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大学受験ブログ

【期待値マスター講座48】鹿児島大2024(数学)を解説!
この記事では、鹿児島大学2024年度(前期)第5問を扱います。
${-1, 0, 1}$ のカードと ${m}$ 枚の ${1}$ を持つ袋から2枚を取って、 ${X=\min, Y=\max}$ の積の期待値を分析する問題です。
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シリーズ全体の流れを先に見たい方は、まず 期待値マスター講座の導入記事 からどうぞ。全56回の構成と読み進め方をまとめています。
https://note.com/goukalize/n/n9de4e3c6c4fb
問題
袋の中に $${-1, 0, 1}$$ が書かれたカードがそれぞれ $${1}$$ 枚、 $${1}$$ 枚、 $${m}$$ 枚ずつ入っている。ただし $${m}$$ は自然数である。この袋から無作為に $${2}$$ 枚同時に取り出し、取り出されたカードに書かれた数字をそれぞれ $${X, Y}$$ とする。ただし、 $${X\le Y}$$ とする。
(1) $${m = 2}$$ のとき、確率 $${P(X\ge 0)}$$ を求めよ。
(2) $${m = 9}$$ のとき、確率 $${P(Y = 1)}$$ を求めよ。
(3) $${XY}$$ の期待値 $${E(XY)}$$ が正となるような $${m}$$ のうち、最小のものを求めよ。
$${X\le Y}$$ という条件から、 $${X}$$ は取り出した2枚の小さい方( $${\min}$$ )、 $${Y}$$ は大きい方( $${\max}$$ )、すなわち 順序統計量 です。
(1) $${m = 2}$$ のとき $${P(X\ge 0)}$$
$${m = 2}$$ なら袋は $${-1}$$ が1枚、 $${0}$$ が1枚、 $${1}$$ が2枚(計4枚)。取り出し方は $${\binom{4}{2} = 6}$$ 通り。
$${X\ge 0}$$ は「取り出した2枚の 小さい方 が0以上」、つまり 両方とも0以上 と同値。 $${-1}$$ を含まない取り方を数えると、 $${{0, 1, 1}}$$ の3枚から2枚を選ぶ場合で $${\binom{3}{2} = 3}$$ 通り。
$$
P(X\ge 0) = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}.
$$
(2) $${m = 9}$$ のとき $${P(Y = 1)}$$
袋には $${-1, 0}$$ が各1枚、 $${1}$$ が9枚(計11枚)。取り出し方は $${\binom{11}{2} = 55}$$ 通り。
$${Y = 1}$$ は「大きい方が $${1}$$」、つまり 少なくとも1枚が $${1}$$ と同値。袋に $${1}$$ より大きい数はないので、これは自然な書き換え。
余事象「2枚とも $${1}$$ 未満」は $${{-1, 0}}$$ から2枚で1通り。
$$
P(Y = 1) = 1 - \frac{1}{55} = \frac{54}{55}.
$$
(3) $${E(XY)}$$ が正となる最小の $${m}$$
取り出した2枚の値の組ごとに $${(X, Y)}$$ と $${XY}$$ を整理します。
- $${{-1, 0}}$$ :1通り、 $${(X, Y) = (-1, 0)}$$、 $${XY = 0}$$
- $${{-1, 1}}$$ :$${m}$$ 通り(-1が1枚、1が $${m}$$ 枚)、 $${(X, Y) = (-1, 1)}$$、 $${XY = -1}$$
- $${{0, 1}}$$ :$${m}$$ 通り、 $${(X, Y) = (0, 1)}$$、 $${XY = 0}$$
- $${{1, 1}}$$ :$${\binom{m}{2}}$$ 通り( $${m}$$ 枚の1から2枚選ぶ)、 $${(X, Y) = (1, 1)}$$、 $${XY = 1}$$
総数は $${\binom{m+2}{2}}$$ 通り。 $${XY}$$ に寄与するのは $${XY = -1}$$ と $${XY = 1}$$ の組だけなので
$$
\begin{aligned}
E(XY)
&= \frac{(-1)\cdot m + 1\cdot \binom{m}{2}}{\binom{m+2}{2}} \\
&= \frac{-m + \frac{m(m-1)}{2}}{\frac{(m+2)(m+1)}{2}} \\
&= \frac{m(m-3)}{(m+2)(m+1)}.
\end{aligned}
$$
$${m\ge 1}$$ で分母 $${(m+2)(m+1) > 0}$$ なので
$$
E(XY) > 0 \iff m(m-3) > 0 \iff m\ge 4.
$$
最小は $${m = 4}$$。
$${X, Y}$$ の相関は正
この問題で押さえておきたいのは、 $${X, Y}$$ が 順序統計量 $${(\min, \max)}$$ であって、 取り出した順 の値ではないという点です。
順序統計量の場合、 $${X\le Y}$$ という関係が常に成り立っているので、 $${X}$$ が大きければ $${Y}$$ も大きい という同方向の関係があり、共分散 $${\mathrm{Cov}(X, Y)}$$ は 正 になります。
具体的に計算すると、
$$
\mathrm{Cov}(X, Y) = E(XY) - E(X)E(Y).
$$
$${m}$$ が大きくなると $${E(XY) = \frac{m(m-3)}{(m+2)(m+1)}}$$ は $${1}$$ に近づきます。 $${E(X), E(Y)}$$ も計算すれば、 $${\mathrm{Cov}(X, Y) > 0}$$ となり、 正の相関 が確認できます。
「非復元抽出だから負の相関」と早合点しがちですが、 取り出した順 であれば負の相関ですが、 順序統計量 だと事情が逆。 $${X = \min}$$ と $${Y = \max}$$ は常に $${X\le Y}$$ の関係にあるので、 同時に大きくなりやすい = 正の相関、というのが順序統計量の特徴です。
$${m}$$ に対する $${E(XY)}$$ の振る舞い
$${m}$$ ごとの $${E(XY)}$$ を見ます。
- $${m = 1}$$ :$${\frac{1\cdot (-2)}{3\cdot 2} = -\frac{1}{3}}$$
- $${m = 2}$$ :$${\frac{2\cdot (-1)}{4\cdot 3} = -\frac{1}{6}}$$
- $${m = 3}$$ :$${\frac{3\cdot 0}{5\cdot 4} = 0}$$
- $${m = 4}$$ :$${\frac{4\cdot 1}{6\cdot 5} = \frac{4}{30} = \frac{2}{15}}$$
- $${m = 5}$$ :$${\frac{5\cdot 2}{7\cdot 6} = \frac{10}{42} = \frac{5}{21}}$$
- $${m = 8}$$ :$${\frac{8\cdot 5}{10\cdot 9} = \frac{40}{90} = \frac{4}{9}}$$
$${m = 1, 2}$$ は負、 $${m = 3}$$ で0、 $${m\ge 4}$$ で正、と切り替わるのが見えます。
$${m}$$ が小さいときは「 $${-1}$$ と $${1}$$ の組」 $${XY = -1}$$ の影響が強く、 $${m}$$ が大きくなると $${{1, 1}}$$ ペア( $${XY = 1}$$ )が圧倒的に多くなるためです。 $${m\ge 4}$$ で正に切り替わる のは、 $${\binom{m}{2} > m}$$ になる境界( $${m - 1 > 2}$$、つまり $${m\ge 4}$$)と一致しています。
入試での書き方
入試の答案で書くときは
- $${X = \min, Y = \max}$$ であることを明示( $${X\le Y}$$ の意味を確認)
- 取り出し方の総数 $${\binom{m+2}{2}}$$ を確認
- 各組の通り数と $${XY}$$ を表で書き出す
- $${E(XY)}$$ を有理式に整理し、分子の符号で結論
の4段階を踏むと、答案として綺麗にまとまります。
第IV部・第VII部の道具とのつながり
この問題は、 指示関数 + 線形性 を直接使うタイプではありません。各組の確率と $${XY}$$ の値を表で書き出して、定義通りに期待値を計算するアプローチが自然です。
ただ、共分散の話(記事38)の応用として、「順序統計量どうしは正の相関」という 直観に反する事実 を確認するための題材になっています。「順序関係が固定された変数は、ばらつきが揃う方向に動く」というのが正の相関の正体です。
練習問題
同じ袋( $${-1, 0, 1}$$ が $${1, 1, m}$$ 枚)から無作為に2枚同時に取り出す。 $${E(X + Y)}$$ を $${m}$$ で表せ。
各組について $${X + Y}$$ を計算します。
- $${{-1, 0}}$$:$${X + Y = -1}$$、通り数1
- $${{-1, 1}}$$:$${X + Y = 0}$$、通り数 $${m}$$
- $${{0, 1}}$$:$${X + Y = 1}$$、通り数 $${m}$$
- $${{1, 1}}$$:$${X + Y = 2}$$、通り数 $${\binom{m}{2}}$$
$$
\begin{aligned}
E(X + Y)
&= \frac{(-1)\cdot 1 + 0\cdot m + 1\cdot m + 2\cdot \binom{m}{2}}{\binom{m+2}{2}} \\
&= \frac{-1 + m + m(m-1)}{\frac{(m+2)(m+1)}{2}} \\
&= \frac{2(m^2 - 1)}{(m+2)(m+1)} \\
&= \frac{2(m-1)}{m+2}.
\end{aligned}
$$
$${m\to\infty}$$ で $${E(X+Y)\to 2}$$(袋の中身の大半が $${1}$$ なので、2枚とも $${1}$$ になりやすく、和は $${2}$$ に近づく)、 $${m = 1}$$ で $${E(X+Y) = 0}$$。
線形性で $${E(X) + E(Y)}$$ に分けて計算しても同じ値が出ますが、ここでは直接組ごとに $${X + Y}$$ を見るほうが早いです。
次に読む記事
次回は、東北大学2025年度(前期)共通問題を扱います。コインとさいころを使った2段階の試行で、 $${n}$$ 回後に原点に戻る確率を求める問題です。 「変位を二値化する」 という見方を最初に入れると、二項分布の話に翻訳できます。
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