な確率の帯として求める問題です。本シリーズの集大成のひとつにあたる回です。

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