麻布大学獣医学部獣医保健看護学科の2026年度入試で出題された小論文を解説します。本問は「チーム獣医療」をテーマに、人の医療から学べる点と獣医療の課題、将来の可能性を800字以内で論じる問題です。60分で3つの問いに過不足なく答えるための構成の型と、本番で再現しやすい解答例を紹介します。小論文に唯一の正解はありません。採点のポイントを押さえた書き方を身につけ、得点力を高めていきましょう。
問題
まずは、麻布大学の入学試験要項をもとに、本問の試験データと設問全文を確認しましょう。
項目 | 内容 |
|---|---|
大学 | 麻布大学 |
学科 | 獣医学部 獣医保健看護学科 |
入試年度 | 2026年度 |
形式 | テーマ提示型(短い前提文+設問) |
制限字数 | 800字以内 |
試験時間 | 60分 |
配点 | 小論文 50点満点(観点別の配分は非公表) |
採点のポイント | 課題の把握、論旨の展開、文章表現、誤字・脱字、文字数 |
掲載資料と頁 | 『2027年度 入学試験要項』冊子p.65「小論文出題例」入試年度2026欄(PDF67ページ) |
『2026年度 入学試験要項』によると、獣医保健看護学科で小論文が課される入試区分は次のとおりです。総合型選抜(第Ⅰ期)、外国人特別入試、帰国生特別入試、社会人特別入試、学校推薦型選抜(公募制)です。いずれの区分でも、小論文(50点満点)のほかに口頭試問(50点満点)が課されます。なお、本問がどの入試区分や日程で出題されたかは公表されていません。
設問の原文は以下のとおりです。別の課題文はなく、3文の前提文と問いだけで構成されています。
問 近年、人の医療では医師や看護師など多職種が連携する「チーム医療」が進み、患者の生活の質(QOL)や医療の安全が向上している。獣医療の現場でも、獣医師だけでなく愛玩動物看護師や飼い主などが協力する「チーム獣医療」の重要性が高まっている。しかし、人医療と比べると、職種ごとの役割や情報共有の仕組みには課題が残っている。
以上を踏まえ、人のチーム医療から学べる点を挙げたうえで、獣医療におけるチームアプローチの課題と将来の可能性について、あなたの考えを800字以内で述べなさい。(出典:麻布大学『2027年度 入学試験要項』冊子p.65「小論文出題例」入試年度2026欄、PDF67ページ)
この問題の鉄則
本問は短い前提文と設問文から成るテーマ提示型の小論文です。長い課題文を読む負担がない分、設問の要求を正確に分解する力が問われます。前提文のヒントを議論にどう組み込むかもポイントです。ここでは押さえておきたい3つの鉄則を解説します。
鉄則1:設問が求める「3つの要素」を漏れなく柱にする
設問の後半には、答えるべき要求が3つ含まれています。「①人のチーム医療から学べる点」「②獣医療におけるチームアプローチの課題」「③将来の可能性」です。問われたすべての要素に正面から答えることが「課題の把握」の基本です。
どれかを書き漏らすと、「問いに答えていない」と判断されるおそれがあります。特に①は、前置きとして軽く触れるだけで終わりがちです。3つの要求それぞれに独立した段落を割り当て、構造が一目でわかる答案を目指しましょう。
鉄則2:前提文の「役割」と「情報共有」を軸にする
前提文の第3文には、「職種ごとの役割」と「情報共有の仕組み」に課題が残っていると書かれています。出題者はこの2つの切り口からの考察を求めていると考えられます。
迷ったときは、新しい話題を探すよりもこの2軸を使いましょう。人の医療ではどう機能しているか、獣医療ではなぜ課題なのか、将来どう改善できるか。この順に対応させると、筋の通った文章になります。
鉄則3:三者関係で具体的に書き、将来像は獣医療全体で結ぶ
前提文の第2文には、担い手として「獣医師」「愛玩動物看護師」「飼い主」の三者が挙げられています。動物は言葉を話せないため、状態を代弁し家庭でのケアを担う飼い主もチームの一員です。院内の連携だけでなく、飼い主との情報共有まで視野を広げると、一般論から一歩踏み込めます。
獣医保健看護学科の受験ですから、愛玩動物看護師が獣医師と飼い主の「橋渡し役」になるという展開は本問と相性がよいでしょう。ただし、「こんな愛玩動物看護師になりたい」という抱負で終わらせてはいけません。問われているのは、獣医療におけるチームアプローチの将来の可能性です。動物のQOLや医療の安全がどう高まるかという未来像として結びましょう。
答案の方針(型)
800字で3つの要求にバランスよく答えるには、段落ごとの役割と字数配分を先に決めておきます。ゴウカライズでは「結論先行の5段落構成」を推奨しています。最初に結論を示し、3つの要求を順に展開し、最後にまとめ直す型です。
- 第1段落:結論(約80字) 人の医療に学び、役割分担の明確化と情報共有の仕組みづくりを進めるべきだと示します。
- 第2段落:人のチーム医療から学べる点(約220字) 人の医療での役割分担と、記録や話し合いによる情報共有を整理します。それが医療の安全やQOLにどう結びつくかも述べます。
- 第3段落:獣医療の課題(約250字) 第2段落と対比させます。獣医師に業務が集中し、役割の境界が曖昧になりやすい点を指摘します。院内や飼い主との情報共有の不足にも触れます。
- 第4段落:課題への対応と将来の可能性(約170字) 記録共有や打ち合わせの習慣化を提案します。愛玩動物看護師が橋渡し役となり、病院と家庭をつなぐケアが広がる可能性を述べます。
- 第5段落:まとめ(約80字) 三者が役割を果たして連携することが、医療の安全とQOL向上につながるとして締めくくります。
時間配分は、ゴウカライズでは以下を推奨しています。最初の20分で設問分析と構成メモを作ると、書き直しを防げます。
- 読む:10分(前提文と3つの要求を分解し、キーワードに線を引く)
- メモ:10分(5段落の骨組みを作り、「役割」と「情報共有」の対比をメモする)
- 書く:35分(720〜800字を目安に、丁寧な字で書く)
- 見直し:5分(誤字・脱字、字数、3つの要求への対応を点検する)
解答例(合格ラインの答案)
上記の型に沿った合格ラインの解答例です。専門知識や統計データを使わず、60分で手書きできる平易な語彙でまとめています。各段落の先頭にある【 】のラベルは構成を示す目印で、実際の答案には書きません。
【第1段落:結論】(73字)
獣医療におけるチームアプローチを発展させるには、人のチーム医療に学び、職種ごとの役割分担の明確化と情報共有の仕組みづくりを進めることが重要である。
【第2段落:人のチーム医療から学べる点】(217字)
人のチーム医療から学べる点は主に二つある。一つ目は、医師や看護師などの各専門職が互いの専門性を尊重し、それぞれの役割を明確に分担している点である。医師が診断や治療方針の決定に専念し、看護師が日常のケアや患者の心身の観察を担うことで、きめ細かな医療が実現している。二つ目は、記録の共有や定期的な話し合いを通じて、患者の状態や治療目標をチーム全体で一致させる仕組みが整っている点である。これが医療過誤を防ぎ、安全性の向上につながっている。
【第3段落:獣医療の課題】(234字)
一方、獣医療の現場には二つの課題がある。第一に、診療から説明まで獣医師に業務が集中しやすく、愛玩動物看護師との役割の境界が曖昧になりがちな点である。業務の分担が整理されていないと、それぞれの専門性を十分に発揮しにくい。第二に、言葉を話せない動物の医療では飼い主もチームの一員であるが、院内の連携や飼い主との情報共有の仕組みが不十分な点である。治療方針や自宅での看護方法について認識のずれが生じると、継続的なケアが難しくなり、動物や飼い主の不安や負担につながってしまう。
【第4段落:課題への対応と将来の可能性】(172字)
これらの課題を解決するため、今後は院内での記録共有や打ち合わせを習慣化し、愛玩動物看護師が獣医師と飼い主をつなぐ橋渡し役を担うことが求められる。愛玩動物看護師が飼い主の声を丁寧に聞き取って獣医師と共有し、家庭での看護や日頃の健康管理まで支援できれば、治療だけにとどまらず、病院と家庭が一体となって動物の生涯を支える獣医療へと広がる可能性がある。
【第5段落:まとめ】(76字)
このように、獣医師と愛玩動物看護師、飼い主がそれぞれの役割を果たし密に連携するチーム獣医療の確立は、医療の安全と動物および飼い主のQOL向上を実現する。
(合計:772字)
第2段落と第3段落では、「一つ目(第一に)=役割分担」「二つ目(第二に)=情報共有」と同じ順序で議論を並べています。対比の構造をそろえると、読み手にわかりやすい展開になります。また、最終段落で前提文の「医療の安全」と「QOL」を回収し、全体をまとめています。
ダメな例と、どこで点を落とすか
次に、受験生が陥りやすい失敗を盛り込んだ「ダメな例」を見てみましょう。動物への思いは伝わりますが、採点のポイントに照らすと失点の要因を多く抱えています。
ダメな解答例
動物病院では、獣医師と愛玩動物看護師が協力して動物の命を救うチーム獣医療がとても大切だと思う。なぜなら、動物は人間と違って言葉を話すことができないため、少しの体調の変化にも気づいてあげる必要があるからだ。
私が飼っている犬が体調を崩して動物病院に行ったとき、獣医師の先生は忙しそうだったが、愛玩動物看護師の方が優しく声をかけてくれてとても安心した。このように、飼い主の不安に寄り添うことが愛玩動物看護師の役割だと感じた。もし動物病院のスタッフ同士の仲が悪かったり、連絡ミスがあったりすると、大切な動物の命に関わってしまう。だから、日頃からしっかり話し合いをして仲良く協力することが課題だと思う。
将来、私も麻布大学で知識や技術を身につけ、獣医師の先生や飼い主から信頼される愛玩動物看護師になりたい。そして、すべての動物と飼い主が笑顔で暮らせるような温かいチーム獣医療を作っていきたいと考える。
(合計:394字)
講師の赤ペンコメント(どこで点を落とすか)
- 赤ペン1:「人のチーム医療から学べる点」が抜けている(課題の把握) 人の医療について一言も触れていません。ゴウカライズの見立てでは、「課題の把握」で失点につながると考えられます。
- 赤ペン2:体験談と精神論にとどまっている(論旨の展開) 第2段落が飼い犬の通院の感想になり、課題も「仲良く協力すること」で終わっています。役割分担や情報共有の仕組みという視点が必要です。
- 赤ペン3:「将来の可能性」が個人の抱負にすり替わっている(課題の把握・論旨の展開) 「信頼される愛玩動物看護師になりたい」は志望理由書で伝える内容です。獣医療の将来の可能性への答えになっていません。
- 赤ペン4:口語表現が多く、字数も半分に満たない(文章表現・文字数) 「〜だと思う」「〜してあげる」「獣医師の先生」など話し言葉が目立ちます。800字以内の指定に394字では、文字数でも減点されやすいと考えられます。
どう直すか
まず体験談と抱負を削り、人の医療で役割をどう分担し、情報をどう共有しているかを書きます。次に、「獣医師が忙しそうだった」という気づきを一般化した議論に変えます。最後に、720〜800字になるよう理由付けを肉付けします。第2段落を直した例は次のとおりです。
直した例(第2段落の書き直し)
獣医療の課題の一つは、獣医師に業務が集中しやすいことである。人の医療では、看護師が日常のケアや観察を担い、医師が診断に専念できる。獣医療でも愛玩動物看護師が飼い主からの聞き取りやケアを分担すれば、獣医師は診療に集中でき、飼い主の不安も減らせる。
採点ポイント
入学試験要項には、採点のポイントが5つ示されています。「課題の把握」「論旨の展開」「文章表現」「誤字・脱字」「文字数」です。観点ごとの配点は公表されていません。
下の表は、この5観点で解答例とダメな例を比べたものです。◎○△はゴウカライズ講師による評価で、大学が公表した採点基準ではありません。
観点 | チェック項目 | 解答例の評価 | ダメな例の評価 |
|---|---|---|---|
課題の把握 | 学べる点・課題・将来の可能性の3つに答えているか | ◎ 3つの要求に段落を1つずつ割り当てている | △ 学べる点がなく、将来の可能性が抱負になっている |
論旨の展開 | 「役割」と「情報共有」を軸に筋が通っているか | ◎ 第2・第3段落で同じ順序の対比をしている | △ 体験談と「仲良く協力」という精神論が中心 |
文章表現 | 常体で統一し、客観的な語彙を使っているか | ○ 常体で統一。一部の文がやや長い | △ 「〜だと思う」「獣医師の先生」など口語が多い |
誤字・脱字 | 設問文の漢字(愛玩、職種など)を正しく書けているか | ◎ 設問文の用語をそのまま正しく使っている | ○ 誤字はないが、話し言葉の表記が混じる |
文字数 | 720〜800字(9割以上)を満たしているか | ◎ 772字 | △ 394字で半分に満たない |
※◎○△はゴウカライズ講師評価です。大学公表の配点基準ではありません。
補足:つまずきポイントと見直しチェック
つまずきやすい3つのポイント
1つ目は、人の医療と獣医療の「違い」を説明するだけで、「学べる点」を書き忘れることです。「動物は言葉を話せない」という違いだけでは、学べる点になりません。人の医療の役割分担や情報共有を、獣医療にどう取り入れるかを書きましょう。
2つ目は、飼い主をチームの外の人として扱ってしまうことです。前提文では、飼い主も「チーム獣医療」の協力者に含まれています。医療従事者と飼い主がどう情報を共有するかまで論じましょう。
3つ目は、専門職の名称や設問の漢字の書き間違いです。「愛玩」の「玩」、「看護」の「看」、「獣医師」の「獣」は誤字になりやすい漢字です。どれも設問文に印刷されているので、照らし合わせて書き写しましょう。
試験終了前5分の見直しチェックリスト
- 3つの要求(学べる点・課題・将来の可能性)がすべて書かれているか
- 設問文の漢字(愛玩動物看護師、獣医療、職種など)に写し間違いはないか
- 文末が「〜だ。」「〜である。」の常体で統一されているか
- 主語と述語がねじれた長すぎる文(1文80字以上など)がないか
- 字数が720〜800字に収まっているか(句読点も1字に数える)
難易度と目標時間
- 全体難易度:標準(ゴウカライズ講師評価)
- 目標解答時間:60分(読む10分/メモ10分/書く35分/見直し5分)
「チーム獣医療」は、獣医保健看護学科の志望者にはなじみ深い題材です。前提文に議論のヒントが明示されているので、何も思いつかない事態にはなりにくいでしょう。
一方で、3つの重たい問いを60分・800字でまとめるには構成力が要ります。メモなしで書き始めると、前半だけで600字以上を使い、「将来の可能性」が数行で終わりがちです。時間が足りないときは、具体例を足すより、3つの要求に触れて第5段落まで書き切ることを優先しましょう。
講評
2026年度の小論文は、学科の専門性と直結する「チーム獣医療」を正面から問う出題でした。前提文が3文と短いため、設問の言葉を拾い、論理の骨組みを自分で組み立てる力が表れたと考えられます。
得点のカギは、「職種ごとの役割」と「情報共有の仕組み」を、人の医療との対比で構造的に捉えられたかどうかです。さらに、飼い主をチームの一員として議論に組み込めた答案は、説得力が増したはずです。
また、この学科の入試では、小論文(50点満点)と同じ配点で口頭試問(50点満点)が課されます。ゴウカライズの見立てでは、小論文で書いた考え方は口頭試問の受け答えとも関わってくると考えられます。「自分ならチーム獣医療にどう貢献するか」を、自分の言葉で考える機会にしましょう。
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よくある質問
Q1. 「QOL」という言葉は答案の中でそのまま使ってもよいですか?
はい、使って問題ありません。前提文に「患者の生活の質(QOL)」とあるので、「QOL」でも「生活の質」でも伝わります。字数を節約したいときは「QOL」と、前後の字数に合わせて使い分けましょう。
Q2. 人の医療について詳しい知識がない場合、どう書けばよいですか?
専門的な医療知識は要りません。前提文の「多職種が連携する」「職種ごとの役割や情報共有の仕組み」を手がかりにすれば十分です。医師と看護師の役割分担と、記録や話し合いによる情報共有の2点を挙げれば、設問の要求に答えられます。
Q3. 800字以内の問題では、最低でも何字くらい書くべきですか?
ゴウカライズでは、制限字数の9割以上にあたる720〜800字を目指すことを推奨しています。本問は3つの要求を含むため、600字台では各説明が薄くなりがちです。5段落の型に沿って書けば、750字前後に無理なく届きます。
出典一覧
本記事の作成にあたり、以下の公式資料を参照しました。
- 麻布大学『2027年度 入学試験要項』冊子p.65「小論文出題例」入試年度2026欄(PDF67ページ) https://fanclub.azabu-u.ac.jp/exam/files/gakubuyoukou2027.pdf#page=67
- 麻布大学『2026年度 入学試験要項』(獣医学部獣医保健看護学科の試験時間・配点・採点のポイント・入試区分) https://fanclub.azabu-u.ac.jp/exam/files/gakubuyoukou2026.pdf

