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【期待値マスター講座25】「二項分布の期待値np」も 線形性で"一瞬"で導く!
この記事では、確率の単元で必ず出てくる「二項分布の期待値 ${E = np}$」を、指示関数の発想で2行で導きます。
教科書の公式として暗記するのではなく、 その場で導出できる定理 として身につけてください。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
二項分布のおさらい
ある試行で事象 $${A}$$ が起こる確率が $${p}$$ とします。独立に試行を $${n}$$ 回繰り返したとき、 $${A}$$ が起こった回数を $${X}$$ とします。このとき $${X}$$ は 二項分布 $${B(n, p)}$$ に従う と言い
$$
P(X = k) = \binom{n}{k} p^k (1 - p)^{n-k}\quad (k = 0, 1, \ldots, n).
$$
定義通り期待値を計算すると、二項定理を経由して $${E(X) = np}$$ に到達します。途中で $${k\binom{n}{k} = n\binom{n-1}{k-1}}$$ という変形を使い、和を $${m = k - 1}$$ で置き換え…と、手順は確立されていますが、計算量はそれなりです。
別ルートを見ます。
例題:成功回数
ある試行で事象 $${A}$$ が起こる確率が $${p}$$ とする。独立に $${n}$$ 回試行を繰り返したとき、 $${A}$$ が起こった回数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。
$${k}$$ 回目の試行で $${A}$$ が起こる事象を $${A_k}$$ とおきます。 $${X}$$ は「 $${A}$$ が起こった回数」なので
$$
X = \sum_{k=1}^{n} I_{A_k}.
$$
各 $${P(A_k) = p}$$ なので、線形性で
$$
E(X) = \sum_{k=1}^{n} P(A_k) = np.
$$
答えは $${E(X) = np}$$。これだけです。
公式の意味を読み直す
$${E = np}$$ という公式の意味は、 「成功確率 $${p}$$ の試行を $${n}$$ 回繰り返したら、成功回数の平均は $${n\cdot p}$$」 という、直観そのままの結論です。
- $${n}$$ 回試行する
- 各回が独立に確率 $${p}$$ で成功
- 期待される成功回数は、回数 × 確率
別に「二項分布」という個別の分布だけで成り立つ式ではありません。 各回の成功確率が常に $${p}$$ なら、独立であろうとなかろうと $${E(X) = np}$$ になります(前回の記事22で言及)。二項分布の特殊性は分散や具体的な分布形にあって、期待値の式そのものは独立性すら要りません。
入試での実用
入試で「コインを10回投げて表が出る回数の期待値」「さいころを6回振って6の目が出る回数の期待値」のような問題が出たら、二項分布の公式に頼らず、指示関数の発想で
- $${E = }$$ 試行回数 $${\times}$$ 1回あたりの成功確率
を即座に書き下せます。
たとえば、
- コイン10回、表の期待回数:$${10\cdot \frac{1}{2} = 5}$$
- さいころ6回、6の目の期待回数:$${6\cdot \frac{1}{6} = 1}$$
- カード52枚から5枚引いて(復元)、ハートの期待枚数:$${5\cdot \frac{1}{4} = \frac{5}{4}}$$
どれも線形性の3秒計算で出ます。
二項分布の派生:少しひねった例
公正なさいころを5回振ったとき、「素数の目(2, 3, 5)」が出た回数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。
「素数の目」が出る確率は $${\frac{3}{6} = \frac{1}{2}}$$。 $${X}$$ は $${B(5, \frac{1}{2})}$$ に従う確率変数。
指示関数を使うと、 $${k}$$ 回目で素数の目が出る事象を $${A_k}$$ として $${X = \sum_{k=1}^{5} I_{A_k}}$$、 $${P(A_k) = \frac{1}{2}}$$、線形性で
$$
E(X) = 5\cdot \frac{1}{2} = \frac{5}{2}.
$$
「素数の目」のような条件が混ざっても、 個別の試行ごとの成功確率さえ分かれば 、期待値はすぐに出ます。
公式暗記より「導出できる」を優先する
二項分布の期待値 $${E = np}$$ は、教科書に必ず載っている公式ですが、 公式を覚えるよりも、いつでもその場で導出できる状態 を作っておくほうが、入試では強いです。
理由は2つあります。
- 「指示関数 + 線形性」という、二項分布以外でも使える汎用ツールが身につく
- 設定が少し変わって独立でなくなった場合も、同じ発想で対応できる
たとえば、超幾何分布(非復元抽出)の期待値も、同じく「個別の指示関数の和」として $${\frac{nm}{N}}$$ という形で出せます(第III部で扱った通り)。 道具を一つ持っておくと、似た問題群を全部押さえられる という収益性があります。
練習問題
不公平な硬貨があり、表が出る確率が $${\frac{2}{3}}$$、裏が $${\frac{1}{3}}$$ とする。この硬貨を独立に12回投げたとき、表が出る回数の期待値を求めよ。
$${k}$$ 回目で表が出る事象を $${A_k}$$ として $${P(A_k) = \frac{2}{3}}$$。線形性で
$$
E(X) = 12\cdot \frac{2}{3} = 8.
$$
答えは $${E(X) = 8}$$。「12回中、平均8回は表」というのは、表の確率が $${\frac{2}{3}}$$ であることから自然な結論です。 公平でない試行でも、同じ公式が同じように使える ところを確認しておいてください。
次に読む記事
次回は、 クーポンコレクター問題 を扱います。「 $${n}$$ 種類のクーポンを集めるとき、 $${m}$$ 回引いたら何種類集まるか」の期待値を、指示関数で出します。前々回の「種類数の期待値」の一般化で、確率の世界では古典的な題材です。
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