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【母関数マスター講座 第18回】1のm乗根への拡張〜任意の「余り」を抽出する一般論〜
前回(第17回)は、1の3乗根 $${\omega}$$ を使って母関数の係数を「3の剰余」で分離する手法を学びました。
今回は、3に限らず「任意の正の整数 $${m}$$ で割った余り」でフィルタリングする一般論を完成させます。第6回の偶奇分離( $${m = 2}$$ )、第17回の3剰余フィルター( $${m = 3}$$ )がすべて、1つの定理に統合されます。
母関数マスター講座の全体像、シラバスは以下の記事でご覧ください。
https://note.com/goukalize/n/ne5f45c351ab2
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1. 1のm乗根の基本性質
$${z^m = 1}$$ の解は $${m}$$ 個あり、 $${\zeta = e^{2\pi i/m}}$$ を使って $${1, \zeta, \zeta^2, \dots, \zeta^{m-1}}$$ と書けます。
これらの和には次の性質があります。
$$
\begin{aligned}
\sum_{j=0}^{m-1} \zeta^{jk} = \begin{cases} m & (k \equiv 0 \pmod{m}) \\ 0 & (k \not\equiv 0 \pmod{m}) \end{cases} \tag{①}
\end{aligned}
$$
①は「余りが0のときだけ全員が足し合わさって $${m}$$ になり、それ以外では打ち消し合って消える」ことを意味しています。第6回の $${1 + (-1)^k}$$ や第17回の $${1 + \omega^k + \omega^{2k}}$$ は、すべてこの①の特殊ケースです。
2. 一般の剰余フィルター
母関数 $${f(x) = \displaystyle \sum_k a_k x^k}$$ に $${x = \zeta^j}$$ を代入して $${j = 0, 1, \dots, m-1}$$ で足し合わせると、①の性質から「余り0の次の係数」だけが抽出されます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{m} \sum_{j=0}^{m-1} f(\zeta^j) = \sum_{\substack{k \geq 0 \\ k \equiv 0 \pmod{m}}} a_k \tag{②}
\end{aligned}
$$
余り $${r}$$ の項を抽出したい場合は、 $${\zeta^{-jr}}$$ をウェイトとして掛けます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{m} \sum_{j=0}^{m-1} \zeta^{-jr} f(\zeta^j) = \sum_{\substack{k \geq 0 \\ k \equiv r \pmod{m}}} a_k \tag{③}
\end{aligned}
$$
③が「1の $${m}$$ 乗根フィルター」の一般公式です。
3. 第6回と第17回を統一する
この公式が過去の結果を含んでいることを確認しましょう。
$${m = 2}$$ のとき: $${\zeta = -1}$$ です。
- 余り0(偶数次): $${\frac{1}{2}(f(1) + f(-1))}$$ → 第6回の④と一致
- 余り1(奇数次): $${\frac{1}{2}(f(1) - f(-1))}$$ → 第6回の⑤と一致
$${m = 3}$$ のとき: $${\zeta = \omega}$$ です。
- 余り0: $${\frac{1}{3}(f(1) + f(\omega) + f(\omega^2))}$$ → 第17回の③と一致
- 余り1: $${\frac{1}{3}(f(1) + \omega^2 f(\omega) + \omega f(\omega^2))}$$ → 第17回の⑤と一致
すべてが③の特殊ケースとして統一されました。
4. 応用例:4の剰余で分類する
$${m = 4}$$ の場合を見てみましょう。 $${\zeta = i}$$ (虚数単位)です。1の4乗根は $${1, i, -1, -i}$$ です。
$${f(x) = (1+x)^{10}}$$ のとき、 $${{}_{10}\mathrm{C}_k}$$ を $${k}$$ の4での余りによって分類してみます。
- $${f(1) = 2^{10} = 1024}$$
- $${f(i) = (1+i)^{10}}$$
$${1 + i = \sqrt{2} \, e^{i\pi/4}}$$ なので $${(1+i)^{10} = 2^5 \, e^{i \cdot 10\pi/4} = 32 \, e^{i \cdot 5\pi/2} = 32i}$$ です。
- $${f(-1) = 0}$$
- $${f(-i) = (1-i)^{10} = -32i}$$
③に代入すると、
$$
\begin{aligned}
\sum_{\substack{k \equiv 0 \pmod 4}} {}_{10}\mathrm{C}_k &= \frac{1024 + 32i + 0 + (-32i)}{4} = 256 \tag{④}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\sum_{\substack{k \equiv 1 \pmod 4}} {}_{10}\mathrm{C}_k &= \frac{1024 + (-i)(32i) + 0 + i(-32i)}{4} = \frac{1024 + 32 + 32}{4} = 272 \tag{⑤}
\end{aligned}
$$
展開して足し上げる手間なく、4つの値を代入するだけで「4の剰余による分類」が完了しました。
まとめ
1の $${m}$$ 乗根フィルターは、母関数に $${m}$$ 個の根を順番に代入して足し合わせるだけで、係数を剰余類に完全に分類できるツールです。第6回、第17回の技術はこの一般論の特殊ケースにすぎません。
次回、第19回では約数の問題を素因数ごとに分解する「指標関数の乗法性」を扱います。素因数分解と母関数が出会うとき、整数論の美しい世界が開けます。
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