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【期待値マスター講座44】幾何分布の期待値1/pを漸化式で導く

    ゴウカライズ編集部
    7 June, 2026

    この記事では、「公正なコインを表が出るまで投げ続ける」ときの試行回数の期待値を、漸化式で扱います。

    幾何分布の期待値 ${E(X) = \frac{1}{p}}$ という古典的な結果を、無限和を直接計算せずに出します。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    問題

    公正なコインを表が出るまで投げ続ける。投げる回数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。

    「初めて表が出るまで」というのは、 $${X = 1, 2, 3, \ldots}$$ という可算無限個の値をとる確率変数です。定義通り

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} k\cdot P(X = k) = \sum_{k=1}^{\infty} k\cdot \Bigl(\frac{1}{2}\Bigr)^k
    $$

    を計算しても出ますが、無限和の計算になります。漸化式アプローチを使うと、無限和を直接扱わずに済みます。

    漸化式で解く

    1回目に表が出る確率は $${\frac{1}{2}}$$(その場合 $${X = 1}$$ )。1回目が裏の場合(確率 $${\frac{1}{2}}$$)、 それ以降は同じゲームを最初からやり直す のと同じです。

    期待値で書くと

    $$
    E(X) = \frac{1}{2}\cdot 1 + \frac{1}{2}\cdot (1 + E(X)).
    $$

    「1回目で表が出る場合は $${X = 1}$$」「1回目が裏なら、すでに1回投げたうえで、残りの平均は同じ $${E(X)}$$」というのを式にしただけです。

    整理します。

    $$
    \begin{aligned}
    E(X)
    &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + \frac{1}{2} E(X) \\
    &= 1 + \frac{1}{2} E(X).
    \end{aligned}
    $$

    $${E(X) - \frac{1}{2} E(X) = 1}$$ より $${\frac{1}{2} E(X) = 1}$$、すなわち $${E(X) = 2}$$。

    答えは $${E(X) = 2}$$。

    「初期状態に戻る」型の問題

    ここで使ったテクニックは、 「未決着なら初期状態に戻る」 → 期待値そのものについて方程式を立てる というものです。

    この発想は、 同じゲームを繰り返す タイプの問題で広く使えます。たとえば

    • さいころを1の目が出るまで振る → $${E(X) = 6}$$(前回の練習問題)
    • 一度ボタンを押せば確率 $${p}$$ で当たる装置を、当たるまで押す → $${E(X) = \frac{1}{p}}$$

    これらは 幾何分布の期待値 $${E = \frac{1}{p}}$$ という一般式に集約されます。

    一般化:幾何分布の期待値

    定理:「1回の試行で確率 $${p}$$ で成功する」を独立に繰り返して、初めて成功するまでの試行回数を $${X}$$ とする。 $${E(X) = \frac{1}{p}}$$。

    漸化式で

    $$
    E(X) = p\cdot 1 + (1 - p)\cdot (1 + E(X))
    $$

    を整理して

    $$
    E(X) = 1 + (1 - p) E(X) \iff p\cdot E(X) = 1 \iff E(X) = \frac{1}{p}.
    $$

    「成功確率の逆数」が平均試行回数、というのが幾何分布の中心的な事実です。直観的にも、 $${p}$$ が小さいほど成功までに時間がかかる、というのと整合します。

    定義通り計算した場合との比較

    参考までに、定義通り無限和で計算するとどうなるか見ておきます。

    $${P(X = k) = (1 - p)^{k-1} p}$$ なので

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} k (1-p)^{k-1} p.
    $$

    これは等差等比型の無限和で、 $${\sum_{k=1}^{\infty} k r^{k-1} = \frac{1}{(1-r)^2}}$$( $${|r| < 1}$$ )から

    $$
    E(X) = p\cdot \frac{1}{p^2} = \frac{1}{p}.
    $$

    漸化式と同じ値です。 漸化式の方が無限和の計算を回避できる ぶん、答案で書きやすいです。

    例題:成功するまでの試行回数

    当たりが出る確率が $${\frac{1}{4}}$$ のくじを、当たりが出るまで引き続ける(引いたら戻す)。引く回数の期待値を求めよ。

    幾何分布で $${p = \frac{1}{4}}$$ なので $${E(X) = \frac{1}{p} = 4}$$。

    平均4回引けば当たりが出る、という結果。これは式を当てはめるだけで一瞬で出ます。

    漸化式の方が「自然」な場合

    漸化式と tail-sum のどちらでも出る問題ですが、 次のような場面では漸化式の方が自然 です。

    • 「停止条件」が複雑なゲーム(ある状態に達したら終了など)
    • 「複数の状態」を区別する必要がある場合
    • 「途中でルールが変わる」ような設定

    具体例は次回以降のランダムウォーク、2人じゃんけんで扱います。

    練習問題

    1から $${n}$$ までの番号が書かれたカード $${n}$$ 枚から1枚を引いて番号を確認し、戻す試行を独立に繰り返す。「1の番号」が初めて出るまでの試行回数 $${X}$$ の期待値を求めよ。

    「1の番号」を引く確率は $${\frac{1}{n}}$$。幾何分布で

    $$
    E(X) = \frac{1}{1/n} = n.
    $$

    平均 $${n}$$ 回引けば1が出る、という結果。これも一瞬で出ます。

    「 $${n}$$ 種類のクーポンを集める」問題で1枚目を集めるまでの平均回数が $${\frac{n}{n} = 1}$$、2枚目までが $${1 + \frac{n}{n-1}}$$、…と進んで、最終的に全 $${n}$$ 種類集めるまでの期待回数が $${n H_n}$$(クーポンコレクター問題の完成形)になります。これは「初めて新種が出るまで」の幾何分布の和、と読めます。詳しくは記事46で扱う題材の応用です。

    次に読む記事

    次回は、1次元の ランダムウォーク を扱います。位置 $${i}$$ から、両端(位置0と位置 $${n}$$ )のどちらかに到達するまでの期待回数 $${e_i}$$ について、漸化式 $${e_i = 1 + \frac{1}{2}e_{i-1} + \frac{1}{2}e_{i+1}}$$ を立てて解きます。答えは $${e_i = i(n-i)}$$ という綺麗な形になります。

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