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【期待値マスター講座55】「最大-中央値」の期待値が(n+1)/4になることを証明する
この記事では、第XI部の自作演習2題目として「 ${{1, \ldots, n}}$ から3個取り出した最大値と中央値の差」の期待値を扱います。順序統計量の公式 ${E(X_{(r)}) = \frac{r(n+1)}{k+1}}$ を実戦で使う回です。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
問題
$${n\ge 3}$$ とする。正の整数 $${n}$$ について、 $${1}$$ から $${n}$$ までの番号がついたカード各々1枚を袋に入れる。無作為に3枚を同時に取り出したとき、取り出された数のうち最大値を $${M}$$、中央値を $${K}$$ とする。 $${E(M - K)}$$ を $${n}$$ で表せ。
「3枚を同時に取り出す」ので $${n\ge 3}$$ が条件です。 $${n = 1, 2}$$ では「3枚を同時に取り出す」操作自体が定義できません。
線形性から $${E(M - K) = E(M) - E(K)}$$。 $${M}$$ と $${K}$$ は同じ試行から作られた確率変数なので独立ではありませんが、線形性は独立性に依存しないので問題ありません。
$${E(M)}$$ と $${E(K)}$$
第V部の記事28(または第X部の記事52)で出した順序統計量の公式
$$
E(X_{(r)}) = \frac{r(n+1)}{k+1}
$$
を使います。「 $${{1, 2, \ldots, n}}$$ から $${k}$$ 個取り出して小さい順に並べたとき、 $${r}$$ 番目の数の期待値」です。
$${k = 3}$$ の場合:
- 最小値 $${L = X_{(1)}}$$ :$${E(L) = \frac{n+1}{4}}$$
- 中央値 $${K = X_{(2)}}$$ :$${E(K) = \frac{2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{2}}$$
- 最大値 $${M = X_{(3)}}$$ :$${E(M) = \frac{3(n+1)}{4}}$$(京大2026年と同じ式)
差を取る
$$
E(M - K) = \frac{3(n+1)}{4} - \frac{n+1}{2} = \frac{3(n+1) - 2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{4}.
$$
答えは $${E(M - K) = \frac{n+1}{4}}$$。
ついでに、参考までに $${E(M - L) = \frac{3(n+1)}{4} - \frac{n+1}{4} = \frac{2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{2}}$$、 $${E(K - L) = \frac{n+1}{2} - \frac{n+1}{4} = \frac{n+1}{4}}$$。
3つの順序統計量 $${L, K, M}$$ が 「全体長さを4等分した位置」 $${\frac{n+1}{4}, \frac{2(n+1)}{4}, \frac{3(n+1)}{4}}$$ に均等に並ぶので、隣接同士の差はいずれも $${\frac{n+1}{4}}$$ となります。
数値で確認
具体的に小さな $${n}$$ で見ます。
- $${n = 3}$$ :必ず $${{1, 2, 3}}$$ の3枚で $${L = 1, K = 2, M = 3}$$。 $${E(M - K) = 1}$$。公式 $${\frac{4}{4} = 1}$$ と一致
- $${n = 4}$$ :$${E(M - K) = \frac{5}{4} = 1.25}$$
- $${n = 7}$$ :$${E(M - K) = 2}$$
- $${n = 100}$$ :$${E(M - K) = \frac{101}{4} = 25.25}$$
「 $${n}$$ が大きくなるとともに、最大と中央値の差も比例的に大きくなる」というのが分かります。
順序統計量の公式の意味
$${E(X_{(r)}) = \frac{r(n+1)}{k+1}}$$ という公式は、 $${n + 1}$$ を $${k + 1}$$ 等分した境界の $${r}$$ 番目 にあたります。
直観的には、 $${1}$$ から $${n}$$ までの $${n}$$ 個を $${k}$$ 個に分割するとき、ランダムに $${k}$$ 個を選ぶと 均等な間隔の位置を取りやすい 、という分布の対称性から導かれます。
第VI部の記事35で導出を扱いましたが、本問は 「順序統計量を使って差の期待値を出す」 という応用例として、適しています。
別解:直接計算
公式を覚えていない場合、直接 $${E(M)}$$ と $${E(K)}$$ を tail-sum で出すこともできます。
$${M\ge j}$$ となるのは「3つのうち少なくとも1つが $${j}$$ 以上」、余事象「3つすべて $${j-1}$$ 以下」で
$$
P(M\ge j) = 1 - \frac{\binom{j-1}{3}}{\binom{n}{3}}.
$$
tail-sum で $${E(M) = \sum_j P(M\ge j) = \frac{3(n+1)}{4}}$$(記事52で計算)。
$${K\ge j}$$ となるのは「3つのうち少なくとも2つが $${j}$$ 以上」、つまり「 $${j}$$ 未満の値が $${0}$$ 個または $${1}$$ 個」。これも tail-sum で出せますが、計算がやや煩雑です。
順序統計量の公式 $${E(X_{(r)}) = \frac{r(n+1)}{k+1}}$$ を覚えておくと、 3つすべての期待値が一気に出る ので、入試の答案でも有利です。
練習問題
$${{1, 2, \ldots, n}}$$( $${n\ge 5}$$ )から無作為に5個を同時に取り出すとき、最大値と最小値の差 $${E(M - L)}$$ を $${n}$$ で表せ。
順序統計量の公式で $${k = 5}$$ の場合:
$$
E(M) = E(X_{(5)}) = \frac{5(n+1)}{6},\quad E(L) = E(X_{(1)}) = \frac{n+1}{6}.
$$
$$
E(M - L) = \frac{5(n+1)}{6} - \frac{n+1}{6} = \frac{4(n+1)}{6} = \frac{2(n+1)}{3}.
$$
「全体を6等分した5つ分の幅」が、5個取り出したときの「最大-最小」の期待値。 $${n}$$ が大きくなるとともに比例的に大きくなる、というのは直観どおりです。
「 $${k}$$ 個取り出したとき」の最大-最小の一般式は
$$
E(X_{(k)} - X_{(1)}) = \frac{(k-1)(n+1)}{k+1}.
$$
$${k = 3}$$ で $${\frac{2(n+1)}{4} = \frac{n+1}{2}}$$、 $${k = 5}$$ で $${\frac{4(n+1)}{6} = \frac{2(n+1)}{3}}$$、 $${k\to\infty}$$ で $${E(X_{(k)} - X_{(1)})\to n}$$(全体の長さ)と、極限値も整合します。
次に読む記事
次回は、シリーズ最後の自作演習として「公平なコインで表が連続して2回出るまで投げ続ける」ときの期待回数を扱います。 2状態のマルコフ連鎖 を使う典型題で、シリーズで身につけた漸化式の道具を最終確認します。あわせて、シリーズ全体の総括もこの記事で行います。
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