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【期待値マスター講座30】サイコロをn回振ったとき「隣り合う2回が同じ目」の回数を"指示関数"で求める

    ゴウカライズ編集部
    4 June, 2026

    この記事では、さいころを ${n}$ 回振って、隣り合う2回が同じ目になる回数の期待値を扱います。

    隣り合うペアに指示関数を立てる分解は、入試の数列・確率の融合題でも頻出するパターンです。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    問題

    さいころを $${n}$$ 回( $${n\ge 2}$$ )振る。 $${k}$$ 回目と $${k+1}$$ 回目が同じ目になる $${k\in{1, \ldots, n-1}}$$ の個数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。

    $${X}$$ がとる値は $${0}$$ から $${n-1}$$ のいずれか。たとえば $${n = 3}$$ で出目が $${(2, 2, 5)}$$ なら、1回目と2回目が同じなので $${X = 1}$$。 $${(3, 3, 3)}$$ なら $${X = 2}$$。

    指示関数で分解

    $${k\in{1, 2, \ldots, n-1}}$$ について

    $$
    I_k = \begin{cases} 1 & (k \text{ 回目と } k+1 \text{ 回目が同じ目}) \\ 0 & (\text{それ以外}) \end{cases}
    $$

    とおきます。 $${X = \sum_{k=1}^{n-1} I_k}$$ です。

    $${k}$$ 回目と $${k+1}$$ 回目が同じ目となる確率は、 $${k}$$ 回目が何の目であろうと、 $${k+1}$$ 回目がその目になる確率が $${\frac{1}{6}}$$ なので

    $$
    P(I_k = 1) = \frac{1}{6}.
    $$

    線形性で

    $$
    E(X) = (n - 1)\cdot \frac{1}{6} = \frac{n - 1}{6}.
    $$

    答えは $${E(X) = \frac{n-1}{6}}$$。

    $${I_k}$$ たちは実は独立

    ここで、 $${I_1, I_2, \ldots, I_{n-1}}$$ たちは「隣り合うペアが同じさいころを共有しているから独立でない」と早合点しそうになります。けれども、 公正なさいころの場合は、実は独立になります

    確かめてみます。さいころの各回の目を $${D_1, D_2, \ldots, D_n}$$ とし、 $${I_k = \mathbf{1}{{D_k = D{k+1}}}}$$ です。

    たとえば隣り合う2つ $${I_k, I_{k+1}}$$ について

    $$
    P(I_k = 1, I_{k+1} = 1) = P(D_k = D_{k+1} = D_{k+2}) = \frac{6}{6^3} = \frac{1}{36} = \frac{1}{6}\cdot \frac{1}{6}.
    $$

    ちゃんと $${P(I_k = 1)\cdot P(I_{k+1} = 1)}$$ と一致しています。

    さらに任意の $${0/1}$$ パターン $${(\varepsilon_1, \ldots, \varepsilon_{n-1})}$$ についても、最初の目は6通り、 $${I_k = 1}$$ なら次の目は1通り、 $${I_k = 0}$$ なら次の目は5通り…と順に数えられて、結局

    $$
    P(I_1 = \varepsilon_1, \ldots, I_{n-1} = \varepsilon_{n-1}) = \prod_{k=1}^{n-1} P(I_k = \varepsilon_k)
    $$

    が成立します。 公正さいころの隣接一致パターンは、まさにmutuallyに独立 です。

    なぜ独立なのに「同じさいころを共有しているから」と早合点したくなるか。それは「 $${D_{k+1}}$$ が $${I_k}$$ と $${I_{k+1}}$$ の両方に登場している」という、 変数の共有 に目が引かれるからです。けれど、確率分布の積分解という独立性の定義に立ち戻ると、ちゃんと積で書けています。 「変数が共通しているから従属」は短絡 、というのが今回の教訓です。

    ただし、この独立性は 「公正さいころ」「各回が独立」 という条件で初めて成り立ちます。たとえば「1の目が出やすい不公平さいころ」だと別の話になるかもしれませんが、公平な設計なら独立。

    独立性を確認しなくても期待値は出る

    そうは言っても、 期待値の線形性を使うだけなら独立性を確認する必要はありません 。 $${E(X) = \sum_k E(I_k)}$$ は独立でも従属でも成立するからです。

    それでも、ここで独立性が成り立っているという事実は、 分散の計算 や、後の発展問題で効いてきます。たとえば $${V(X)}$$ を求めるとき、 $${I_k}$$ たちが独立なら $${V(X) = \sum_k V(I_k) = (n-1)\cdot \frac{1}{6}\cdot \frac{5}{6} = \frac{5(n-1)}{36}}$$ と一気に出ます。

    別の応用:コインで同じ面が連続する回数

    公正なコインを $${n}$$ 回投げて、 $${k}$$ 回目と $${k+1}$$ 回目が同じ面になる $${k\in{1, \ldots, n-1}}$$ の個数を $${X}$$ とする。 $${E(X)}$$ を求めよ。

    さいころと同じ構造です。隣り合う2回が同じ面になる確率は $${\frac{1}{2}}$$(表表または裏裏)。線形性で

    $$
    E(X) = (n - 1)\cdot \frac{1}{2} = \frac{n - 1}{2}.
    $$

    $${n}$$ 回投げると、隣接ペアは $${n - 1}$$ 個あり、その半分くらいが同じ面、という直観どおりの結果です。

    ちなみに、表が連続して2回出るまで投げ続けたときの試行回数の期待値 $${E(N) = 6}$$ は、第IX部の漸化式編で扱います。一見似た問題でも、 「指示関数で個数」「漸化式で停止時刻」 で別の道具が必要、というのも頭に置いておいてください。

    練習問題

    1から $${n}$$ までの番号が書かれたカードが各1枚、合計 $${n}$$ 枚入った袋から1枚引いて番号を見て戻す試行を $${m}$$ 回繰り返す。 $${k}$$ 回目と $${k+1}$$ 回目が同じ番号になる $${k\in{1, \ldots, m-1}}$$ の個数 $${Y}$$ の期待値を求めよ。

    同じ構造です。隣接ペアが同じ番号になる確率は $${\frac{1}{n}}$$。線形性で

    $$
    E(Y) = (m - 1)\cdot \frac{1}{n} = \frac{m - 1}{n}.
    $$

    「 $${n}$$ 種類から $${m}$$ 回引く」型の問題で、隣接一致の期待値は $${\frac{m-1}{n}}$$ という形に集約されます。

    次に読む記事

    次回は、第V部の締めくくりとして モンモール問題 に戻ります。ヒット数 $${X}$$ の期待値は記事23で $${E(X) = 1}$$ と出しましたが、ここでは $${E(X^2)}$$ を計算します。 $${E(X)}$$ も $${V(X)}$$ も $${n}$$ に依らず一定、という驚きの結論にたどり着きます。

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