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【期待値マスター講座49】東北大2025(数学)解説!「3で割り切れる」戻り確率を解く!
この記事では、東北大学2025年度(前期、文系第1問・理系第1問共通)を扱います。
コインとさいころを使った2段階の試行を ${n}$ 回繰り返したとき、原点に戻る確率を求める問題です。「変位を二値化する」見方で、二項分布の話に翻訳します。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
問題
原点を出発点として数直線上を動く点 P がある。試行 $${()}$$ を次のように定める。
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$${()}$$:1枚の硬貨を1回投げて、
・表が出た場合は点 P を正の向きに $${1}$$ だけ進める。
・裏が出た場合は1個のさいころを1回投げ、奇数の目が出た場合は点 P を正の向きに $${1}$$ だけ進め、偶数の目が出た場合は点 P を負の向きに $${2}$$ だけ進める。
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硬貨の表裏の確率はそれぞれ $${\frac{1}{2}}$$、さいころの各目の確率は $${\frac{1}{6}}$$。
(1) 試行 $${(*)}$$ を3回繰り返したとき、点 P が原点にもどっている確率を求めよ。
(2) 6回繰り返したとき、原点にもどっている確率を求めよ。
(3) $${n}$$ を3で割り切れない正の整数とする。 $${n}$$ 回繰り返したとき、原点にもどっている確率を求めよ。
1回の変位を二値化する
試行 $${(*)}$$ の中身は「硬貨 → 必要ならさいころ」と入れ子になっていますが、 動く量 を変位 $${D}$$ で書けば、 $${D\in{+1, -2}}$$ の二値です。
- $${D = +1}$$ となるのは、「表」(確率 $${\frac{1}{2}}$$)または「裏 → 奇数」(確率 $${\frac{1}{2}\cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{4}}$$)。
- $${D = -2}$$ となるのは、「裏 → 偶数」(確率 $${\frac{1}{2}\cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{4}}$$)。
合算して
$$
P(D = +1) = \frac{1}{2} + \frac{1}{4} = \frac{3}{4},\quad P(D = -2) = \frac{1}{4}.
$$
これで、1回の試行は 「確率 $${\frac{3}{4}}$$ で $${+1}$$、 $${\frac{1}{4}}$$ で $${-2}$$」 という単純な二値変位に翻訳できました。
何回後の位置を書き下す
$${n}$$ 回の試行で $${+1}$$ が出た回数を $${a}$$、 $${-2}$$ が出た回数を $${b}$$ とおくと、 $${a + b = n}$$ で
$$
S_n = a\cdot 1 + b\cdot (-2) = a - 2b = (n - b) - 2b = n - 3b.
$$
$${S_n = 0}$$ となる必要十分条件は $${b = \frac{n}{3}}$$ (したがって $${a = \frac{2n}{3}}$$ )。 $${b}$$ が整数となるためには $${n}$$ が3の倍数であることが必要です。
(1) $${n = 3}$$ のとき
$${b = 1}$$、 $${a = 2}$$ なので、 $${n}$$ 回中ちょうど $${b}$$ 回 $${-2}$$ が出る確率は二項分布で
$$
P(b = 1) = \binom{3}{1}\Bigl(\frac{3}{4}\Bigr)^2\Bigl(\frac{1}{4}\Bigr)^1 = 3\cdot \frac{9}{16}\cdot \frac{1}{4} = \frac{27}{64}.
$$
(2) $${n = 6}$$ のとき
$${b = 2}$$、 $${a = 4}$$ で
$$
P(b = 2) = \binom{6}{2}\Bigl(\frac{3}{4}\Bigr)^4\Bigl(\frac{1}{4}\Bigr)^2 = 15\cdot \frac{81}{256}\cdot \frac{1}{16} = \frac{1215}{4096}.
$$
(3) $${n}$$ が3で割り切れないとき
$${b = \frac{n}{3}}$$ が整数でないので、 $${S_n = 0}$$ となる試行結果が存在しない。
$$
P = 0.
$$
二値化が要点
この問題は、 試行の中身が2段階に分かれていても、結果の変位だけ見れば二値の確率変数になる ことに気づくのが要点です。
$${(*)}$$ の手続きは「硬貨 → さいころ」と複雑ですが、 $${D \in {+1, -2}}$$ の二値とその確率さえ抑えれば、 $${n}$$ 回繰り返した話は 独立な二値の和 = 二項分布の問題に翻訳できます。
樹形図で書くと
- 硬貨表( $${\frac{1}{2}}$$ ) → $${D = +1}$$
- 硬貨裏( $${\frac{1}{2}}$$ ) → さいころ
- 奇数( $${\frac{1}{2}}$$ ) → $${D = +1}$$
- 偶数( $${\frac{1}{2}}$$ ) → $${D = -2}$$
樹の葉を集約すれば、 $${D = +1}$$ が $${\frac{1}{2} + \frac{1}{4} = \frac{3}{4}}$$、 $${D = -2}$$ が $${\frac{1}{4}}$$。これが二値化の正体です。
(3) のしくみ:mod 3 の論証
$${S_n = n - 3b}$$ なので、3を法として
$$
S_n \equiv n \pmod 3.
$$
$${S_n = 0}$$ となるには $${n\equiv 0\pmod 3}$$ が 必要 。これは確率計算以前の整数論的な制約です。
$${n\not\equiv 0\pmod 3}$$ ならどんな試行結果でも $${S_n \ne 0}$$ になるので、 確率は0 。
「平均的にはどう動くか」と「特定の値をピタリと取るか」は別の話、というのが本問の見どころです。
補足:1回の変位の期待値
期待値の話とのつながりとして、 $${1}$$ 回の変位の期待値を出してみます。
$$
E(D) = 1\cdot \frac{3}{4} + (-2)\cdot \frac{1}{4} = \frac{3}{4} - \frac{1}{2} = \frac{1}{4}.
$$
線形性から $${E(S_n) = \frac{n}{4}}$$ で、 平均的には P は右に進む 。
それでも、ピタリと原点に戻る確率は別の話で、 $${n\not\equiv 0\pmod 3}$$ では0、 $${n\equiv 0\pmod 3}$$ でも上で計算したように小さい値、というのが現実です。
「平均的な振る舞い」と「特定の値をとる確率」を切り分ける良い練習になります。
練習問題
同じ試行 $${(*)}$$ を9回繰り返したとき、原点にもどっている確率を求めよ。
$${n = 9}$$ で $${b = 3}$$、 $${a = 6}$$。
$$
P(b = 3) = \binom{9}{3}\Bigl(\frac{3}{4}\Bigr)^6\Bigl(\frac{1}{4}\Bigr)^3 = 84\cdot \frac{729}{4096}\cdot \frac{1}{64} = \frac{84\cdot 729}{4096\cdot 64} = \frac{61236}{262144}.
$$
約分して $${\frac{15309}{65536}}$$。
数値としては約 $${0.234}$$。 $${n}$$ が3倍と6倍では戻る確率が大きく違うこと( $${\frac{27}{64}\approx 0.42, \frac{1215}{4096}\approx 0.30}$$ )と合わせて、 $${n}$$ が大きくなるほど戻る確率は減る 傾向が見えます。
平均は右に進むので、 $${n}$$ が大きくなると点Pは右にどんどん離れていき、原点に戻りにくくなる、というのが自然な解釈です。
次に読む記事
次回は、一橋大学2012年度(前期)第5問を扱います。さいころの置き直しの問題で、 「向かい合う面の和が7」という性質を、3つの対 $${{1, 6}, {2, 5}, {3, 4}}$$ に集約する という見方で、6状態の漸化式を3状態に圧縮します。
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