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【期待値マスター講座31】モンモールの問題! 平均と分散が常に1になる理由を証明する

    ゴウカライズ編集部
    4 June, 2026

    この記事では、第V部の締めくくりとしてモンモール問題に戻ります。

    ${n}$ 人がカードを配り直したときのヒット数 ${X}$ について、 ${E(X)}$ は記事23で1と出しましたが、ここでは ${E(X^2)}$ と ${V(X)}$ を計算します。

    ${n\ge 2}$ では両方とも ${n}$ に依らず一定、という結論にたどり着きます。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    問題のおさらい

    $${n}$$ 人がそれぞれ自分の名前を書いたカードを1枚ずつ用意し、集めて無作為に $${n}$$ 人に1枚ずつ配り直す。カードに書かれた名前と配られた人が一致した「当たり」の人数を $${X}$$ とする。

    $${n\ge 2}$$ とします。 $${n = 1}$$ は別扱いで、1人が必ず自分のカードを受け取るので $${X = 1}$$ が確定し、 $${E(X) = E(X^2) = V(X) = 0}$$。以下、 $${n\ge 2}$$ で議論します。

    $${E(X) = 1}$$(おさらい)

    $${i\in{1, \ldots, n}}$$ について「人 $${i}$$ が当たり」事象を $${A_i}$$ とおき、 $${I_i = I_{A_i}}$$。 $${X = \sum_{i=1}^{n} I_i}$$。

    カードと人の対応は $${n!}$$ 通りで等確率。人 $${i}$$ に自分のカードが配られるのは $${(n-1)!}$$ 通りなので $${P(A_i) = \frac{1}{n}}$$。線形性で

    $$
    E(X) = \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{n} = 1.
    $$

    これは記事23と同じです。

    $${E(X^2)}$$ を出す

    ここからが本題。 $${X^2 = \left(\sum_i I_i\right)^2}$$ を展開すると

    $$
    X^2 = \sum_{i} I_i^2 + \sum_{i\ne j} I_i I_j.
    $$

    第1項の $${I_i^2 = I_i}$$ なので

    $$
    \sum_i I_i^2 = \sum_i I_i = X,
    $$

    期待値を取ると $${E\bigl(\sum_i I_i^2\bigr) = E(X) = 1}$$。

    第2項の $${I_i I_j = I_{A_i\cap A_j}}$$(指示関数の積は共通事象の指示関数、記事21)で

    $$
    P(A_i\cap A_j) = \frac{(n-2)!}{n!} = \frac{1}{n(n-1)}\quad (n\ge 2).
    $$

    $${(i, j)}$$ で $${i\ne j}$$ となる組は $${n(n-1)}$$ 個あるので

    $$
    E\Bigl(\sum_{i\ne j} I_i I_j\Bigr) = n(n - 1)\cdot \frac{1}{n(n-1)} = 1.
    $$

    合計して

    $$
    E(X^2) = 1 + 1 = 2.
    $$

    これも $${n\ge 2}$$ なら $${n}$$ に依らず一定値2

    分散も $${n}$$ に依らず一定

    分散の公式 $${V(X) = E(X^2) - E(X)^2}$$ から

    $$
    V(X) = 2 - 1^2 = 1.
    $$

    $${V(X) = 1}$$ も $${n}$$ に依りません。

    つまり、 モンモール問題のヒット数 $${X}$$ は、 $${n\ge 2}$$ のあいだずっと $${E(X) = 1, V(X) = 1}$$ という、ほぼ「単位 $${\lambda = 1}$$ のポアソン分布」のような振る舞いをします。実際、 $${n\to\infty}$$ で $${X}$$ の分布は平均1のポアソン分布に近づくことが知られています。

    $${n = 1}$$ の例外を忘れない:このとき $${X = 1}$$ が確定するので $${E(X^2) = 1}$$、 $${V(X) = 0}$$ で、上の議論が成立する範囲ではありません。

    共分散も具体的に出る

    途中で計算した $${E(I_i I_j)}$$ から、共分散も出せます。

    $$
    \mathrm{Cov}(I_i, I_j) = E(I_i I_j) - E(I_i)E(I_j) = \frac{1}{n(n-1)} - \frac{1}{n}\cdot \frac{1}{n} = \frac{n - (n - 1)}{n^2(n-1)} = \frac{1}{n^2(n-1)}.
    $$

    $${i\ne j}$$ について常に同じ正の値です。 $${I_i}$$ たちは正の相関 を持っています。これは、人 $${i}$$ が当たれば残りの $${n-1}$$ 枚で他の人が当たる確率がわずかに上がる、という現象を反映しています。

    参考までに、ここから $${V(X) = \sum_i V(I_i) + \sum_{i\ne j}\mathrm{Cov}(I_i, I_j)}$$ を経由しても $${V(X) = 1}$$ が出ます。

    $${V(I_i) = P(A_i)(1 - P(A_i)) = \frac{1}{n}\bigl(1 - \frac{1}{n}\bigr) = \frac{n-1}{n^2}}$$ で

    $$
    V(X) = n\cdot \frac{n-1}{n^2} + n(n-1)\cdot \frac{1}{n^2(n-1)} = \frac{n-1}{n} + \frac{1}{n} = 1.
    $$

    きれいに1になります。

    「だれも当たらない」確率

    ヒット数が0になる、つまり「全員が自分以外のカードを受け取る」並び方の総数を モンモール数 $${D_n}$$ と呼びます。包除原理から

    $$
    P(X = 0) = \sum_{k=0}^{n}\frac{(-1)^k}{k!}.
    $$

    $${n\to\infty}$$ では

    $$
    P(X = 0)\to e^{-1}\approx 0.368.
    $$

    「 $${n}$$ が大きいときは、だれも当たらない確率はおよそ $${\frac{1}{e}}$$」と覚えておくと、感覚的にとらえやすいです。

    $${E(X) = 1}$$ なのに $${P(X = 0)\approx 0.368}$$ という、 「平均1人当たるが、約37%の確率で0人」 という分布の偏りを持つのが、モンモール問題の面白さです。

    練習問題

    5人がそれぞれ自分の名前を書いたカードを集めて、無作為に1枚ずつ配り直す。「自分のカードを受け取った人の数」 $${X}$$ について、 $${E(X)}$$、 $${E(X^2)}$$、 $${V(X)}$$ をそれぞれ求めよ。

    $${n = 5}$$。 $${n\ge 2}$$ なので

    $$
    E(X) = 1,\quad E(X^2) = 2,\quad V(X) = 1.
    $$

    「人数が違っても、平均1人・分散1で同じ」というのが、 $${n}$$ に依らない結論の現実的な意味です。 $${n = 5}$$ も $${n = 100}$$ も、平均的なヒット数の感覚は同じ、ということです。

    第V部のまとめ

    第V部では、指示関数の応用として7本の典型題を扱いました。

    • 二項分布 $${E = np}$$ を2行で導く
    • クーポンコレクター:種類数の期待値 $${n(1 - (1 - 1/n)^m)}$$
    • じゃんけんの勝者数 $${\frac{n}{3^{n-1}}}$$
    • 最大値の期待値(tail-sum で)
    • 階段状・条件付き加点
    • 連続する並びの個数 $${\frac{n-1}{6}}$$(実は $${I_k}$$ は独立)
    • モンモール問題:$${E(X) = 1, V(X) = 1}$$( $${n}$$ に依らず)

    どの問題も「数えたい量を $${0/1}$$ の和に分解 → 各部品の確率を出す → 線形性で和を取る」の3ステップで処理しました。第VI部以降では、これに加えてtail-sumや分布の積分解(独立性)など、新しい角度の道具を組み合わせていきます。

    次に読む記事

    次回からは第VI部「最大値・最小値編」です。 $${E(\max)\ne \max(E)}$$ という、受験生が最もよく勘違いするテーマから始めます。最大値や最小値を扱うときの基本姿勢を確認したうえで、tail-sumや独立同分布の組合せに進みます。

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