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【期待値マスター講座37】E(X²)≠E(X)×E(X)とならない理由は!? 積の公式が使えない理由を知る
この記事では、独立でない確率変数の積の期待値 ${E(XY)}$ が、 ${E(X)\cdot E(Y)}$ とどれくらい違うかを、 ${Y = X^2}$ という極端な従属関係で具体的に計算します。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
例題
さいころを1回振り、出た目を $${X}$$ とする。 $${Y = X^2}$$ とおく。
(1) $${E(X)}$$ と $${E(Y)}$$ を求めよ。
(2) $${E(XY)}$$ を求めよ。
(3) $${E(XY) = E(X)E(Y)}$$ が成り立つかどうか確認せよ。
$${Y = X^2}$$ は $${X}$$ の関数なので、 $${X}$$ が決まれば $${Y}$$ も決まります。 極端な従属関係 です。
(1) $${E(X)}$$ と $${E(Y)}$$
$$
E(X) = \frac{1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6}{6} = \frac{21}{6} = \frac{7}{2}.
$$
$${Y = X^2}$$ の期待値は、 $${X^2}$$ の値ごとに確率を掛けて足す形で
$$
E(Y) = E(X^2) = \frac{1 + 4 + 9 + 16 + 25 + 36}{6} = \frac{91}{6}.
$$
(2) $${E(XY)}$$
$${XY = X\cdot X^2 = X^3}$$ なので
$$
E(XY) = E(X^3) = \frac{1 + 8 + 27 + 64 + 125 + 216}{6} = \frac{441}{6} = \frac{147}{2}.
$$
(3) $${E(X)E(Y)}$$ と比較
$$
E(X)\cdot E(Y) = \frac{7}{2}\cdot \frac{91}{6} = \frac{637}{12}.
$$
通分して比較すると
$$
E(XY) = \frac{147}{2} = \frac{882}{12},\quad E(X)E(Y) = \frac{637}{12}.
$$
$${\frac{882}{12} \ne \frac{637}{12}}$$ なので、 $${E(XY) \ne E(X)E(Y)}$$ 。
差は
$$
E(XY) - E(X)E(Y) = \frac{882 - 637}{12} = \frac{245}{12}\approx 20.4.
$$
これが共分散 $${\mathrm{Cov}(X, Y)}$$ の値です。 $${X}$$ と $${Y = X^2}$$ は 強い正の相関 を持ちます。 $${X}$$ が大きければ $${X^2}$$ も大きいので当然です。
受験生がやりがちな誤論法
「 $${X}$$ が決まれば $${Y}$$ が決まるので、 $${E(XY) = E(X)E(Y)}$$」 ── これは 明確な誤り です。
独立性の定義は「値の決定」ではなく「 確率分布が積で分解できる 」こと(記事5)。 $${Y}$$ が $${X}$$ の関数で決まる場合、むしろ「最も従属している」状態で、独立とは正反対です。
「値が決まる」と「分布が独立」は別の話、と何度でも確認してください。
独立性チェック
念のため、独立性を定義に当てはめて確認します。 $${X = 1}$$ と $${Y = 1}$$ について
$$
P(X = 1, Y = 1) = P(X = 1) = \frac{1}{6}\quad (\because\ X = 1 \Rightarrow Y = 1)
$$
ですが
$$
P(X = 1)\cdot P(Y = 1) = \frac{1}{6}\cdot \frac{1}{6} = \frac{1}{36}.
$$
$${\frac{1}{6}\ne \frac{1}{36}}$$ なので独立ではありません。
積の公式が破れているのも、 同時分布が積に分解できない という独立性の破れから来ています。
共分散を計算してみる
ここで共分散の値を求めると、 $${V(X + Y)}$$ の計算が公式から出せます。
$$
\mathrm{Cov}(X, Y) = E(XY) - E(X)E(Y) = \frac{882 - 637}{12} = \frac{245}{12}.
$$
$${V(X) = \frac{35}{12}}$$(記事36)、 $${V(Y) = V(X^2) = E(X^4) - E(X^2)^2}$$。
$${E(X^4) = \frac{1 + 16 + 81 + 256 + 625 + 1296}{6} = \frac{2275}{6}}$$ なので
$$
V(Y) = \frac{2275}{6} - \Bigl(\frac{91}{6}\Bigr)^2 = \frac{2275}{6} - \frac{8281}{36} = \frac{13650 - 8281}{36} = \frac{5369}{36}.
$$
$${V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2 \mathrm{Cov}(X, Y) = \frac{35}{12} + \frac{5369}{36} + 2\cdot \frac{245}{12} = \frac{105 + 5369 + 1470}{36} = \frac{6944}{36} = \frac{1736}{9}}$$。
数値はやや煩雑ですが、 「独立でない場合は共分散項を必ず加える」 という手順が機械的に通ることが見えると思います。 $${V(X + Y)}$$ を計算する際は、まず $${X, Y}$$ の独立性を確認し、独立なら加法性、独立でなければ共分散項を計算、という分岐を頭に入れておいてください。
入試での実用
入試の答案で
$${X}$$ と $${Y}$$ が独立だから $${E(XY) = E(X)E(Y)}$$
と書くのは正しい(独立性を確認したうえで)。一方、
$${E(XY) = E(X)E(Y)}$$ だから $${X, Y}$$ は独立
と書くのは 誤り (無相関なだけかもしれない)。
「独立 $${\Rightarrow}$$ 無相関」は片方向の含意で、逆は別の議論が必要です。「独立か?」と聞かれたら、 同時分布が積に分解できるかを直接確認 するのが安全です。
練習問題
確率変数 $${X}$$ が $${{-1, 0, 1}}$$ をそれぞれ確率 $${\frac{1}{3}}$$ でとり、 $${Y = X^2}$$ とおく。
(a) $${E(X)}$$、 $${E(Y)}$$、 $${E(XY)}$$ をそれぞれ求めよ。
(b) $${X, Y}$$ は無相関か。独立か。
(a) $${E(X) = (-1 + 0 + 1)\cdot \frac{1}{3} = 0}$$。 $${Y}$$ は $${{0, 1}}$$ をとり、 $${P(Y=0) = \frac{1}{3}}$$、 $${P(Y=1) = \frac{2}{3}}$$ なので $${E(Y) = \frac{2}{3}}$$。 $${XY = X^3}$$ で $${E(X^3) = (-1 + 0 + 1)\cdot \frac{1}{3} = 0}$$。
(b) $${E(XY) = 0 = E(X)\cdot E(Y)}$$ なので 無相関 。一方、 $${P(X=0, Y=0) = P(X=0) = \frac{1}{3}}$$ で、 $${P(X=0)P(Y=0) = \frac{1}{3}\cdot \frac{1}{3} = \frac{1}{9}}$$ と一致しないので 独立ではありません 。
「無相関だが独立でない」典型例(記事7でも触れた)です。 「無相関 $${\Rightarrow}$$ 独立」が一般には成り立たない ことを、もう一度ここで実感してください。
次に読む記事
次回は、ここまで何度か登場した 共分散 を改めて整理します。 $${\mathrm{Cov}(X, Y) = E(XY) - E(X)E(Y)}$$ の符号・大きさが、 $${X}$$ と $${Y}$$ の関係性をどう表すかを、いくつかの例で見ます。
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