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【期待値マスター講座24】tail-sum公式で"期待値の線形性"が使いにくい 最大値の問題に対処する!

    ゴウカライズ編集部
    2 June, 2026

    この記事では、非負整数値の確率変数に対する tail-sum formula を扱います。

    期待値を「 ${X\ge k}$ となる確率の和」で表す、最大値・最小値の問題で頻出する公式です。

    シリーズ第1記事で京大2026年を解くのに使った道具を、定義から整理します。

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    シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。

    https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb


    ステートメント

    定理:$${X}$$ が非負整数値をとる確率変数のとき

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} P(X\ge k).
    $$

    「期待値は、各 $${k}$$ について『 $${X}$$ が $${k}$$ 以上になる確率』を全部足したもの」というのが内容です。 $${X}$$ が有限の上限を持つ場合( $${X\le N}$$ となる定数 $${N}$$ がある)は、和は $${k = 1}$$ から $${N}$$ までの有限和になります。

    証明:指示関数で分解する

    証明は短いです。 $${X}$$ が非負整数値をとるとして

    $$
    X = \sum_{k=1}^{\infty} \mathbf{1}_{{X\ge k}}.
    $$

    これは1点ずつ確認できます。 $${X(\omega) = m}$$(非負整数)なら、 $${k = 1, 2, \ldots, m}$$ の各 $${k}$$ について $${\mathbf{1}_{{X\ge k}}(\omega) = 1}$$ で、 $${k \ge m+1}$$ では $${0}$$ です。総和はちょうど $${m}$$ になり、 $${X(\omega) = m}$$ と一致します。

    両辺の期待値を取れば、線形性(無限和への拡張)と $${E(\mathbf{1}_{{X\ge k}}) = P(X\ge k)}$$ から

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} P(X\ge k).
    $$

    なお、無限和の線形性は級数 $${\sum_k P(X\ge k)}$$ が収束する場合に成立します。高校範囲では $${X}$$ が有限の上限を持つ場合が大半で、その場合は和も有限なので何も気にせず使えます。

    何が嬉しいか

    「定義通り」では $${E(X) = \sum_m m\cdot P(X = m)}$$ なので、 $${P(X = m)}$$ を全部求める必要があります。ところが 最大値や最小値の問題では、 $${P(X = m)}$$ を直接出すよりも $${P(X\ge k)}$$ や $${P(X\le k)}$$ のほうが簡単 な場面が多いです。

    たとえば「 $${\max(X_1, \ldots, X_n)\le k}$$」は「全部が $${k}$$ 以下」と同値で、独立同分布なら積で書けます。 $${P(\max\ge k)}$$ は余事象から1段で出ます。一方、 $${P(\max = m)}$$ は「最大がちょうど $${m}$$」で、 $${P(\max\le m) - P(\max\le m-1)}$$ と差分を取る必要があり、計算が1段増えます。

    tail-sum を使うと、 差分を取らずに $${P(X\ge k)}$$ をそのまま足せばよい ので、最大値の問題と相性が抜群です。

    例題:さいころ1回の目をtail-sumで

    公正なさいころを1回振って出る目を $${X}$$ とする。tail-sum formulaを使って $${E(X)}$$ を求めよ。

    $${X}$$ は $${1}$$ から $${6}$$ の値をとるので、 $${k = 1, 2, \ldots, 6}$$ について

    $$
    P(X\ge k) = \frac{6 - (k - 1)}{6} = \frac{7-k}{6}.
    $$

    具体的に書くと

    $$
    P(X\ge 1) = \frac{6}{6},\quad P(X\ge 2) = \frac{5}{6},\quad \ldots,\quad P(X\ge 6) = \frac{1}{6}.
    $$

    tail-sumから

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{6} P(X\ge k) = \frac{6 + 5 + 4 + 3 + 2 + 1}{6} = \frac{21}{6} = \frac{7}{2}.
    $$

    定義通り計算した $${\frac{7}{2}}$$ と一致しました。

    ここではどちらでも同じ手間ですが、 $${X}$$ が「最大値」「最小値」だと、 $${P(X\ge k)}$$ のほうが圧倒的に楽になります。

    京大2026年での使い方を振り返る

    シリーズ第1記事で、京大2026年の最大番号の期待値を解きました。 $${X}$$ を「3枚のうち最大の番号」として

    $$
    X = I_1 + I_2 + \cdots + I_n,\quad I_k = \mathbf{1}_{{X\ge k}}
    $$

    と分解し、 $${E(I_k) = P(X\ge k)}$$ を余事象で出して線形性で和を取りました。あれはまさに tail-sum formula の使い方そのものです。

    「最大値 $${X}$$ の期待値を求めよ」と問われたら、

    1. $${P(X\ge k)}$$ または $${P(X\le k - 1)}$$ を $${k}$$ で書く
    2. tail-sum $${E(X) = \sum_k P(X\ge k)}$$ で和を取る

    の2段階を反射的に思い出せると、計算量が劇的に減ります。第VI部「最大値・最小値編」で何度も使います。

    最小値版の tail-sum

    非負整数値の確率変数 $${X}$$ について、tail-sum は

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} P(X\ge k)
    $$

    の形でしたが、 最小値の期待値 を扱うときは少し書き換えると便利です。 $${X}$$ が $${1}$$ 以上の整数値をとるとき

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} P(X\ge k) = 1 + \sum_{k=2}^{\infty} P(X\ge k)
    $$

    で、 $${P(X\ge k)}$$ が「全部 $${k}$$ 以上」の確率なので、独立同分布なら $${P(X_1\ge k)^n}$$ と書けます。詳しい使い方は第VI部で扱います。

    練習問題

    公正なコインを表が初めて出るまで投げ続け、投げた回数を $${X}$$ とする。tail-sum formula を使って $${E(X)}$$ を求めよ。

    $${X\ge k}$$ となるのは「 $${k}$$ 回目までずっと裏」のとき。すなわち最初の $${k-1}$$ 回が全部裏で、その確率は $${\bigl(\frac{1}{2}\bigr)^{k-1}}$$。

    tail-sum から

    $$
    E(X) = \sum_{k=1}^{\infty} P(X\ge k) = \sum_{k=1}^{\infty} \Bigl(\frac{1}{2}\Bigr)^{k-1} = \frac{1}{1 - \frac{1}{2}} = 2.
    $$

    答えは $${E(X) = 2}$$。

    これは幾何分布の期待値で、第IX部の漸化式編でも別の道筋で出します。tail-sum を使うと等比級数の和になり、無限和を直接扱うことになりますが、 項が単純な等比数列なので扱いやすい という利点があります。

    第IV部のまとめ

    第IV部では、指示関数を定義から積み上げ直し、4つの中心的な道具を揃えました。

    • 指示関数の定義と $${E(I_A) = P(A)}$$
    • 集合演算 $${I_{A\cap B} = I_A I_B}$$、$${I_{\overline{A}} = 1 - I_A}$$ など
    • 「個数 $${=}$$ 指示関数の和」 → $${E(N) = \sum_i P(A_i)}$$
    • tail-sum formula $${E(X) = \sum_k P(X\ge k)}$$

    これらの組合せで、入試の期待値問題のほとんどに対応できる基礎ができました。次の第V部では、この道具をさまざまな型の問題に当てはめる練習をします。

    次に読む記事

    次回からは第V部「指示関数の応用編」です。二項分布、クーポンコレクター、じゃんけんの勝者数、モンモールなど、典型例を1問ずつ丁寧に扱います。第1回は二項分布の期待値 $${E = np}$$ を、もう一度指示関数から復習するところから始めます。

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